“夏の海星”ぶれず頂点 投打の歯車 大一番がっちり 「後ろを信頼」柴田1失点完投

【決勝、海星―鎮西学院】9回を1失点完投した海星の柴田=県営ビッグNスタジアム

 「このユニホームを着ている限り、そこは違うと思う」。ノーシードで4強入りした後、加藤監督はかみしめるように言った。報道陣の「ここからは伸び伸びやれるのでは」という質問を否定して「選手たちが甲子園を目指す以上、プレッシャーを持ってやる」と。その言葉通り“夏の海星”が、ぶれずに、堂々と、県の王者に返り咲いた。
 投打の歯車が大一番でがっちりかみ合った。投の主役となったのは、エースナンバーを背負った柴田。準決勝までの5試合すべて継投。与四死球も目立つなど「海星は投手力が…」と言われ続けてきたが、この日は一転した。背番号1は五つの球種を駆使して96球、1失点で完投。「後ろを信頼しないと完投できない。それができた」。一緒に苦しんできた投手“陣”が引き出した最高のマウンドだった。
 捕手太田の力も大きかった。準決勝までは配球ミスなどを理由に途中交代させられてきたが、最後まで丁寧に、強気でエースを支えた。九回2死2ストライクから打者のバットが空を切ると「悔しさが一気に吹き飛ぶような気持ちになった」と会心の笑みを浮かべた。
 数々の歴史を刻んできた伝統校だからこそ、経験も知識もあるOBやファンが多い。負ければ厳しく批判もされる。今季も「力はある」と評されながら、県内主要大会で3回もサヨナラ負けして、きつい言葉も浴びせられてきた。その悔しさを、一番大事な夏にぶつけ、結果を出した。
 「ぶれなかった」。試合後、加藤監督は短い言葉で教え子たちを評した。胸を張る選手たちの“Kaisei”の文字は、大会前よりたくましく見えた。

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