上江洲修(沖縄OUTPUT)- アイルビーバック!!

苦戦の連続だった

──上江洲さんが沖縄に戻られてから6〜7年経つんですかね? そこから現在までのOUTPUTのお話を簡単に教えてください。

上江洲:2012年の11月に沖縄OUTPUTの店長に就任して、最初はいろいろ大変だったね。知らない人たちばかりだし、バンドも全然わからなかったから。だから、とことん沖縄のコミュニティを調べて、バンドマンから芸能人まで探ってブッキングしたね。

──立ち上げ当初は、ブッキングのテーマとかあったんですか?

上江洲:SHELTERでやっていた時よりも苦戦の連続だったね。ゼロからのスタートだったからさ。あとやっぱり東京に比べて地元は弱いよね。音楽もシーンも人気も含めてね。お客さん入れるのは大変だったけど、良いバンドを見つけて展開していったかな。

──特に力を入れてたイベントなどはありますか?

上江洲:SHELTERで繋がったバンドを沖縄に呼びたいなと思ったんだけど、1バンドだけじゃ無理じゃない? 集客的にも厳しいし、ツアーに来てもらうのもなかなか難しいし。それに対して、まず共演の沖縄のバンドを奮起させて。「この1公演を成功させよう!」と団結させて、東京から沖縄に来てもらうっていう形だったね。それは今も続けているけどね。それが相乗効果になって、県外も県内のバンドも、繋がりや人気も出てきたのかなぁって思うし。それがOUTPUTの成功例だったのかな。

──SHELTERでの経験が特に生かされている点などありますか?

上江洲:それはもちろん生かされているよね。売れている人とかも沖縄に来たりするけど、なにより自分がSHELTERでブッキングしていたバンドたちが、OUTPUTを始めて1〜2年経ってから、どんどん頭角を現してきたのは嬉しいよね。

──上江洲さんが辞められてからのSHELTERの印象はいかがでしょうか?

上江洲:スタッフがカワイイ女の子が多いよね(笑)。義村(現SHELTER店長)が雇ってるからか(笑)。

──そういう印象ですか(笑)。 ブッキングとかの印象ないんですか?(笑)

上江洲:スケジュールはすごく良いと思うよ。新しいバンドや企画、レーベルとかもやってるし。面白いことをやってるなと思いますよ。常にアンテナ光らせて(笑)。

──なるほど(笑)。

上江洲:俺、すごい良いこと言うね。もっとディスった方が良い?(笑) ロフトプロジェクト全体で見ても、店舗数も増えているし、拡大しているし、さすがロフトですよね(笑)。

『I Rashiku』-自分らしく-

──SHELTERでの企画は約2年ぶりとなります。しかも今回は3DAYSということで、イベントの開催経緯やコンセプト、タイトルの由来など教えてください。

上江洲:さっき話した逆パターンで、沖縄のミュージシャンを東京に連れてくるっていうのが意図であるわけさ。2〜3年前からやりたかったの。過去にも、水曜日のカンパネラがSHELTERでやった時も沖縄のcaino、空観日和とかが共演しているんだけど、あれはバンドの企画じゃん? サポートは自分がやったんだけど。でも今回は完璧に自分の主催でやろうと。あと、経緯としてはSET YOU FREEの千葉さんと沖縄ですごく仲良くなったのよ。あの人って全国をまわってイベントやってるじゃない? だから最初は沖縄のバンドを紹介して、「SET YOU FREEで使ってください」って言ったのよ。でもなんか、ふといろいろ考えたらそれは違うなって思ったのよ。やるんだったら自分が動かなきゃダメだなって。あとOUTPUTっていう店の名前でやるのが本当は一番良いんだけど、準備などを考えたらちょっと動きにくいから。だから自分でやっちゃえば良いや! って思って。だからOUTPUT上江洲presents.にしたわけさ。なので、予算は自分で出してる。タイトルもいろいろと考えて『I Rashiku』にしたんだけど。俺らしく、自分らしくやろうって、行動って意味で。あと一番は、沖縄県内と沖縄県外のキャッチボールがしたかったんだよね。東京のバンドが沖縄に来た時は、沖縄のバンドが助けてくれるじゃない? その共演のつながりが沖縄で終わりじゃなくて、沖縄のアーティストが成長して東京に行く時はバックアップしてほしいなって。

