「東日本大震災」関連倒産(8月度速報値)

 2019年8月の「東日本大震災」関連倒産は1件(速報値:8月30日現在)で、前年同月(2件)を2カ月ぶりに下回った。月次ベースでは、2018年3月以来、1年5カ月ぶりに1件にとどまり今年最少となった。ただ、震災から8年5カ月を経過して収束傾向が強まるなか、震災当月の2011年3月から102カ月連続で関連倒産が発生、累計件数は1,922件(8月30日現在)に達した。

8月の倒産事例

 (株)アタック(TSR企業コード:140181121、法人番号:2370201002112、宮城県)は、1977年に金型製造業として創業、1983年6月に法人改組された。2001年9月期の売上高はピークとなる約5億7,000万円を計上したが、以降は市況悪化に伴い、補填事業として2003年6月から葬祭事業の準備を開始し、2005年から本格的に葬祭事業を稼働した。2010年9月期に不採算の金型製造事業から撤退し、葬祭事業に特化した。
 ところが2011年3月、東日本大震災で所有設備が被害を受け、2011年9月期の売上高は3,129万円までダウン。災害損失を含め、最終赤字は3,416万円を計上した。このため、2013年1月に第6次中小企業グループ施設等復旧整備補助金に認定され、資金繰りの改善を図っていたが、業績改善の見通しが立たず、2019年8月30日仙台地裁古川支部に破産を申請した。

東日本大震災関連倒産 震災後月次推移

 累計件数1,922件の都道府県別で、最も多かったのは東京の569件。次いで、宮城179件、北海道85件、岩手82件、神奈川79件、福島77件、茨城と千葉が各76件、福岡70件、栃木と群馬が各61件、静岡50件、山形48件、埼玉と大阪が各46件と続く。直接被災地の東北6県の倒産件数は443件(構成比23.0%)だった。
 産業別では、最も多かったのが宿泊業や飲食業などを含むサービス業他の510件(構成比26.5%)。次いで、製造業443件(同23.0%)、卸売業351件(同18.2%)、建設業224件(同11.6%)、小売業183件(同9.5%)、運輸業79件、情報通信業64件と続く。
 被害型で分類すると、「間接型」1,710件(構成比89.0%)に対して、「直接型」が212件(同11.0%)だった。

東日本大震災関連倒産

震災関連の集計基準

「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。

震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻した(直接型) 以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻した(間接型) 震災の影響による経営破綻が、取引先や弁護士等への取材で確認できた(直接・間接型)

  • ※集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
  • ※「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。

倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)

  • 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
  • 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
  • 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)

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