プラドやハイラックス、オフロードもイケるSUVに合わせたい土系ホイール「Tグラビック2」|WORK【Vol.4】

本物の“過酷な現場”からのフィードバックにこそ価値アリ

クルマ好きにとってのホイールというのは、趣味性の強いアイテムとして知られるところですが、ワイルドなタフ系ホイールというのは、まさにそんなイメージの賜物かも。アウトドア用品とよく似た印象かもしれません。マイナス30度の環境下でゴアテックスを着る人はほとんどいないでしょうが、誰もがそのスペックに憧れて街着として使用している、まさにそんな状況に近いかも。

クルマにとっての過酷な状況というとサーキットなどのレースシーンが思い浮かびますが、今回紹介したいホイールは、さらに過酷なレースフィールドからの完全なるフィードバックモデルです。

ワーク T-GRAVIC II

BAJA1000マイルレース。北米大陸最大と言われる2輪、4輪が混走するこのレースは走行距離1600km以上(1000マイル)の大自然の中で行われるデザートレースで、ダカール・ラリーのような移動区間〜SSといった競技構成ではなく、スタートからゴールまで、昼夜を通し休息時間なく走り切りタイムを競う…まさにサバイバルレース。世界一過酷と称されるのはそんな背景があるからです。

ワーク T-GRAVIC II
ワーク T-GRAVIC II

その舞台に挑み続けているBAJAでもっとも有名な日本人、塙郁夫氏。その塙氏からワークにホイール提供のオファーがありました。その時は元々あったホイールにビードロック(注:ビードがホイールリムから脱落することを防止するリング状のパーツ)だけつけて供給したのですが、それでは満足できず、完全オリジナルで設計し生み出したのが、Tグラビックの前身となる競技用ホイールだったのです。

世界一過酷なレースを走り抜けた競技用ホイールのDNA

ワーク T-GRAVIC II
ワーク T-GRAVIC II

開発に携わったワークの開発部/開発課の梅内さんによると…

「市販品となるTグラビックは、元々BAJA競技用のホイールとして設計したホイールが原点です。その元となるホイールは完全競技専用の砂漠を走るホイールです。それまでにも、同じようなホイールを作ってはいたのですが、ドライバーにとってはまだ物足りないホイールだったんですね。なので完全に新設計しました。砂地に入るということだったので、開口面積は大きい方がいい、でも強度は必要、という点から単純に10本のスポークではなくて、間にリングを入れて、さらに外に細かいリブを立てるようにしたデザインなのです」。

デスクの上に置かれた、Tグラビック誕生の前身となったデザートシーンの競技用ホイール。市販品とは確かに違いますが、そのDNAは確かに同じ気がします。

「強度だけとか、砂の侵入を妨げるだけなら普通のディッシュとかでもよかったんですが、そうするとホイール内部から熱を排出できなくなる。キャリパー等に不具合を生じさせてしまうんですね。だから、このデザインを採用しています。ドライバーが飛んだり跳ねたりさせても壊れないホイールを目指しているので相当な強度や厚みも必要です。競技用なので最低重量も決まっていますが、それをクリアした中でも最軽量と言われていましたね」。

ワーク T-GRAVIC II

競技用からフィードバックされた市販品のTグラビックも、実際にアジアクロスカントリーラリーに使用し無傷で生還したとのこと。市販品が実際に競技に使って問題ないレベルというのもスゴイ話です。他社では割れてしまったホイールもたくさんあったとか。

すべてのデザインには機能的な理由がある

「Tグラビックは、機能から開発が始まったホイールですね。そこにまつわる最終形態としてこの形に行き着いています。ビードロックも、ビスが出っ張っているのにもちゃんと理由があるわけです。それは砂が入らないようにするためなのですが。砂にホイールが埋まったとき、ビスがビードロックの中に入っていたら回せるのか? そういったドライバー目線で、困ったときのために作られたデザインであり機能なんです」。

そうした過酷な現場を通して、Tグラビックは武骨、質実剛健さをポイントに生み出されました。レース用ホイールを市販化することを念頭に置いたデザインは外周のリブを細くしたりと少しずつ改良、外周のリングにアールをつけるなど、ストリートにもオフロードにも似合うホイールに仕立てられています。ちなみに最新モデルのTグラビック2がデビューしましたが、Tグラビックも根強い人気があり、指名買いも多いようです。

ワーク T-GRAVIC II

そして今回紹介する“Tグラビック2”はTグラビックが正常進化した最新モデル。見せ方という点では、Tグラビックよりもさらに洗練された機能美を感じます。Tグラビックの登場から、約2年を経て今回の“2”へ。18インチが標準で装着されているのに、敢えてオーナーたちがインチダウンしてでも16インチのホイールを入れるという理由は、デリカファンもオフロードが主戦場であると認識している人が多いということに他ならないからでしょう。

土系のイメージを協調しつつオンロードにも似合うようにデザイン

ワーク T-GRAVIC II
ワーク T-GRAVIC II

開発部でデザインを担当した和田さんにもそのあたりのこだわりを聞いてみました。

「Tグラビック2のデザイン上のこだわりとしては、実はスポークの真ん中を凹ましています。でも単純に凹ませるのではなく、中心に向かってより深く凹ませています。理由はより立体に見えるからですね。なぜスポーク部を穴にしなかったのかは重厚さを考慮しているため。Tグラビック1からの進化としては、スポークの本数を減らすことでより軽やかなスポーツ性を強調しました」

「一番のトピックとして、ビードロック風の外側のリング風のラウンドさせている部分ですね。実はこのフランジ部分が平らではないのもポイントです。表情がより豊かになっていると思います。Tグラビックよりも無駄な部分をさらに削ぎ落として部分的なシェイプをしているところは数多くありますね」。

ワーク T-GRAVIC II

強度を保った中で、センターパートをできるだけコンパクトに小さくして、細部をシェイプアップ。アウターリムフランジ部に石が噛まないように段差を入れるなど、細かいディテールを大切にしたのが新型。まさに細かいところを理詰めで作り込んでいった結果が“Tグラビック2”という進化版の魅力です。

オーバースペックな性能も魅力のTグラビック2

ワーク T-GRAVIC II
ワーク T-GRAVIC II

今後も魅力的なオフ系の車両が登場してきたら、さらに正常進化したTグラビックが登場してくるかもしれません。車種専用ホイールだけにそのあたりの“正常進化バージョン”の登場もぜひ期待したいところです。

ランドクルーザープラドやハイラックス、デリカD:5やジムニーなど、オンロードシーンはもちろんオフロードシーンでも、Tグラビック2とのマッチングは抜群でしょう。

闘うレースの現場から生み出された市販モデルのTグラビック2。そのオーバースペックなまでの姿に身を包めば、過酷なまでの砂漠の地を走破するロマンを市販車でも味わえると思います。

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