最終戦でエンジン3基にトラブル発生。MOTUL GT-R&ニッサン陣営にとって悔しい最終戦&シーズンに

 ランキング3位から逆転チャンピオンを狙ったMOTUL AUTECH GT-Rだったが、予選ではわずかコンマ2秒差でポールを逃して3番手となり、ここでタイトル獲得の可能性が消えた。翌日の決勝レースではスタート直後に順位を上げたものの、その後はペースが上がらず後続に抜かれ、結局8位フィニッシュ。シーズンランキング3位で終えることになり、レース後のニッサン陣営に笑顔はなかった。この最終戦では3基のエンジンにトラブルが起きるなど、苦しいシーズンを象徴するような内容になってしまった。

「今回はポールを獲らなければいけなく、予選重視のタイヤで挑んでいたのでレースの最後はタイヤがちょっと苦しくなりました。予想以上に保たなかったですね。フロントが特にキツかった。今日の路温が予想よりも上がりすぎたというのがあります。路温が低かったら、もう少し良かったと思います」と、決勝レースを振り返る後半スティントを担当したMOTUL AUTECH GT-Rの松田次生。

 今回は予選でのポール獲得を狙ったため、タイヤは耐久性よりも一発のパフォーマンスを重視した選択になった。次生は予選Q1でトップタイムを奪ったものの、予選Q2ではロニー・クインタレッリが1コーナーのブレーキングでタイヤをロックさせてしまうなどのタイムロスがあり3番手。しかし、2番手を獲得したWAKO’S 4CR LC500の山下健太もミスをしながらのタイムだったため、クインタレッリが万全のアタックができたとしても、パッケージとして今回はポールを獲得したau TOM’S LC500関口雄飛をはじめ、レクサスLC500+ブリヂストン勢に分があったと推測される。

 決勝で前半スティントを担当したクインタレッリも、悔しい展開となった最終戦、そして今年のシーズンを振り返る。

「予想していた部分もあったけど、レースはその予想以上にキツかったですね。今シーズンは勝てなくて、久しぶりに勝利なしのシーズンになって終わってしまいました。それが一番悔しいです。富士などでは速い時もあったけど、トータルの面でライバルに足りない部分があった。今はコンマ何秒の差で、周りのレベルがすごく高いですよね。よくランキング3位になれたなと思うシーズンでした。4回表彰台に上がってランキング3位になれたのは今シーズン、唯一よかったことですね」と、クインタレッリ。

 次生も、ランキング3位とは言え、その表情は明るくない。

「優勝できなかったシーズンは2009年以来になるのかな。ポールは3回、表彰台は4回獲れて、ランキングは去年の8位から今年は3位に上がったという意味ではよかったんですけど、ランキング3位なら普通ならば喜ばなきゃいけないんですけど、今回はチャンピオンを獲りに来て、それが叶わなかったのでね……。ちょっと、レクサスが強すぎるので、なんとかクルマ、タイヤ含めて全部見直さないと来年もマズイなと思います。来年、またチームと一緒に頑張っていきたいなと思います」と次生。

 ニッサン陣営としてパフォーマンスとともに気になるのが、最終戦で起きたエンジン関連の3度のトラブルだ。12号車カルソニック IMPUL GT-Rは他の3チームより前倒してシーズン2基目のエンジンを投入していたが、土曜日の予選前にトラブルが発生。新しく乗せ換えたエンジンも決勝レース中にトラブルが起きてしまった。また、前回の第7戦SUGOで優勝を果たした3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rにも決勝前にエンジントラブルが発生し、グリッドに着くことなく今シーズンを終えることになってしまった。

 GT500のGT-Rの開発を務めるニスモの石川裕造氏が振り返る。

■ニッサンGT-R陣営、まさかの1レース3基に起きたエンジントラブル。2020年に向けての巻き返し

「決勝の12号車はエンジントラブルです。原因はまだ分かっていませんけど、新しいエンジンに乗せ換えてすぐに壊れてしまったことから、何かイレギュラーなことがあったのだと思います。3号車もエンジンが壊れたんですけど、こちらは12号車とは種類が違って、予兆はあったので心配しながら見ていたんですけど、乗せ換えないで行こうとしたのが、決勝前で壊れてしまいました」と石川氏。今シーズンは特にエンジン面でライバルに叶わなかった点を挙げる。

「他車さんのことはよくわかっていませんが、エンジンのポテンシャルとしても、ちょっと劣っていると思っています。レースで並んで抜かせるように頑張らないと行けない部分だと思っています。クルマ自体はタイムの面でも頑張っていると思うんですけど、競争ですからね。レクサスさんのところまでは行けなかったなあという印象です」と、今季を振り返る石川氏。

 ニッサンGT-R陣営で気になるのは、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが第7戦で優勝を果たしたものの、MOTUL AUTECH GT-Rがランキング3位以外の3チームがランキングで大きく低迷してしまったことだ。もちろん、ニッサン陣営は4台と参戦台数が少ないこともあるが、それぞれのタイヤメーカーとのマッチングも詰められなかったことも低迷の要因のひとつと考えられる。

「ウチはタイヤを3種類使っていることもあって、セッティングで差がありますよね。ああやって(ブリヂストン陣営の)トヨタさんが並んでいるのを見ると、見直さないといけない部分もあります。ニスモ以外のチームも安定してパフォーマンスを出して走れるクルマにしたい。今、開発しているクルマのテーマでもあります」と2020年に向けて、新車両の開発テーマのひとつを明かす石川氏。

「来年に向けては全部頑張らないといけないですね。まずはエンジンの性能を上げたいですけど、今週末を見ると信頼性の面でも必要です。いつも性能の面と耐久の面の追いかけっこになるので、結局、燃焼圧を上げて攻めてと開発していくと耐久面の問題が出てきます。ちょっと見直さないといけないですね。今年はポールは3回獲れているので、速さが出せた部分があったり、そのレースのなかでタイヤとクルマのマッチングが決まって速く走れたりはありましたけど、GT-R4台が揃って速く走れる状態を作り出したい。それができていないのが課題だと思います。安定性が出せるように開発を見直していきたいと思います」と続ける石川氏。

 ランキング3位と言えども、常勝軍団ニスモとしてシーズン0勝には誰も満足した様子を見せることはない。2020年からのクラス1新車両になる新しいGT-Rでどのようなパフォーマンスを見せることができるのか。最終戦の悔しさから再起を目指すニッサン陣営にとって、すでに2020年の戦いは始まっている。

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