「怒りの長崎」取材で実感 ドキュメンタリー写真家 大石芳野さん講演 

「長崎の痕を撮り続けて」と題し講演する大石さん=長崎新聞文化ホール・アストピア

 長崎の被爆者らを撮影した写真展を長崎新聞文化ホール・アストピア(長崎市茂里町)で開催中のドキュメンタリー写真家、大石芳野さん(東京)の講演会が7日、同会場であった。年老いた被爆者たちを捉えた写真の前で、大石さんは「子どもたちに、(被爆者)一人一人がこんなに苦しんでお年寄りになったことを実感してほしい」と述べた。

 同展は、被爆者ら約130人の肖像を中心にモノクローム221点を収載し、3月出版された写真集「長崎の痕(きずあと)」(藤原書店)から71点を展示。長崎新聞創刊130周年記念展で17日まで。無料。
 講演は「長崎の痕を撮り続けて」と題し、約90人が聞き入った。大石さんは1997年から長崎で取材。当時を「『怒りの広島、祈りの長崎』と聞いていたが、被爆者に話を聞くうちに『怒りの長崎』だとつくづく感じた」と回想した。一方で「広島は被爆遺構がたくさん残っているが、長崎は少ない。複雑な気持ち」とも語った。
 会場では、被爆者らと協力して同写真集を県内の学校に贈るための寄付を募っている。「子どもたちは(被爆者が)『私たちくらいのときに被爆したんだ』と思ってくれるはず。次の世代にバトンタッチしていくことが大事」と期待を込めた。
 会場から質疑や発言があり、被写体となった被爆者の一人、竹下芙美さん(77)は「被爆者はいつ死ぬか、いつがんになるかと恐怖を抱いて生活している。3発目(の原爆投下)を何としても阻止して、世界から核兵器をなくしたい」と話した。

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