【美女の乗るクルマ】-scene:19- スズキ ハスラー × 林紗久羅

スズキ ハスラー × 林紗久羅

会社で僕の教育係の彼女はどうしてこんなに人の心をかき乱すのか

今日の紗久羅さんは、いつもと違う紗久羅さんだ。僕の愛車・ハスラーの助手席に座っている彼女の表情と口調に、正直、僕は戸惑っていた。しかし、僕が疑問の表情を向けると、警戒心や猜疑心を抱くことを許さないような雰囲気を出してくる。僕が心を許したら怒られるのか、それとも、僕に何かを求めているのだろうか。そもそもこのドライブは、デートと言っていいものなのか、いったいどうして僕に声をかけてくれたのか。次から次へと頭の中を疑問がよぎってゆく。どうしてこの人は、こんなにも僕の心をかき乱すのか───。

(この物語はフィクションです。)

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スズキ ハスラー × 林紗久羅

紗久羅さんは会社内で僕の教育係だ。エレベーターに乗る時、目上の人より自分が先にエレベーターへ入り、「開」ボタンを押して待つということも、この人から教わった。社会人1年目の、仕事や人間関係をうまくこなすコツはもちろん、どうしたら失敗なのかさえよくわかっていなかった僕に対して、言葉はキツめに、だがテキパキと、社会人のイロハを叩き込んでくれた。

当時入社3年目の紗久羅さんは、顔立ちが整っていて、仕事も抜群に成績がよく、社内はもちろん、社外の取引先などからも人気のある女性だった。いつも彼女の指導は厳しかったが、わかりやすく、こうやってなんでもテキパキと効率よくこなせる人が仕事のできる人なのだろうと、新人の僕は納得させられたものだ。男性社員の間でも評判の美人だったが、右手の薬指にはいつも細身のリングが輝いていて、社内の誰もが食事に誘うことを躊躇していた。

スズキ ハスラー × 林紗久羅
スズキ ハスラー × 林紗久羅

普段は謹厳な先輩で、私生活がミステリアス。そんな人から、「クルマ持ってるんでしょ? 今度の週末クルマ出してよ。山のほう行きたいんだ」と言われ、断る理由もないし、断るはずがなかった。そして、本当に出かけている今現在、僕はこのハスラーのおかげで、かろうじて自分でいられる。いつものハスラー、そしていつもの運転風景と運転感覚。それでも、助手席を見ると、そこには明らかに異世界が広がっている。やっぱり彼女がそこに座っていることはミラクルだった。

一方、紗久羅さん本人は、見るからに平常心だし、動揺も不安も感じられない。むしろ、いつものキャリアウーマンな雰囲気とはまったく違って、今日の話し方は、なんというか、まるで近所のおばちゃんだ。僕が子どもの頃はよく近所にいた、気さく過ぎるくらい気さくで、まるで10年来の友人だったかのようにとってもフランクに話してくるおばちゃん。いい言い方をすれば、親しみやすい雰囲気なのだ。

そういえば、このハスラーも親しみやすいデザインで売れたクルマだ。丸目のヘッドライトに、四角い箱型だが角が取れた、見た目にも優しいボディライン。ボディカラーも2トーンの設定などがあって、「おしゃれに敏感な人が買っている」とディーラーマンは言っていたっけ。

スズキ ハスラー × 林紗久羅

今日の紗久羅さんはいつも“家に帰ってから想像していた”彼女だった

スズキ ハスラー × 林紗久羅

僕のハスラーは、昨年発売された特別仕様車『ワンダラー』で、ルーフやバンパーなどにブラウン色が採用されている。

紗久羅:「この茶色い屋根、おしゃれだねー」

僕 :「紗久羅さんもそう思います?」

紗久羅:「ねえ、今日は敬語やめない? 鈴木クンってさ、たしか大学二浪してるんだよね。てことは、私と同い年だよ。だからさ、今日は敬語やめてタメ語で話そうよ」

僕 :「そ、そうっすか。わかりました」

紗久羅:「ほらまた敬語! まったくもう!」

僕が敬語をやめないせいで、車内にはどこか他人行儀な雰囲気が漂っているものの、徐々にその距離は近づいているような気もする。そして、助手席の窓からは、低く連なる山々が見えてきた。いよいよ紗久羅さんが行きたいと言っていた「山のほう」へ入ったのだ。その稜線を眺める彼女の髪からは、柑橘系のとてもいい香りが漂っていた。

スズキ ハスラー × 林紗久羅

大学を卒業後、やっとの思いで就職したのは小さな保険会社だった。社員はそれほど多くはないが、大手保険会社の子会社で、研修などはその親会社の社員に混じって体験させられた。研修中に仲良くなった連中に話を聞くと、親会社では相当社員教育に熱心で、我々“さとり世代”の心根を矯正しようという狙いさえあるらしいが、ウチの会社はそのあたりが緩く、上下関係にもそれほどうるさくない。

紗久羅:「ねえ鈴木クン、このウッドのパネルも特別仕様車だから?」

僕 :「そうです。このステアリングのオレンジ色のステッチも特別仕様車だからです」

紗久羅:「へー。特別仕様車にコストかけ過ぎちゃって、このスズキって会社は経営大丈夫なのかな。……あ、もしかして、鈴木クンって苗字が“鈴木”だからスズキのクルマ買ったの? ふふふっ~!」

