海星 高い攻撃力 混戦象徴 ノーシード同士で決勝 全国高校野球長崎大会 総評

5年ぶり18度目の夏の甲子園出場を決めて喜ぶ海星の選手たち=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 第101回全国高校野球選手権長崎大会は28日、海星が5年ぶり18度目の夏の甲子園出場を決めて幕を閉じた。鎮西学院との決勝は、混戦の今季を象徴するような12年ぶりのノーシード対決。令和最初の切符を懸けて55チームが熱戦を繰り広げた大会を総括する。

 ■投打の歯車
 海星は波佐見との1回戦をはじめ、準々決勝まで投手陣がやや不安定だったが、看板の打線がそれを補った。俊足巧打の松尾悠、一発もある大串の1、2番が引っ張り、松尾倫や坂本ら中軸が勝負強さ、村上や浦田らが機動力を発揮。4番高谷が「自分はただ4番目の打者」と言う通りに切れ目がなく、計14盗塁の積極性に計19犠打の手堅さも兼ね備えていた。
 準決勝以降は投手陣も奮起。大会唯一のタイブレークにもつれた長崎日大との準決勝は、最速146キロ右腕の江越が三回途中から10回2/3を無失点と好救援した。決勝は攻撃陣の強力な援護も受けて柴田が今大会チーム初完投。豊富な球種を捕手太田がコーナーへ丁寧に投げさせるなど、試合を重ねるごとに投打の歯車がかみ合っていった。
 悲願の優勝を狙った鎮西学院は3回戦から準決勝まで、長崎南山、創成館、長崎商のシード3校を相手に防御率0.33を記録。エース楠本は今大会最も躍動した右腕の一人だった。海星との決勝は失策が絡み、まさかの10失点。11年ぶりの決勝、あと一歩で甲子園という緊迫した中での精神力、当たり前のことを当たり前にやる難しさを感じた試合になった。

 ■健闘目立つ
 4強は長崎商と長崎日大。長崎商は桝屋と一ノ瀬、長崎日大は藤田の投手を中心に、攻守の安定感は抜群だった。だが、準決勝で、長崎商は1-0の三回に4失点した後に打線が沈黙。長崎日大は無死一、二塁のタイブレークの守備を1失点でしのいだ後、攻撃の犠打失敗が響いた。ワンプレーで流れが変わる厳しさ、怖さを思い知った。
 準々決勝で敗れた中にも印象的なチームや選手がいた。昨年優勝の創成館は今年も厚い選手層を披露。鴨打、松永の投打のルーキーや走攻守三拍子そろう松尾ら下級生は今後も他校の脅威になるだろう。諫早農の中村や九州文化学園の金子のほか、3回戦で涙をのんだ長崎南山の磯木らは来季、県を代表する右腕になりうる将来性を示した。
 離島勢も健闘した。五島海陽は9年ぶりの夏1勝を挙げ、2回戦は壱岐を破って3回戦進出。五島は23年ぶり、対馬も14年ぶりに3回戦へ駒を進めた。過疎化や有力選手たちの島外進学など限られた環境でも、熱心な指導者の下、懸命に汗を流してきたのがプレーや言葉から伝わった。

 ■選手第一を
 この夏、全国的に話題となったのは、岩手大会の決勝で登板せずに敗れた大船渡の佐々木ら投手の連投に対する考え。メジャーリーガーのダルビッシュ有や菊池雄星らは、連戦が続く大会日程そのものに疑問を呈した。これまで甲子園を含め、一人が何試合も投げ抜く姿は確かに感動を呼んだ。選手もその気力と体力を養う練習を重ね、実際に備えてもいるはずだ。
 ただ、地方大会で連戦を組むのは本当に「選手第一」につながるのだろうか。球数制限などが盛んに議論される今の時代だからこそ、そう感じる人も多く、取材中も何度か話になった。地方大会はエースに頼りがちな公立校も複数ある。長く歴史を刻んできただけに賛否が分かれ、運営上の苦労も承知しているが、開幕を前倒しして休養日を増やすなど検討の余地があると感じた。
 そうしたプレー以外の面も注目される中、101回目の全国選手権が8月6日に幕を開ける。県勢は過去10年間、夏の甲子園は3勝にとどまる。ライバルの思いも胸にした伝統校の海星が、それを打開すると同時に、はつらつとした野球で多くの勇気や元気を届けてくれることを期待したい。

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