阪神鳥谷は「自分で引退を決められる選手」 球団OBは“引退勧告”に「ちょっと冷たい」

阪神・鳥谷敬【写真:荒川祐史】

阪神OBの野口寿浩氏が指摘「鳥谷は今チームにいる選手の中で一番の功労者」

 阪神の鳥谷敬内野手が球団から“引退勧告”を受けたことを31日に明らかにし、今季限りで退団する意思を示した。大ベテランは開幕から出場機会に恵まれず、成績も低迷。5年契約最終年の今季は推定年俸4億円だが、56試合出場で77打数16安打の打率.208にとどまっている。

 今回の“引退勧告”に対しては様々な意見が出ているが、球団OBはどう見ているのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季までヤクルトで2年間バッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「ちょっと冷たいよな、と思います」と胸の内を明かす。野口氏は日本ハムからトレードで阪神に移籍し、2003~08年までプレー。03、05年にはリーグ優勝を経験し、鳥谷とも04年から5シーズンに渡ってチームメートとしてプレーしたが、「彼は自分で引退を決められる数少ない選手」と後輩を気遣った。

 一連の“騒動”について、野口氏は率直な思いを明かす。

「私も報道で出ていることしか知らないので、それを信じるしかないですが、ちょっと冷たいよな、とは感じます。鳥谷は今チームにいる選手の中で一番の功労者です。ピッチャーなら藤川球児、野手なら鳥谷。そういう選手に対して、引退してくれ、というのはちょっとあまりにも冷たいんじゃないかなとは思います」

 確かに、近年の成績は年俸4億円に見合わないかもしれない。だが、それでも、もっと違う方法があるのではないかと、現在も阪神戦の解説を務めることが多い野口氏は指摘する。

「いつかは辞めなければいけない」も…「自分で(引退を)決めていい選手」

「絶対に規定を超えるだけの年俸ダウンにはなります。それは間違いない。今年の成績を見たら仕方がありません。それでも、しっかりとした対応を取っていれば、ここまでずっとタイガースでやってきて、このままタイガースで辞めたいと鳥谷が思うようになってくれるかもしれない。そこの対応の仕方を今回間違っていないかな、という気はしますね。

 本人は、体の状態も万全だし、まだまだ自分はやれますから、と常日頃からずっと一貫して言ってきています。試合出場が少なく、(シーズンの)早い時期にもうちょっと機会をもらえていればやれた、というのが本人の中には恐らくあります。そういう機会がほぼなくて、この時期にポツンポツンと出ても、という感じだとも思います。自分でもっともっとやれると思っているのは間違いない。ただ、そこ(出場機会)は監督の方針があるからしょうがない部分もあります。プレーヤーとしては、しっかり練習して(出番に)備えておくしかないのですが……」

 いずれも球団史上1位の通算2151試合出場、2082安打を誇る名選手。だからこそ、どのような形で区切りをつけるかは難しい。ただ、野口氏は鳥谷への敬意を込めて、自分で引き際を決めていい選手だと言い切る。

「引き際が難しいのは間違いありません。鳥谷本人としては『絶対にできる。絶対にどこかでやってやる』と言って、どこか他球団が獲った後に成績が今年より酷かったときに『ほら見たことか』となってしまいますし。ただ、自分の中で確固たる自信がなければ、まだやれるとも言わないでしょう。それを言ったということは、あれだけの選手なのですから、そこそこの成績は残すと思います。

 もちろん、いつかは絶対に(現役を)辞めなければいけません。あとは自分でどうやって線が引けるか。阪神でヒットを2000本打って、優勝もした。自分で(引退を)決めていい選手だと思います。給料の上下はあっても、球団が『契約はします。辞めるときは言ってください』と。そうであっておかしくない選手だったと思います。それを功労者と呼ぶのですから」

 偉大な選手だからこそ、その引き際にも敬意を払ってほしいと球団OBは願っている。(Full-Count編集部)

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