燃料電池ル・マンカーが公式セッションデビュー。移動式補給機での水素充填も無事完了

 将来のレースシーンに水素を動力源とする燃料電池車(FCV)を送り込むことを目指すミッションH24は9月23日、直近の週末にスパ・フランコルシャンで行われたミシュラン・ル・マン・カップの公式セッションにおいて、FCVレーシングプロトタイプカー『グリーンGT LMPH2G』が初めてタイムを刻んだと発表した。

 ミッションH24は、ル・マン24時間レースやWEC世界耐久選手権の統括団体であるACOフランス西部自動車クラブと、水素燃料電池車ベンチャーのグリーンGTの共同プロジェクトだ。

 同プロジェクトでは内燃機関に変わる新時代のパワートレインとして、燃料電池がその座につくとの考えからFCVレースカーを研究。将来のル・マンに燃料電池車を送り込むことを視野に入れ、日々開発を進めている。

 そんなミッションH24は事前のアナウンスどおり、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ第5戦スパ・フランコルシャン4時間レースのサポートレースであるミシュラン・ル・マン・カップに、燃料電池プロトタイプカーのLMPH2Gを持ち込んだ。

 LMPH2Gはちょうど1年前のスパや、2019年になってからはル・マンのブガッティ・サーキット、サルト・サーキットなどでデモランを行ってきたが、公式セッション中に他カテゴリーの車両とともに走行するのは今回が初めてとなる。オリビエ・ロンバードとノルマン・ナトがドライバーを務めたFCVルマンカーは午前と午後、各1回のフリープラクティスに参加し計20周を走破した。

補助灯が加えられたLMPH2Gは、オリビエ・ロンバードとノルマン・ナトがステアリングを握り20周をラップした。

 このなかで8ラップを周った午前は2分33秒445というタイムをマーク。すると、午後には12ラップ中に自己タイムを更新し2分33秒149としている。なお、このタイムは同じ週末にスパを走ったFIA-GT3カーのベストタイムと比較してわずかに数秒の遅れだ。

 また、ミッションH24は今回、公式セッションデビューと同時に移動式水素補給を使った燃料チャージの試験を実施した。圧縮した水素をボンベに充填する作業は計4回行われ、いずれのピットストップでも作業は問題なく完了したという。

 水素を動力源とするレースカーの開発において次なる一歩を踏み出したACOは、公式セッションデビューという“ミッション”の完了後、次のような声明を発表した。

「競争の舞台へ進出にあたっての目標は単純であり、同時に複雑でもあった」

「チームがレース環境に没頭すること、そのために全員の役割を最終決定すること、そしてもちろんクルマの全体的なセットアップを学ぶこと。さらにエネルギー管理と、トタルチームとの燃料補給手順に関わる技術的作業など、するべきこと多岐にわたった」

 ACOは2024年までに、ル・マン24時間レースに水素燃料クラスを導入する計画の概要を示しており、先週末の実施されたLMPH2Gの走行はその目標に向けた『重要かつ基本的なステップ』であったと言えるだろう。

今回の走行にあわせて、サーキットに移動式補給機が登場。LMPH2Gの動力源となる水素が充填された。
ミッションH24のスタッフ一同とグリーンGT LMPH2G

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