ホンダF1田辺TD優勝インタビュー(2):「自分たちの技術を信じて続けてくれたから、いまがある」。スタッフへの労いと表彰台で起きた『ホンダ・コール』

 F1第9戦オーストリアGPでレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが今季初優勝、ホンダとしては2006年のハンガリーGP以来、13年ぶりのF1優勝となり、フェルスタッペンとともに表彰台へ上がったホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターに優勝後のインタビューを行った。

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――まだ、審議中ですが、(※会見は審議結果前に開始。この後シャルル・ルクレールとの接触は、レーシングインシデントとしてペナルティが科されないことが正式に決定した)田辺さんは他のカテゴリーを含めて、これまでなんども優勝を経験しています。今回の優勝はどれくらいうれしいですか。
田辺豊治F1テクニカルディレクター(以下、田辺TD):トップレベルですね。

――表彰台で泣いていましたね。
田辺TD:いや、シャンパンが目に入っただけです(笑)

――表彰台に上がったのは?
田辺TD:いままでで初めてです。インディでもないですね。

――どういう経緯で表彰台に上がったのでしょうか?

※ホンダの広報が「昼にホンダの首脳陣がレッドブルの首脳陣とランチをとっていたときに、『もし今日勝ったらホンダのスタッフが表彰台に上がってほしいから誰にする?』と聞かれたので、山本MD(ホンダの山本雅史F1マネージングディレクター)が一番苦労している田辺を上げたいということになった」と説明

田辺TD:レース後に(ヘルムート)マルコさん(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)が「表彰台へ行くぞ」と言うので、私はてっきり“表彰台の下”のことだと思って、パルクフェルメに歩いて行ったら、山本さんが来て、「違うよ、あっち(表彰台の上)だよ」と。

 慌ててコントロールタワーを駆け上がって行ったんですが、係りのスタッフが私のことを認識していなかったらしく、なかなか中に入ることができず、表彰式が始まってしまったので、国家斉唱が終わってから、こそこそと入っていったんです。

――シャンパンシャワーは?
田辺TD:マックスにかけられたので、かけ直さないといけないと思い、かけようとしたら、帽子をとってくれました(笑)

2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクター

■コースを埋め尽くしたオランダファンの「ホンダ・コール」

2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

――表彰式後に、コースを埋め尽くしたオランダ人ファンから「ホンダ・コール」が起きました。
田辺TD:スタート前にテレビカメラがオレンジ一色になったスタンドを映したとき、『これでレースで何かあったらまずいな』と思っていましたので、優勝できてよかったです(笑)

 ファンの声援はうれしいですし、われわれがF1を戦っているのは、レースに勝つためです、技術者を育成するためというのはもちろん、ありますが、やはりホンダを世界中の人々に知ってもらいたい。今日の優勝によって、少しでも多くの世界中の人にホンダを知ってもらうようになればいいなと思っています。

――ホンダのスタッフに対してひと言頂けますか。
田辺TD:今日の優勝は、このプロジェクトを始めた人たち、またここまで関わってきた人たち、いままで関わってきた人たちすべてのおかげです。

 私は昨年からこのプロジェクに関わりましたが、参戦当初はエンジンがかからなかったり、徹夜して動くようにしても次の日に走らせたら壊れたり、そのような日々を過ごした人たちが自分たちの技術を信じて続けてくれたから、いまがあります。

 また昨年われわれを信じてパートナーを組んでくれたトロロッソのことも忘れてはなりません。感謝してもしきれません。

――ホンダにとっては、2006年のハンガリーGP以来、13年ぶりの優勝です。
田辺TD:長かった。ホンダは2008年限りでF1を撤退したわけですが、(そのチームを引き継いだブラウンGPに乗る)ジェンソン・バトンが2009年の開幕戦で優勝したときは、テレビで見ていて泣きました。

※ここで、ホンダの広報から「審議の結果、お咎めなし」という報告が入る。

田辺TD:おおーっ。

――審議の結果、正式に優勝が決まりました。
田辺TD:(審議の結果がどうなろうと)今日のレース展開は変わらないし、最初にチェッカーフラッグを切ったことは事実です。

――今回はフェラーリだけでなく、メルセデスも抜いての優勝です。
田辺TD:『今回は』ではなく、『今回も』と言えるように、頑張ります。

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