元DeNA久保所属のメキシカンリーグで“飛ぶボール”問題 「投手にとって苦難の1年」

メキシカンリーグのブラボス・デ・レオンでプレーする久保康友【写真:球団提供】

今季からローリングス社製からフランクリン社製に変更

 元DeNAの久保康友投手がプレーするメキシカンリーグで打球に異変が起こっている。昨年までローリングス社製(中国製)だったリーグ公式球が今年からフランクリン社製(中国製)に変わったことで打球がより飛ぶようになり、本塁打の数が急増しているのだ。

 4月4日の開幕から約1か月。この異変はデータにも如実に表れている。今季、ここまでの1試合当たりの平均本塁打数は2.69本。18年(昨年のみリーグが前後期制で、公式データが後期しか残っていないため、後期の数字を使用)は1.81本、17年が1.56本、16年が1.43本、15年が1.62本と、過去4年と比べると明らかに高い数字が出てくる。数にして昨年の1.49倍。2ケタ得点が入る試合が多く、それによって4時間以上かかる試合も増えているのだ。

 チーム防御率を見ても、今年は得点が例年以上に入っていることが明らかだ。今季の全チームの平均防御率は現時点で5.99。昨年後期は5.00、17年が4.60、16年が4.34、15年が4.61と、いずれも今年を下回っている。

 メジャー経験もあり、メキシカンリーグ通算97勝の右腕、ブラボス・デ・レオンのワルテル・シルバ投手は「私はメキシカンリーグで17年間プレーしているが、こんなに打球が飛ぶ年はない」と証言する。42歳のベテランは「縫い目の高さもボールによってバラバラだから、同じ変化球でも軌道が変わってくるので、同じフォームで投げても同じところにコントロールすることができない」といい「大きさも、ローリングスはどれも同じだったが、フランクリンは握った時に大きく感じるものと小さく感じるものがあり、ものによっては5グラムほどの違いがあると感じる。今年は投手にとって苦難の1年になるだろう」と分析する。

ボールの中身に入っているゴム製のボールの弾む高さが…

 実際にボールを分解してみると、中身の違いが飛距離に影響していることが推察できた。ローリングス社製のボールとフランクリン社製のボールの中には、ともに直径約4センチほどのゴム製のボールが入っているのだが、これを同じ高さから床に落とすと、弾む高さがフランクリン社製の方がより高いのだ。

 このゴム製のボールの中にはコルクのような材質のものが詰められていたが、ローリングス社製のものの方がより湿気があって、密度も高い。一方、フランクリン社製のほうが乾燥しており、より反発力を受けるのではないかと推測できる。

 また、ゴム製のボールの外側は、フランクリン社製のものは毛糸でくるまれているだけだが、ローリングス社製のものは紫色のカップで包まれており、このカップがあることで、バットからの力が吸収されている可能性もありそうだ。

 16チームを南北8チームずつに分けて行われるメキシカンリーグでは、約半数の球団の本拠地が高地にあり、気圧が低いため打球が低地よりも飛ぶことから、高地は打者天国と言われている。これに加え、今年はボールが変わったことで、さらに打高投低に拍車がかかりそう。久保は「去年はメキシコでプレーしてないので違いは分からないが、高地は確かに打球が飛ぶ。ただ、ボールの条件はどのチームも同じなので、早く慣れて打たれないようにするしかない」と話しているが、今年のメキシカンリーグは例年以上に投手にとって大変な場所であることは間違いなさそうだ。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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