消費税率10%下で輝きを放つ有望銘柄8選

10月1日から、いよいよ消費税が8%から10%に引き上げられます。米中対立に伴う悪影響の顕在化などから世界景気の先行き不透明感が意識される中、過去の増税後の苦い経験の記憶も重なって、日本経済への下押しを懸念する声も多く聞かれています。

前回2014年4月の増税時(5%→8%)には、4~6月期の実質国内総生産(GDP)が前期比年率で7%超えの大幅マイナス成長を記録。株式市場のもたつきにもつながった、とみられます。

ただ、過去2回の増税時には家計負担額(2018年日本銀行試算)がいずれも8兆円規模と推計されるのに対し、今回は2兆円強にとどまるとみられます。加えて、負担軽減のための増税対策が準備されています。

これらの消費増税に関連した各種の動きは、日本株市場にどのような影響を与えるのでしょうか。そして、これらの動きが追い風になりそうな銘柄には、どのような企業がありそうなのでしょうか。できる限り具体的に考えてみたいと思います。


日本株市場全体への影響は?

政府は幼児教育の無償化に消費税の増税分を充てるほか、2019年度予算で2兆3,000億円規模の対策を予算化。さらに、安倍晋三首相は「リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行していく」と述べており、国土強靭化計画の拡充などへの期待も小さくありません。

米中貿易問題の不透明感に伴う消費マインドの冷え込みなどが背景となり、駆け込み消費が盛り上がらなかったことも、今後の反動的な需要減をもたらしづらい一因となるかもしれません。

参考までに、過去の増税時の株価動向を振り返ってみると、前回2014年は年初から税率引き上げ時の4月までジリ貧の展開をたどりましたが、その後は好調な企業決算や米国株の堅調を支えに、緩やかな戻り相場が継続しました。1997年の増税時は、直後に株高傾向を示しつつも、年後半から翌年にかけてはアジア通貨危機の影響などから厳しい下げに見舞われています。

いずれも増税にまつわる直接的な因果関係はよくわからないということかもしれませんが、先月後半からの米中融和の流れや、景気の先行きに対する過度な懸念の後退に伴う世界的な株価修正高の局面にあって、十分に減速懸念を織り込んだ日本株は増税ショックを無難に乗り切る可能性が高いと考えたいところです。

増税対策の恩恵がありそうな有望銘柄

日本経済や株式市場の波乱懸念が小さいとすれば、さまざまな増税対策などによって恩恵を受ける可能性のある企業群への注目が高まることが期待されます。

消費増税の本来の目的である高齢化・少子化対策の充実は、医療・介護・子育てなどに関わる企業にとって追い風となりえますし、初の軽減税率の導入、キャッシュレス決済の拡充策は関連産業に大きなメリットとなる可能性がありそうです。

子会社のライクキッズネクスト(証券コード:6065)で保育事業を手掛けるライク(2462)は、介護サービスの拡充に注力しています。本業の人材サービスでも「働き方改革」が追い風となるなど、国策に沿った主力3事業の成長期待が高まっています。

今期と来期の2ケタ営業増益見通しが年初からの株高トレンドを支えているとみられますし、障害者や外国人就労支援の推進を含め、社会的ニーズに向き合う姿勢も注目といえます。

軽減税率の導入やキャッシュレス決済へのポイント還元は、景気の下支え効果だけでなく、レジや会計ソフトなどの需要刺激につながっています。中小企業などの導入遅れも指摘されていますが、キャッシュレス決済の普及拡大を含めて、増税後もシステム更新などの需要が高水準を維持するとの見方が出ています。

iOS端末でのクラウド型データ管理POSレジシステム「スマレジ」を手掛けるスマレジ(4431)は、軽減税率対応に向けたPOSレジの入替・更新需要をうまく取り込み、高い業績成長を実現しています。

対策補助金期限の9月末以降に、ある程度の反動減は予想されますが、今年3月の上場で信頼性が高まったこともあり、大型案件の引き合いが増加。従来POSのシステム更新期に合わせた入れ替え需要なども見込めることで、中期的な成長余地は大きい企業と思われます。

キャッシュレスや軽減税率関連で有望なのは?

今年はスマートフォンでの各種QRコード決済が大きな話題を呼んだように、これまで現金信仰が強かった日本でも「キャッシュレス化」の波が鮮明となりつつあります。今回の消費増税対策として、中小店舗での購入に際してキャッシュレス決済の5%ポイント還元を盛り込んだことも含め、政府主導で普及推進に注力しています。

2018年の経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」においては、2020年の東京オリンピックと2025年の大阪万博に向けて、2017年時点で21%だったキャッシュレス決済比率を、早期に米国並みの40%に向上させ、将来的には世界最高水準の80%を目指していく、としています。従来主力であったキャッシュカード、デビッドカード、交通系プリペイドカード(Suicaなど)も含め、普及に弾みのつく可能性は高いと思われます。

eコマースなどでのクレジットカード決済代行に強みを持つGMOペイメントゲートウェイ(3769)や、クレジットカード基幹システム首位のTIS(3626)は、好調な業績や周辺分野への展開力が注目されます。

軽減税率の対象となるのは新聞と、外食を除く飲食料品となりますが、食料品の持ち帰り需要を喚起する可能性も指摘されています。

食品トレー最大手のエフピコ(7947)は、このところの中食市場や宅配分野の拡大も重なり、着実な成長が期待できそうです。廃プラ対策として取り組むリサイクル事業でも業界を先導する役割を担っており、時代の流れに即した事業経営が行われている点も目を引きます。

そのほかにも、タピオカブームで一段と知名度を高めた神戸物産(3038)は、安売り食品の「業務スーパー」を展開しますが、節約志向の広がりがさらなる追い風となりそうです。「出前館」を運営する夢の街創造委員会(2484)は、宅配事業の先行企業としてメリット享受が期待されます。

<文:投資調査部 林卓郎>

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