ETRC第2戦:帝王ハーンがハンガロリンク制圧。ポール・トゥ・ウインで週末2勝

 ヨーロッパ圏内を転戦し、年間で40万人以上の観衆を集めるFIA格式の人気選手権、ETRCヨーロピアン・トラック・レーシングチャンピオンシップの第2戦が6月22~23日にハンガリーで開催され、自身6度目の王座を目指すディフェンディングチャンピオンのヨッヘン・ハーン(IVECO)が、土日ともにポールポジションからレース1、レース3を制する圧巻の強さを披露した。

 F1はもとより、速度域の低いツーリングカーでもそのツイスティさで知られるハンガロリンクを舞台とした1戦は、ETRC史上もっとも成功を収めたドライバーである“帝王”ことハーンが、5.3tを超える13リッター、1200馬力のトラックヘッドを華麗に操り、土曜予選から定位置のポールポジションを獲得する。

 直後のレース1でもハーンは盤石のスタートでフロントロウのアントニオ・アルバセテ(Truck Sport Lutz Bernau/MAN)を封じると、安定のスピードとレースマネジメントの巧みさで一人旅へ。

 オープニングの攻防でラインを乱したアルバセテを、2017年王者のアダム・ラッコ(Buggyra Racing/フレートライナー)がかわし、レースの大半で2番手を走行するも、161.5km/hに規制された最高速をわずかに超えたとして10秒のペナルティ加算に。

 この失態で平静さを欠いたチェコ出身の元王者は、その後も2度のスピードリミット違反を犯してしまい、ドライブスルーの追加のみならずレース後失格処分の憂き目に遭ってしまう。

 これでアルバセテが2位表彰台を取り戻し、最後の3位ポディウムには6番グリッドからDon’t Touch Racingのアンドレ・クルシム(IVECO)らをかわしてきたホセ・ロドリゲス(Reboconort Truck Racing Team/MAN)が入り、シーズン初表彰台を獲得。

 4位クルシムの背後には、シリーズ唯一の女性ドライバーであるシュティフィ・ハルム(Team Schwabentruck/IVECO)がつけ、彼女と全ラップにわたるバトルでファンを沸かせた地元の英雄、ノルベルト・キス(Team Tankpool24 Racing/Mercedes-Benz)が6位に続いた。

 続く土曜午後のレース2は、ラッコの失格により繰り上げ8位となっていたレネ・ラインアート(Reinert Racing/IVECO)がリバースポールからスタート。しかしこのレースで主役を演じたのは、早朝のスーパーポールでミスを犯し、前戦8番グリッドから苦戦を強いられていたサッシャ・レンツ(SL Trucksport30/MAN)だった。

土曜、日曜ともに帝王ヨッヘン・ハーン(左)が予選スーパーポールセッションを制した
唯一のボンネットキャブ型となるフレートライナーに乗る2017年王者アダム・ラッコは、R1でペナルティに沈む
R2はサッシャ・レンツがリバースグリッドのフロントロウから快心のレースを見せた
2018年型のシュティフィ・ハルム車を譲り受けIVECOにスイッチしたレネ・ラインアート(左)がR2師弟対決を制した

 レース1での7位フィニッシュで午後のフロントロウを確保したドイツ人のレンツは、同じく同郷の大先輩であるラインアートを上回るダッシュをみせると、1コーナーを制して徐々にリードを広げていき、予選失敗から始まった週末の悪い流れを断ち切るスピードを披露。

 一方の2番手ラインアートは、2年前まで自チームで走っていたハルムを3番手に抑え込むディフェンス一方のレースとなり、彼女が2018年まで使用していたIVECOで老獪なブロックラインを取り続ける。

 2番手以降、後方8番手までトレーラヘッドの数珠繋ぎとなるレース展開にも助けられ、32歳のレンツが「先頭に立ってからは一切ミラーを見ず、毎ラップ予選のように走ったよ」と、うれしいETRCキャリア2勝目をマーク。2位に師弟対決を制したラインアート、3位ハルムのポディウムとなった。

 明けた日曜は朝から雨の降るレインコンディションのなか、再び帝王ハーンが予選スーパーポールを制すると、ダンプ路面によりイエローフラッグ掲示でのスタートとなるも、前日に続いてポールシッターのハーンが快適な週末2勝目を獲得。これで開幕での2勝と合わせて7戦4勝と、早々に選手権を支配する勢いをみせている。

 さらに、この難しいコンディションのなかで素晴らしいトラックコントロールを披露したハルムが2位に続き、IVECOがワン・ツー・フィニッシュを達成。3位に地元のキスが入り、表彰台で大観衆からの盛大な拍手に応えることができた。

 そして週末最終ヒートのレース4は、リバースのフロントロウから出たクルシムが、ルーキーのジェイミー・アンダーソン(Anderson Racing/MAN)を早々に仕留めて今季初勝利。3番手発進のラッコはオープニングラップで先頭をうかがう猛チャージを見せたものの、スロットルトラブルでマシンを止める不運に見舞われる。

 これでラインアートがR2に続く2位表彰台でIVECOが再びのワン・ツー。3位はアルバセテとなり、週末2度目のポディウムを獲得した。続くETRC第3戦は、2018年にWTCR世界ツーリングカー・カップとの併催イベントが行われたスロバキアリンクが舞台。しかし7月6~7日の2019年大会は、残念ながらETRCの単独イベントとなっている。

例年、このハンガロリンクで地元ファンの大声援を集めるノルベルト・キスはR3で3位ポディウムを獲得
シリーズ紅一点のシュティフィ・ハルム(左)も毎戦表彰台に絡む活躍を演じている
Don’t Touch Racingのアンドレ・クルシムはR4で勝利し、自身キャリア4勝目を飾った
これでR4はアンドレ・クルシム、レネ・ラインアート、アントニオ・アルバセテの新鮮な表彰台となった

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