IMSA第9戦:マツダ・ヨースト、破竹の3連勝。アキュラ・ペンスキーと0.227秒差の死闘制す

 8月4日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第9戦がアメリカ・ウィスコンシン州のロード・アメリカで行われ、2時間40分のセミ耐久レースをマツダチーム・ヨーストの55号車マツダRT24-P(ハリー・ティンクネル/ジョナサン・ボマリート組)が制した。55号車マツダの総合優勝は第6戦ワトキンスグレン以来、今季2度目。僚友77号車が第7戦モスポートで優勝しているマツダチームの連勝が“3”に伸びている。

 前戦ライムロックパークから2週間、全4クラスが集うイベントとしては77号車マツダRT24-Pが初優勝を飾った第7戦モスポート(CTMP)以来の開催となった今戦は、予選前のプラクティスから2台のアキュラARX-05を走らせるアキュラ・チーム・ペンスキー勢が速さをみせた。

 土曜の予選でもスピードを維持した2台のアキュラDPiは、今季すでに2勝を挙げている6号車がポールポジションを獲得。エリオ・カストロネベス駆る7号車が2番手につけフロントロウを独占した。

 迎えた決勝、ポールシッターのデイン・キャメロンがドライブする6号車アキュラを先頭に7号車アキュラが続き、その後方から55号車マツダと77号車マツダが追随していく。スタート直後はこの4台が、5番手以下を引き離しながら静かな戦いを展開した。

 レースが動いたのは1回目のピットストップタイミングだ。14周目に2番手を走る7号車アキュラがピットインすると翌周、首位を走る6号車アキュラと3番手77号車マツダが同時にピットへ。16周目にはパック最後尾につけていた55号車マツダがピットレーンに入っていく。

 4台のコース復帰後、両陣営内で順位が入れ替わり、トップは7号車アキュラに。これに6号車アキュラ、55号車マツダ、77号車マツダが続くオーダーとなった。この時点でマツダはやや遅れをとるが、レース開始1時間後に迎えた2度目のピットタイミングが近づくにつれ55号車マツダがトップ2台に再接近し、その差を1.5秒にまで詰めた。

 しかし、2チーム計4台が同時に入った2回目のピットストップでは順位変動は起きず。そのまま膠着状態が続くかと思われた。ところが、スタートから1時間7分、リッキー・テイラー駆る首位7号車アキュラが緊急ピットイン。フロントスポイラーにコース上のデブリを巻き込んでしまったのだ。この影響で7号車アキュラは優勝争いから脱落。大きく順位を落とすこととなってしまった。

■ファイナルラップの最終コーナーまで続いたマツダとアキュラの優勝争い

アキュラ・チーム・ペンスキーの6号車、7号車アキュラARX-05
マツダチーム・ヨーストの77号車、55号車マツダRT24-P

 そのわずか5分後、ボマリートからティンクネルにドライバー交代を終えた55号車マツダが、片翼を欠いた6号車アキュラに襲いかかる。この2周前からテール・トゥ・ノーズのになっていた2台は38周目、並走しながらホームストレートを通過。緩やかに右へ90度折れるターン1に向かって突進していく。

 ここでアウト側のラインを採ったティンクネルは、鮮やかに大外刈を決めて首位に浮上。反対にファン・パブロ・モントーヤ駆る6号車アキュラは、このレースで初めてマツダにレースリーダーの座を明け渡してしまった。

 その後、55号車マツダは2度のルーティンピット作業を経て、6号車アキュラとの差を約5秒と開いていく。だが、モントーヤから代わり再びマシンに乗り込んだキャメロンがレース終盤にじりじりとその差を詰めていく。

 レース残り2分、55号車がトラフィックに引っかかったタイミングで2台のギャップはほぼゼロに。さらに3番手の77号車マツダもこれに加わり3台がテール・トゥ・ノーズの状態でファイナルラップに突入した。

