新幹線長崎ルート  全線フルへ知恵と行動を 県議会を振り返って

 長崎県が直面する喫緊で重要な課題の一つ、九州新幹線長崎ルートの整備問題。未着工区間の新鳥栖-武雄温泉(佐賀県内の約51キロ)の整備方式を巡る議論が、佐賀県側の反発で暗礁に乗り上げる中、今定例議会では全線フル規格実現に向け県の取り組みをただす場面が目立った。
 長崎ルートを巡っては、当初予定されていたフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入が、車軸トラブルや高コストで白紙に。FGT断念を踏まえ、与党検討委員会は全線フルとミニ新幹線の2案のうち、本県やJR九州も求める全線フルを軸に方向性をまとめたい考えだが、佐賀県の山口祥義知事は新鳥栖-武雄温泉での新幹線整備そのものに反発している。
 長崎ルートは2022年度、武雄温泉で新幹線と特急を乗り換える「リレー方式」で暫定開業する予定だ。その状態はいわば、全国の新幹線ネットワークにつながらない「出口なき新幹線」。リレー方式の固定化を懸念する本県側は、23年度着工を目指し環境影響評価(アセスメント)が始まっている北陸新幹線敦賀-新大阪に建設費2兆1千億円を確保されると、工期15年の後に回され、長崎ルートの全線完成はさらに遅れかねないと危機感を募らせている。
 新鳥栖-武雄温泉の整備方針を6月中に示すとしていた与党検討委員会は、佐賀県が反対している現状と参院選への影響も考慮し、結論を先送り。こうした事態に、今定例会総務委員会では複数の議員が機運を盛り上げる県民大会の開催を県に要請した。背景には「県民に現状が共有されていない」という思いがある。
 佐賀県では6月22日、市議有志がフル規格で整備した場合のメリットと地域の経済浮揚を考えるシンポジウムを開催。嬉野、武雄両市長や沿線市議、両県の県議も参加した。佐賀県内でもフル規格への動きが出始めている。県議会から県民大会を求める声が出ていることについて、中村法道知事は取材に「十分配慮しながらやり方を選択し、突破を考えなければいけない」と答えた。
 “視界不良”に陥っている長崎ルート。新鳥栖-武雄温泉のフル規格化に向け、県は国に8月末の政府概算要求への調査費計上を要請しているが、国が方針を示すのを待つだけでは主体性がない。事態打開へ、県と議会の知恵、行動が問われている。

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