BTCC第5戦:猛威を振るう新型BMW、王者ターキントンも連勝でキャリア50勝達成

 2019年シーズン折り返しを迎えたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、6月29~30日の週末にオールトンパークでの第5戦が開催され、WSRウエスト・サリー・レーシングの王者、コリン・ターキントンがレース1でポール・トゥ・ウイン。続くレース2でも連勝を達成し、キャリア通算50勝という節目の勝利を挙げている。

 2018年はBMW125i Mスポーツで3度目のタイトルを獲得し、今季もBMWのファクトリーチームとしてブランニューモデルの330i Mスポーツをドライブするターキントンは、前戦でチームメイトとなるBMW Pirtek Racingのアンドリュー・ジョーダンが連勝を飾ったこともあり、バラスト満載の状態でオールトンパークに臨んでいた。

 しかし予選では今季最速モデルの称号を欲しいままにするBMW3シリーズとターキントンが驚異のアタックを見せ、「ピンポイントで完璧なラップがこなせた」と、Cobra Sport AmD AutoAid/RCIB Insuranceのサム・トルドフ(FK2ホンダ・シビック・タイプR)を0.027秒差で下し、シーズン2度目のポールポジションを確保してみせた。

 明けた日曜のレース1でもFRのトラクションを活かしていつもどおり強力なスタートを決めたターキントンは、セカンドロウ3番グリッドから上がってきたHalfords Yuasa Racing、チーム・ダイナミクスのダン・カミッシュ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)を引き連れレースを支配。

 6周目にはそのカミッシュのチームメイトである大ベテラン、マット・ニールがバリアにクラッシュし、ホイール脱落のダメージを負いセーフティカー(SC)が導入されるも、5周後のリスタートでも盤石のディフェンスでシビックの仕掛けを封じ、18周に伸びたレースでライト・トゥ・フラッグの勝利を記録。2位カミッシュに続き、3位表彰台にも同じくスタートでFRの利を活かしたジョーダンのBMWが入っている。

 これでさらにサクセスバラストを搭載したBMW330i Mスポーツだったが、再びポール発進となったレース2でも盤石のスタートダッシュを披露。

 オープニングラップの後方ではWSRから移籍のPower Maxed Racing、ロブ・コラード(ボクスホール・アストラBTCC)が2017年王者、チームBMRのアシュリー・サットン(スバル・レヴォーグGT)とターン3のカスケード・コーナーで絡み、サットンが大きくポジションダウン。

 続くアイランド・ベンド先のヘアピンでは、BTCレーシングのジョシュ・クック(FK8ホンダ・シビック・タイプR)が、その元ユーザーであるジャック・ゴフ(フォルクスワーゲンCC/Team Hard)のリヤにヒットし、その余波でスピンしたマシンがBTCのチームメイト、クリス・スマイリー(FK8ホンダ・シビック・タイプR)のボディサイドに突っ込む形となり、いきなりSC導入の波乱に。

 さらに13周目にはExcelR8 Motorsportのサム・オズボーン(MG6 GT)がアヴェニュー・コーナーでクラッシュし、このレース2度目のSCピリオドとなるも、その間も先頭集団のBMWは安泰のポジショニングでリードを堅持し、ターキントンが連勝。2位にジョーダンが続きWSRのBMWがワン・ツーを決め、3位にカミッシュの表彰台となった。

R1、R2ともに表彰台の顔ぶれは変わらず。唯一、チーム・ダイナミクスのダン・カミッシュがBMWに喰い下がる
豪華ベテラン勢は明暗分かれ、マット・ニール(中央)はR1ホイール脱落。今季電撃参戦のマーク・ブランデル(左)はいまだトップ10なし。ジェイソン・プラト(右)は新天地ボクスホールで気を吐き連続9位となった
R1で今季2度目の最前列からポール・トゥ・ウインを飾り、記録に王手を掛けた
今季好調、ランキング2位を走るジョシュ・クックは、R2でマルチクラッシュの引き金となってしまう

 これでターキントンは、ジェイソン・プラト、マット・ニール、アンディ・ローズに続く史上4人目のBTCC通算50勝達成ドライバーとなり、歴史に名を刻む勝利を飾った。

「まずこの週末に、バラスト満載のマシンとソフトタイヤでポールポジションを獲得できるなんて夢にも思っていなかった。トラック上でのマシンはとにかく重さとタイヤのムービングで苦しい状態だったが、それでも330i Mスポーツのハンドリングと戦闘力は非常に優れていた」と、マシンを称えた王者ターキントン。

「ラウンド4でのアンドリュー(・ジョーダン)のように、レース1で勝ってさらにバラストを積み、続けてレース2を獲るなんてそうそうできることじゃない。この2レースで勝ち、記念すべきキャリア50勝目を挙げられたのは、間違いなく僕のキャリアのハイライトだ。WSRのメンバー全員を誇りに思うよ」

 そして最終ヒートのレース3は、リバースポール発進のTradePriceCars.comアウディS3セダンBTCCをドライブするジェイク・ヒルが序盤のレースを引っ張るものの、3周目の1コーナー、オールドホールでニールのシビックが鮮やかな動きでアウディのインに飛び込み、首位浮上かと思われたそのとき、立ち上がりでリヤにヒットされたニールのマシンが激しくスピンし、あたり一面スモークが立ち込める事態に。

 この白煙で視界を奪われた後続では、ジェイソン・プラト(ボクスホール・アストラBTCC/Power Maxed Racing)、トム・イングラム(トヨタ・カローラBTCC/TOYOTA GB with SpeedWorksMotorsport)らがコースオフ。

 そのまま15周を走破したヒルのアウディがトップチェッカー。2位はWSRのトム・オリファント(BMW330i Mスポーツ)を抑えきったTeam Parker Racingのステファン・ジェリー(BMW125i Mスポーツ)が続き、ヒルがキャリア初勝利を挙げたかと思われたが、レース後のパドックではニールとの接触が審議となり、最終的にレースタイムに20秒加算のペナルティが下され大きく降格。10年以上のキャリアを持つジェリーがこちらもキャリア初勝利を手にしている。

 これでドライバーズランキングでは王者ターキントンが195ポイントで首位をキープ。2位に162ポイントでチームメイトのジョーダンが浮上、3位に148ポイントのBTCホンダ、クックが続き、チーム&マニュファクチャラーの両ランキングではWSRとBMWが首位に立っている。

 このままBTCC2019年シーズンは恒例のサマーブレイクに入り、後半戦は8月3〜4日のスネッタートンから再開となる。

旧ユーロテックの機材を使用するAmDも好調さを維持し、ロリー・ブッチャー(手前)が4-7-5位、サム・トルドフが5-5-3位を獲得
R2ではアンドリュー・ジョーダン(左)が2位に入り、WSR勢がワン・ツーを決めた
R3のリバースポールから出たジェイク・ヒルだが、自身初優勝をペナルティでフイにすることに
旧WSR車のBMW125iに乗るステファン・ジェリーが、うれしいBTCC初優勝を飾っている

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