トラックヘッドの欧州選手権『ETRC』、2019年シーズンには16台がエントリー

 世界の物流事業従事者やその業界団体を中心に、絶大な人気を誇るFIA欧州格式選手権、ETCRヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの2019年エントリーリストが発表され、全8戦32レースに挑む16名、4マニュファクチャラーのトレーラーヘッドたちが明らかになった。

 そのリストの先頭に位置するのは、2018年シリーズチャンピオンであり、5度のタイトル獲得経験を持つFIA ETRCの“レジェンド”、ヨッヘン・ハーンで、2019年も自らの名を冠したチームでタイトル防衛に向けイベコをドライブする。

 キャリアの大半を通じてマンのトレーラーヘッドで戦ってきたハーンは、2017年シーズンに自チームを立ち上げ、同時にマシンをイタリア製のイベコにスイッチ。2018年は年間12勝を挙げ、見事にチャンピオンシップを制覇、2019年は前人未到6度目のタイトル獲得に挑むことになる。

 そのハーン最大のライバルとして立ちはだかるのは、2017年王者であるチェコ共和国出身のアダム・ラッコで、2019年も引き続き同国のブギーラ・レーシングからのエントリー。

 使用するトラックも唯一のボンネットキャブ型となるフレートライナーは変わらずも、2019年シーズンに向けチームはシャシー、エンジンともにオールブランニューモデルに刷新。先日開催されたチェコ・モストでのオフシーズンテストでも好調さをみせており、過去数シーズン同様にハーンとの一騎打ちが数多く演じられそうだ。

 またその他にも、グリッドにはアントニオ・アルバセテ(マン)、ノルベルト・キス(メルセデス・ベンツ・トラックス)と、2名の元チャンピオンも参戦。

 2005~2006年、そして2010年のタイトルホルダーであるベテランのアルバセテは、2018年シーズンに2014年以来となる4勝を記録してランキング3位に入っており、その好調さを今季にも持ち越したいと考えている。

 一方2014~15年王者のキスは、スロバキアリングでの1勝のみでランキング5位に留まったものの、2015年以来不動のマシン、チーム体制で巻き返しを誓う。

 その元チャンピオンたちの間に割って入り、2018年シーズンのドライバーズランキング4位となりキャリアハイを記録したサッシャ・レンツ(マン)は、シリーズでただひとり全32レースでポイントを獲得する抜群の安定感を披露。2019年はその成績を上回ることを目指している。

サーキットでの観客動員数、ライブ中継のTV視聴者数、そしてSNSやストリーミングでのユーザー数でも毎年のように成長を記録しているFIA ETRCシリーズ
テストには2019年仕様のカラーリングをまとったIVECOを持ち込んだ王者ヨッヘン・ハーン
テストの合間にリラックスした表情を見せるシリーズの紅一点、シュティフィ・ハルム

 レンツと同じく、シリーズを代表するドイツ人スタードライバーのシュティフィ・ハルム(イベコ)も、移籍初年度となった2018年に初めてドライブするイベコで2勝をマークするなど、その実力を遺憾なく発揮して見せた。

 シリーズオーガナイザーのETRA(ヨーロピアン・トラック・レーシング・アソシエーション)からも「現在、FIAチャンピオンシップに参戦するなかで、おそらくもっとも成功した女性レーシングドライバー」と評されているハルムは、その実力どおり多くのファンを獲得しており、2018年ポイントテーブル6位以上の成績を目指すと宣言した。

 そのハルムが2017年まで所属したチームの代表であり、彼女の移籍と同時に現役ドライバーとして復帰したレネ・ラインアートも、引き続き自らのチームでエントリー。ただし昨季までのMANではなく、タイトル・ウイニング・トラックとなった元ヨッヘン・ハーン・レーシングの2018年型IVECOにスイッチしてシリーズを戦うことを決めている。

 そしてレギュラーエントリー勢で唯一のルーキードライバーには、20歳のドイツ人ファビオ・コティニョーラがキスのチームメイトとしてチーム・タンクプール24レーシングから参戦。アウディスポーツR8 LMSカップやルノー・クリオカップ・ジャーマニーを経て、史上最年少でのETRC参戦ドライバーとなった。

 シリーズを統括するETRAディレクターのロルフ・ウェルナーは「2019年のエキサイティングなエントリーリストを発表できてうれしく思うし、冬の間のチームとドライバーたちのパッケージ開発とその献身に感謝したい」とコメントした。

「FIA ETRCにとっては、ファンにとっても業界パートナーにとっても、エキサイティングで魅力的なレースの週末を提供するという精神が、より試されるシーズンになる。今季はレギュラーエントリーに加え、週末ごとにワイルドカード参戦枠を導入してグリッドの台数を増加させ、より多くのアクションを提供したいと思っている」

 2019年のFIA ETRCシーズンは、5月25~26日にイタリアのワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ・ミサノで幕を明ける。

伝統のボンネットキャブ型で戦うフレートライナーは、2019年に向け新型を投入
3度のタイトル獲得経験を持つアントニオ・アルバセテ。2018年はランク3位を記録した
2020年の創設を目指すエントリーシリーズの”LT4カップ”に向け、IVECO製のプロトタイプも走り始めている

2019FIA ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング選手権 エントリーリスト

No. マニュファクチャラー ドライバー 国籍

1 イベコ ヨッヘン・ハーン ドイツ

7 マン ジェイミー・アンダーソン イギリス

11 イベコ アンドレ・クルシム ドイツ

14 マン ホセ・ロドリゲス ポルトガル

19 メルセデスベンツ ドミニク・オルシーニ フランス

22 フレートライナー オリバー・ジェーンズ イギリス

23 マン アントニオ・アルバセテ スペイン

30 マン サッシャ・レンツ ドイツ

37 マン テリー・ギブソン イギリス

38 マン エドゥアルド・ロドリゲス ポルトガル

44 イベコ ステファニー”シュティフィ”ハルム ドイツ

55 フレートライナー アダム・ラッコ チェコ

64 マン ルイス・レクエンコ スペイン

77 イベコ レネ・ラインアート ドイツ

TBA メルセデスベンツ ファビオ・コティニョーラ ドイツ

TBA メルセデスベンツ ノルベルト・キス ハンガリー

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