噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられている箱根山(箱根町)の大涌谷で11日、東海大による火山ガスの定点観測が行われ、成分を分析した大場武教授は「火山活動は緩やかに上昇を続けている」との認識を示した。「2015年ほど活発な活動ではないため、噴火の可能性は低い」としつつ「まだ峠を越えていない」と警戒を呼び掛けた。
大場教授が火山活動の盛衰を見極める際に指標としているのは、ガス中に含まれる二酸化炭素(CO2)の硫化水素(H2S)に対する比率(C/S比)。地下のマグマだまりが膨張するなどして活動が活発になると、CO2が増えてC/S比は上昇。一方、活動が衰えていく過程ではC/S比も下降することが分かっている。
この日の観測は、全面的な立ち入り規制が続く大涌谷の火口付近と、規制エリア外の噴気地帯の2カ所で実施。両地点とも、警戒レベル引き上げ(5月19日)前の5月10日に行った調査時と比べて、「C/S比が上昇していた」という。
ただ上昇のペースは緩やかで、「(観測史上初の噴火に至った)15年のような火山活動の急激な高まりは見られない」と指摘。「いずれ沈静化に向かうと考えられるが、活動はまだピークを迎えていない」と現状について判断している。
大涌谷の火口や温泉供給施設の蒸気井などで見られる噴気活動は、15年の噴火以降収まっていない。気象庁火山課は「噴気の状況は警戒レベルを引き上げる前から変化していない」と説明する。5月中の噴気の高さは500メートル以下で推移したとしている。
一方、同庁の観測で5月19日にピークの74回を記録した火山性地震は、その後は減少。ただ通常よりは多い状態が続いており、6月10日は4回だった。3月中旬ごろに始まった山体の膨張を示す地殻変動も継続している。
こうした状況を踏まえ、同庁は「火山活動が活発化している」との評価を変えておらず、大涌谷の火口域に影響を及ぼす噴火の可能性があるとして、噴石や火山灰への注意を促している。