【MLB】米マイナーリーガーは月給12万円!? 米紙が過酷さを特集「最低賃金以下の生活」

日本球界入りを選択し、話題となったソフトバンクのカーター・スチュワート【写真:藤浦一都】

数年間の下積み生活を送るマイナーリーガー、「夢を追うため」過酷な生活を…

 ソフトバンクが、昨年の全米ドラフトでブレーブスから1巡目(全体8位)指名を受けたカーター・スチュワート投手を獲得し、日米で大きな話題となった。昨年は右肘の懸念もあり、ブレーブスとの契約に至らなかったスチュワートは、今年もドラフト上位指名候補と見られていたが、“日本行き”という前代未聞の決断を下した。米メディアは、ソフトバンクが出来高込みで1200万ドル以上(約13億8600万円)の契約を提示したと伝えているが、大物代理人のスコット・ボラス氏が「(日本行きのほうが)経済的に断然メリットがある」と語るなど、条件面の違いも決断を後押しした可能性が高い。

 米国では、どんな有望株であっても、マイナーで数年間の下積み生活を送り、メジャーデビューを果たすことがほとんど。その間のマイナーリーガーの生活は過酷だ。米メディアは「マイナーリーガーは最低賃金以下の生活を送っている」とレポート。若手選手が月給1100ドル(約11万8000円)という厳しい条件で夢を追いかけている実状について伝えている。

 特集を組んだのは、ワシントンDCの週間新聞「ワシントンシティ・ペーパー」。「マイナーリーガーたちは夢を追うために最低賃金以下の生活を送っている」とのタイトルで、若手選手がいかに苦しい条件の中でプレーしているかに迫っている。その中に登場するのは、ナショナルズ傘下1A+のポトマックに所属するコール・フリーマン内野手。ルイジアナ州立大からドラフト4巡目で入団した同選手は現在、球場から約10分の距離にあるホストファミリー宅に暮らしているといい、契約金15万ドル(約1610万円)を手にできたことは「幸運」だったと考えているという。

「売店でポップコーンを売っている人たちのほうが、フィールドでプレーする選手たちよりも給料が良い」

 記事では、フリーマンの友人の中には、収入を得るために「ウーバー」のドライバーを務めている選手もいると紹介。「ドラフト上位指名の選手たちは数百万ドル(1億円以上)の契約金を得ることができるものの、(MLBという)夢を追いかけるために最低賃金を遥かに下回る賃金しか得られていないマイナーリーガーたちが、毎年何百人も存在している」と言及している。さらに、AP通信が報じたデータとして、1Aの選手の月給は1100ドル(約11万8000円)、2Aは1500ドル(約16万1000円)、3Aは2150ドル(約23万1000円)であることも指摘。2014年には、3Aの選手3人が適正賃金と残業代を支払わなければならないという州法に違反するとして、集団訴訟を起こしたこともあったと振り返っている。

 特集では、2013年ドラフト6巡目で入団し、2017年までカージナルス傘下でプレーしていたジミー・リード投手の「売店でポップコーンを売っている人たちのほうが、フィールドでプレーする選手たちよりも給料が良いと、ぼくたちはいつもジョークを口にしていたものだよ。普通のファンは知らないことだけどね。ユニフォームを着ている選手を見ると、彼らはおそらく金持ちなんだろうなと思うものだからね。現実はというと、選手たちのお金はほとんどないようなものなんだ。スーツケースにある荷物だけで生活しているんだ。本当に過酷だよ」というコメントも紹介。また、フリーマンも「マイナーリーガーたちはもっと良い給料をもらうべきだと、間違いなく思っているよ。大金をもらえるべきだと言っているわけじゃないんだ。けど、もう少しだけ多くもらえることで間違いなく選手にとっては助けになり得るんだよ。特に、契約金をいっぱいもらっていない選手にとってはね」と証言している。

 米メディアの中には、ソフトバンクに入団したスチュワートが日本でプレーした場合とMLB球団でプレーした場合を比較し、最初の6年間だけで見れば日本の報酬の方が倍の高さになると算出した記者もいた。もちろん、どちらが正解となるかは今後の自身のプレー次第となるが、スチュワートが成功して新たな道を切り拓けば、過酷なマイナーリーガーとしての生活ではなく、日本行きを選ぶ選手がさらに増えてくるかもしれない。(Full-Count編集部)

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