否定しようと思ったが、紗久羅さんが楽しそうだからそういうことにしとこうと思った。

スズキ ハスラー × 林紗久羅

しかしこんなにナチュラルに笑うなんて、会社の同僚たちが知ったらびっくりするだろう。どこかやけっぱちのようにも感じられたが、日頃から仕事でストレスもたまっているのだろうから、今日は僕やハスラーがピエロになって、楽しく時間を過ごしてもらえればそれで十分だ。

しかし、このいつもの違う紗久羅さんは、僕がいつも“家に帰ってから想像していた”紗久羅さんだった。明るくて気さくで、ずっと僕にやさしい微笑みを見せてくれる。決して普段の仕事場の紗久羅さんのことが嫌いな訳ではないが、やっぱり誰だってこうやって表情が緩んでいるほうが好印象に決まっている。

スズキ ハスラー × 林紗久羅

こんな風に子どものように喜ぶ彼女を初めて見た

スズキ ハスラー × 林紗久羅

ある程度山を登ったところで、ハスラーを止めて休憩する。紗久羅さんは無邪気に、クルマの外に出てはしゃいでいる。ハスラーと一緒に自撮りなんてしているが、これも会社での彼女とはまったく違う表情だ。彼女の髪が日差しを浴びて、艶っぽく光った。思わず神々しいものを見たかのような気になり、目を背けそうになる。

僕 :「今日はどうして僕を誘ってくれたんですか?」

ハスラーのラゲッジに座って佇んでいる紗久羅さんに、考えるよりまず言葉が口に出て、思わず聞いてしまった。

紗久羅:「うーん、どうしてかな。どうしてだろう?」

彼女は本気で悩んでいるようだ。

紗久羅:「きっとさ、鈴木クンが優しいからだよ」

僕 :「優しい?」

紗久羅:「そうだよ。仕事してても、いつだって相手のこと考えてるでしょ。相手の生活が第一で、無理な保険は進めない。セールスマンしては失格だけど、人間としては優しくて、そういうのっていいなって思う」

褒められているのか、けなされているのかよくわからない言われようだが、たしかに僕は仕事をしていて、そういう節があるかもしれない。

僕 :「いいなと思われて嬉しいです。だけど、そういうやり方じゃ、これからも成績上がらないっすよね」

紗久羅:「そう? 私は全然そんなことないと思うけどな!」

僕 :「え?」

スズキ ハスラー × 林紗久羅

紗久羅:「私はね、こう思うの。結局、人が保険に入るかどうかって、保険商品の条件うんぬんより、担当との人間関係のほうが重要なんじゃないかな。お金に余裕がある人は契約してくれるし、余裕がない人はどんな有利な条件でもイエスとは言ってくれないでしょ。だから私は、まずお客さんと深い信頼関係を築こうと思って。最近はそう努めてる」

僕 :「はじめて聞きましたよ、紗久羅さんのそんな考え方。もっとビジネスライクなのかと思ってました」

紗久羅:「保険の外交員なんて、考え方は千差万別だからね。あ、けど、あなたは大丈夫よ。そのハスラーみたいなつぶらな瞳で『保険に入って欲しいですー(ク〜ン)』って言われたら、たいていの女性は母性をくすぐられてしまうから」

僕 :「ヒドい! やっぱり無能だってことじゃないすか(笑)」

僕が追うと、紗久羅さんはキャッキャ言いながら逃げ回る。こんな風に子どものように喜ぶ彼女を初めて見た。なんだか僕にだけ見せる表情の様で、確かな高揚感がそこにはあった。ある程度走り回った後は、一緒にドリンクを飲んで一息つく。

僕の目がハスラーの丸目ライトのようだと紗久羅さんは言うが、僕は紗久羅さんこそハスラーだと思う。その容姿で人を虜にしてしまうところは、SUVテイストで愛嬌たっぷりのデザインを持つハスラーと同じだ。

そして、頭が良くて仕事を無難にこなし、社内でもトップクラスの成績を残してしまうところは、ハイトワゴン軽でもトップクラスの究極の使い勝手を持つ、クルマとして機能性で優れるハスラーそのものだろう。

スズキ ハスラー × 林紗久羅

喉が渇いていた僕はドリンクを一気に飲み干したが、紗久羅さんはすこしずつ喉を潤しているようだ。彼女の口からこぼれる水滴が、喉へ伝っていく様子も美しい。

今さら気づいたのだが、彼女の右手には、いつもはめていたはずの薬指のリングがはめられてなかった。そして、紗久羅さんの顔をよく見ると、口元だけでなく、頬にも水滴がしたたっていた。

それはまるで、瞳から何かこぼれ落ちた跡のように見えた───。

[Text:安藤 修也/Photo:小林 岳夫/Model:林 紗久羅]

Bonus track

林 紗久羅(Sakura Hayashi)

スズキ ハスラー × 林紗久羅

1989年12月10日生まれ(29歳) 血液型:A型

出身地:東京都

2018/2019 D'STATION フレッシュエンジェルス

2018-2019 raffinee Lady

★2018 日本レースクイーン大賞 グランプリ 受賞

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