新幹線長崎ルート 「最高・最後のタイミング」 議論急ぐ背景

 長崎県がフル規格の議論を急ぐ背景には「今が最高かつ最後のタイミング」との思いがある。
 長崎ルートへ導入予定だったフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)が、採算性の低さや開発遅れを理由に見送られたことについて、与党検討委員会は「FGT開発を進めてきた国は、これまでの経緯を踏まえ、今後の対応に当たるべきだ」と国の責任を指摘。長崎県の担当者は「初めて国が個別路線(長崎ルート)の整備を促す状況になった。この機を逃してはならない」と強調する。
 整備新幹線を巡る全国の動きを見ると、2023年度の着工に向けて北陸新幹線敦賀-新大阪の環境影響評価(アセスメント)が始まる中、奥羽、羽越、四国新幹線など全国各地の基本計画路線の要望活動も活発化している。
 未着工の北陸新幹線敦賀-新大阪の工期は15年、建設費は2兆1千億円が見込まれる。長崎ルートに関し、新鳥栖-武雄温泉のフル規格での23年度着工と早期の全線開通を目指す長崎県は、「北陸新幹線と同じタイミングで着工に向けた道筋をつけなければ、財源確保の議論に乗り遅れ、事実上凍結されてしまう」と危機感を募らせる。先送りされた場合、「(全線フル規格での)開業は約30年後となり、さらに他の基本計画路線の後になると50年、100年後となる可能性もある」(長崎県)。
 長崎、佐賀両県では駅舎建設や新幹線駅を核としたまちづくりも進む。長崎県は「西九州地域の将来のため、在来線をどのような形で残すか、負担はどの程度なら可能かなど今議論を進めるべきではないか」との立場だ。

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