──出演バンドも、上江洲さんならではの個性豊かなメンツが揃ったと思います。

上江洲:対バンも経緯があって、7/3のワンチャイコネクションは、BILLIE IDLEとかどついたるねんと沖縄でも対バンしてるから、「じゃあ東京でもやろう!」って言ったら即OKをもらえて。7/4の紅茶フーフー、The Hypesも同じ感じで、キノコホテル、URBANフェチと沖縄で共演してたりするしね。3日と4日はそんな感じで決まったのかな。それに本当は2DAYSの予定だったのよ!2DAYSでもいっぱいいっぱいだから本当はやりたくなかったのよ(笑)。でも今年1月にOUTPUTで『Going Going WACK TOUR』があって、そのライブにWACKのカメラマンの外林さんが来たのよ。ソッティーっていうんだけど、僕仲良しなのよ。相手はどう思っているかわからないけど(笑)。「BILLIE IDLEと東京でイベントやるんで遊びきてください」って感じで話してたら、「なんでWACKアーティスト誘わないんですか! 渡辺さん (WACK社長)そういうのが一番悲しむんですよ(笑)」って言われたのよ。それに反省して、「一番初めに声かけなきゃいけないのはWACKアーティストだよなぁ」って思って。それでGANG PARADEが決まって。組み合わせを考えた時に、イベントのテーマもあるし、自分がSHELTERにいた時に一番ライブをやっていたOLEDICKFOGGYかなって。OUTPUTにも出演してもらってるし、お世話になってるから。自分がいた時には考えられなかったアイドル×パンクバンドっていうのもSHELTERならではで、今やったら面白いんじゃないかって思ったんだよね。そこにテーマである沖縄の感じも出したいからSHAKAI NO HAZIMARIっていうハードコアバンドを入れたんだよね。

──今回のイベントに出演する沖縄のバンドをご紹介いただけますか。

上江洲:まず7/3のワンチャイコネクションは下北沢のパンクシーンの匂いも感じるし、沖縄のTelevisionって呼べるぐらい良い音出しますよ。伝わりにくいか!(笑) ブッチャーズとかにも影響受けているのかな。SHELTERのみんなも気に入ると思うよ。奢る舞けん茜は、最近、勢いが出てきているヤングオオハラと同期で、沖縄でもずっと応援してきて、最近ではツアーで東京や大阪とかもまわってたりして力をつけてきているし、今回の中では一番若いバンドかな。7/4のThe Hypesはもともと東京でもバンド活動をしていて、沖縄に戻ってきたんだけど、ジャンル的にはシティポップの匂いを感じつつ、今回呼んだ中では一番おしゃれな感じかな。勢いもあるし、注目しているバンドですね。そして紅茶フーフーは今回、唯一のガールズバンド! メンバーみんなカワイイ! 今、沖縄でも売れてきてるんですよ。Sonic Youthみたいな感じがあって、見た目とのギャップもあって、面白い音楽をしてるなぁと。5組の中でも一番注目してるかもしれないね。あとイベントのきっかけも、まず県内のバンドを集めたのよ。「衝撃発表がしたいから居酒屋で飲もう!」って。それで最初に集まった紅茶フーフーとThe Hypes、ワンチャイコネクションに、「東京にイベントしに行こう!」って話して、それが始まりだったのよ。それでみんな、「行きたいです!」って即答してくれて、その場で3組は決まって。あと誰がいいかなぁ? ってみんなで話して、「奢る舞けん茜が良いね!」って。

──じゃあ先に沖縄のバンドから決まっていったんですね。

上江洲:そうだね。先に決まった沖縄のバンドにリンクする県外のバンドを探して行こうって。それでこの対バンに繋がった感じだね。

──では、沖縄のバンドたちは念願叶っての対バンなんですね。

上江洲:うん。そうだと思うよ。東京のバンドの中では、春ねむりとURBANフェチなんかはイベントの起爆剤にもなってほしいね。その辺りも注目してほしい。あとSHELTERでやるっていうのが大きいね。平日ね!

──ありがたいです(笑)。

上江洲:SET YOU FREEの千葉さんとも、「平日のライブハウスを面白くして行きたいね!」って話してて、それもあって平日に企画したところもあるかな。うちも平日を埋めなきゃダメなんだけど(笑)。

沖縄で心中する覚悟

──ところで上江洲さん、沖縄でラジオ番組もしてるんですよね?

上江洲:ラジオもイベントに繋がることなんだけど、ここ数年で自分をブランディングする時代になってきてるでしょ? 自分はもちろん裏方なんだけど、裏方も表に出て行かなきゃと思ってたのよ。OUTPUTは個人店だから、なにかあった時のためにも自分の足跡は残さなきゃならないから。OUTPUTはもちろん自分の名刺でもあるんだけど、それ以上に自分の名前も残さなきゃと。そのために、自分のブランド力を高めたいなと。

──OUTPUTは現在の場所での営業は間もなく終了ということですが、それも関係しているんでしょうか?

上江洲:2年前に、今の場所での営業はもう出来ないって言われたのよ。移転しなきゃならないって。それぐらいの頃から考えたのもあるね。もちろん移転先は探してはいるんだけどさ。だからこういうイベントを考えたところもあったね。

──ということは今後の展望も見えている感じですかね?

上江洲:久米での営業は終了しちゃうんだけど、約7年の営業でいろんなバンドマンに支持される場所になったし、応援される場所になったから、これをプラスにいろいろ考えていきたいね。大きいキャパのライブハウスにもチャレンジしていきたいかな。でも小さいキャパのライブハウスもバンドマンが一番見られる場所だから、そのキャパの場所も探して。2店舗とかできたらいいな。

──物件は見つかったんですか?

上江洲:見つかってない…。HPにも物件募集中って書いてある(笑)。でも身近な人でも亡くなっていく人もいるし、自分も年を取ってくから、やりたいことはやってかないと後悔するなぁと思ってる。沖縄で拾ってくれた濱里(OUTPUTオーナー)にも恩もあるし、沖縄で心中する気持ちでやるよ(笑)。7月5日が僕の誕生日なので40歳最後の祭りをやるので遊びに来てね。

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