オーストラリア・スーパーカー第13戦で42.7Gの大クラッシュ発生。レースはレッドブル連勝

 オーストラリア大陸で長きにわたる歴史を持つ伝統のツーリングカー・シリーズ、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの2019年第13戦ゴールドコースト600が10月25~27日に開催され、土曜のレース1をジェイミー・ウインカップ/クレイグ・ラウンズ組が、続く日曜のレース2をシェーン-ヴァン・ギズバーゲン/ガース・タンダー組が制し、レッドブル・レーシング・オーストラリアが週末を完全制覇。王者スコット・マクローリンは日曜予選で42.7Gものインパクトを伴う大クラッシュを起こし、レース欠場を余儀なくされている。

 10月第1週に開催された第12戦バサースト1000を経て、古豪ギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)の2019年限りでの撤退発表という衝撃が残るなか始まったサーファーズ・パラダイスでのレースウイーク。

 そのGRMが保有していたシリーズ参戦枠である“レーシング・エンタイトルメント・コントラクト(REC)”をマット・ストーン・レーシング(MSR)が引き継ぐことも発表され、同じく2020年はニッサンからフォードへのスイッチに伴い、4台体制から2台へと縮小するケリー・レーシングのRECもチーム18のアーウィンレーシングが購入するなど、2020年シーズンに向けたストーブリーグも大きく動きをみせた。

 一方、シーズン終盤戦に設定されるコドライバー登録の“エンデューロ・カップ”開幕戦でもあった前戦バサースト1000で、マウントパノラマでの自身初優勝を飾ったディフェンディングチャンピオンのマクローリン/アレクサンダー・プレマ組とDJRチーム・ペンスキー陣営だが、そのレース内容を巡ってチームメイトであるファビアン・クルサード/トニー・ダルベルト組に「無線を通じて、規定で禁止されているチームオーダーを発令した」との疑惑で審議が続けられていた。

 このゴールドコースト600を前にVASCシリーズから裁定判断が下され、12号車クルサード組の最終結果は6位から最下位の21位に降格。また、DJRチーム・ペンスキーには25万豪州ドル(約1865万円)の罰金が科され、そのうちの10万豪州ドル(約750万円)は2021年末までの支払い猶予期間が設けられた。さらに、チームチャンピオンシップでも420ポイントが剥奪され、DJR陣営としてはバサーストでの獲得ポイントが無効という結果となった。

 こうして始まったクイーンズランド州随一のリゾート地での1戦は、金曜プラクティスから波乱の連続に。セッションごとにトップタイムを奪い合ったのはいつもどおりのフォード・マスタング勢で、ティックフォード陣営のキャメロン・ウォーターズが最初の公式練習でトップを奪うと、続く土曜予選ではチャズ・モスタートが暫定ポールを獲得。

 しかしモスタートは続くトップ10シュートアウトで大クラッシュし、マシン修復不可となり早くも週末の戦線から離脱。代わって王者マクローリンが土曜ポールポジションを手にしたものの、フォード陣営はこの時点で6台中1台を失う厳しい展開となった。

 迎えた102周の土曜レース1は、全車Bドライバー登録の選手がスタートを担当し、フロントロウから発進した888号車ウインカップのチームメイト、クレイグ・ラウンズが1~3コーナーシケインでポールシッターの17号車、プレマをパスして首位に浮上。このリードをレース全周にわたって守り抜き盤石の勝利。ふたりにとっては“バサースト3連覇”の偉業を達成した2008年以来のペアウインとなり、2位にもルーティンピットで王者DJR組を出し抜いたSVG/タンダー組が続き、トリプルエイト・レースエンジニアリングがワン・ツー・フィニッシュを果たしている。

 するとフォード勢の受難は日曜も続き、レース2に向けた予選後半で最後のフライングラップに向かったマクローリンは、2019年シーズンを席巻した勢いを取り戻そうと、この市街地コースをさらに攻め込むと、ウォールに囲まれた1-2-3コーナーシケインでリミットを越え、17号車マスタングは大きくバウンド。

 イン側のウォールにヒットしたのち、続く2コーナーのアウト側に弾かれたマシンは右リヤタイヤを吹き飛ばしながら横転。さらにイン側に弾かれ、シェルカラーのマスタングは横を向いたままストップした。

 幸い、自らシートベルトを外して車外へ脱出したマクローリンだが、すぐ脇を通過していたポール争いのライバル、SVGもマシンを止めて駆け寄り無事を確認。しかし、このクラッシュによるインパクトは42.7Gを記録しており、マクローリンはすぐさまトラックサイドの医療センターで脳震盪テストを受けた。

「スコットは医療チームによって徹底的に検査され、SCAT-5脳震盪テストが完了しました」と、すぐさま声明を出したVASC医療デリゲートのカール・リー医師。

「その後、ゴールドコースト大学病院でMRIを含むさらなる検査を受けており、彼の健康状態は完全にクリアとされました」と、レース後にも容体が続けてアナウンスされ、マクローリン自身もSNSを通じて「マシンから自力で降りられたのは、VASC安全規定のおかげだ。僕を助けてくれたマーシャルやカール医師、そしてマシンを止めて身を案じてくれたシェーン(-ヴァン・ギズバーゲン)にもありがとうを言いたい」と発信し、ファンを安心させるコメントを残した。

 この事故により17号車も日曜レースを回避する形となり、午後のレース2はポールの97号車SVG/タンダー組と、実質3番グリッドだった888号車ウインカップ/ラウンズ組が優位な展開で連日のワン・ツーを達成。前日にはフレッシュタイヤを履きながらウインカップ組に勝利を譲ったSVGが、タンダーとのタッグで初勝利を飾っている。

 一方、すでに大学病院を出て自宅へと戻ったマクローリンだが、次戦11月8~10日開催の第14戦サンダウン500を前にふたたび検査が予定されており、その結果次第でレース出走可否の判断が下される。

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