 再び優勝を手にしたいティンクネルは多数のトラフィックが進路を遮るなか、ときに接触しながらもなんとかキャメロンの猛攻をブロック。最終的にわずか0.227秒という僅差で2勝目を勝ち取ってみせた。敗れた6号車アキュラはポールポジションからスタートしたものの、第5戦デトロイト以来の今季3勝目とはならず。第7戦からの連勝を狙った77号車マツダは3位でレースを終えた。

 なお、4位となったウェレン・エンジニアリング・レーシングの31号車キャデラックDPi-V.Rはトップ3から70秒以上遅れてのチェッカーとなり、“強豪”ウェイン・テイラー・レーシングの10号車キャデラックDPi-V.Rも5位が精一杯。今戦から車重が20kg増の980kgとなったキャデラック勢は一度も優勝争いに加わることができずにレースを終えることとなっている。

 LMP2クラスはPR1・マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07・ギブソン(マシュー・マクマリー/パトリック・ケリー組)が、パフォーマンステック・モータースポーツの38号車オレカ07を逆転して第4戦ミド・オハイオからの連勝を4に伸ばした。

■2時間40分、ノーコーション。条件は同じでも2ピットが正解

テール・トゥ・ノーズ状態でチェッカーフラッグを受ける55号車マツダRT24-Pと6号車アキュラARX-05
PR1・マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07・ギブソン
ポールポジションからスタートした4号車シボレー・コルベットC7.Rはクラス6位完走

 フォード、ポルシェ、BMW、シボレーが激突するGTル・マン(GTLM)クラスでは、BMWチームRLLが予選でフロントロウを独占するがペナルティでクラス最後尾スタートに。代わってポールシッターを務めたコルベット・レーシングの4号車シボレー・コルベットC7.Rがレース序盤をリードしていく。

 しかしスタートから40分後、ライアン・ブリスコー/リチャード・ウエストブルック組67号車フォードGTがこれを交わしてクラス首位に浮上。その後、王道の2ピット作戦を選択して2時間後にトップチェッカーを受けた。67号車フォードは前戦ライムロックパークで3ピット戦略を成功させて勝利を飾っており、これで2連勝となった。

 なお、今戦は2時間40分レース中に1度もセーフティカーが入らないという条件では前戦と同じだったものの、2位に入った66号車フォードGT、3位となったポルシェGTチームの912号車ポルシェともに2ピット作戦で表彰台を獲得している。一方、4位の3号車コルベット以下は軒並み3ピット戦略を採っていたことをみると、今戦は2ピットが正解だったようだ。

 FIA-GT3カーで争われるGTデイトナ(GTD)クラスは多くが2ピット戦略を採った。このなかで4番手からスタート後、長らくポール・ミラー・レーシングの48号車ランボルギーニ・ウラカンGT3と首位争いを繰り広げたパフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 R(デニス・オルセン/ザカリー・ロビション組)が、終盤にオーバーテイクを決めて第8戦ライムロックパークに続くクラス優勝を飾った。

 2位はスペシャルリバリーから通常のカラーリングに戻した48号車ランボルギーニ。クラス3位にはターナー・モータースポーツの96号車BMW M6 GT3が入り、こちらも2戦続けて同じリザルトに収まっている。

 マイヤー・シャンク・レーシングのアキュラNSX GT3は86号車がクラス5位、僚友57号車はクラス13位という結果に。レクサスRC F GT3で参戦しているエイム・バッサー・サリバンは14号車がクラス4位に。12号車は9番手でレースを終えた。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次戦第10戦は8月23~25日、アメリカ・バージニア州のバージニア・インターナショナル・レースウェイで行われる“ミシュランGTチャレンジ・アット・VIR”だ。その大会名称のとおり、同ラウンドはGTLMとGTDクラス車両のみが参戦する。

フォード・チップ・ガナッシ・レーシングの67号車フォードGT
912号車ポルシェ911 RSR
9号車ポルシェ911 GT3 Rと48号車ランボルギーニ・ウラカンGT3
14号車レクサスRC F GT3と96号車BMW M6 GT3

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