野党共闘 本格化も不透明感 スタンスや政策に温度差

 今夏の参院選の候補者調整を続けていた野党5党派は29日、長崎選挙区について国民民主候補に一本化することで合意。自民から出馬準備を進めている現職、古賀友一郎氏(51)と国民が擁立を目指す新人の白川鮎美氏(39)との戦いの構図がほぼ固まった。中央レベルでの一本化合意を受け、長崎県でも立憲民主、国民、共産、社民の各県組織などの野党共闘が加速する見通しだが、それぞれの間には共闘のスタンスや政策を巡って温度差もあり、どこまで効果を発揮できるか不透明感が漂う。

 「野党の“共同候補”という位置付けで頑張る」。国民県連の渡辺敏勝幹事長は自民候補と争う参院選への決意をこう口にする。一般的な“統一候補”という呼称を使わないのは、国民の支持労組などに配慮してのことだ。

 共産色を薄めたい背景には、国民の支持基盤である連合が、共産系の全労連と一線を画してきた歴史がある。3年前の前回参院選でも長崎選挙区は民進(当時)の西岡秀子氏が野党“共同候補”として戦った。しかし、野党共闘の橋渡し役の市民団体「安保法制廃止と立憲主義の回復を求めるながさき市民連合」関係者は、「(労働団体の)連合に共産アレルギーの人が一定数おり、(前回は)うまく稼働しなかった部分もあった」と振り返る。

 前回の比例代表の政党別得票を見ると、共産は本県で約3万8900票を集めた。白川氏の得票目標を32万票とする国民の関係者も「(共産の)票は欲しい」と本音を明かすが、国民支持労組の幹部は「(反戦活動などで)共産とは根本的な考えが違う。混じることはない」と断言。白川氏の選対には立民、社民両県連の代表が名を連ねる予定だが、選対に共産が加わることは「ない」(渡辺幹事長)という。

 一方、自民1強に風穴を開けるという共通目標に向け、長崎選挙区での候補者擁立を取り下げる形となる共産。県委員会の山下満昭委員長は「自民に勝つため、力を合わせて頑張りたい」と強調するが、国民民主の支持率の低迷を踏まえ、ある共産関係者は「国民民主には風が吹いていない」と冷ややかだ。

 国民、共産以外の関係者からも「立民、社民、共産の支持者にとって、一本化は100%の本意ではない」「参院選より(同日選の観測がくすぶる)衆院選の準備をしなければ」との声も聞かれる。政治経験ゼロで「知名度も地盤もかばん(選挙資金)もない。応援してもらえるのはありがたい」と一本化を歓迎する白川氏。野党が小異を捨てて大同につくことができるか、共闘の行方が注目される。

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