【プレミア12】先発は山口? 岸? 決勝王手の侍J、韓国戦で「理想」の形を作るために…

侍ジャパン・岸孝之【写真:編集部】

16日の韓国戦に勝てば決勝進出、メキシコ戦の投手陣は「完璧だった」

■日本 3-1 メキシコ(プレミア12・13日・東京ドーム)

 野球日本代表「侍ジャパン」は13日に東京ドームで行われた「第2回 WBSC プレミア12」(テレビ朝日系列で放送)スーパーラウンド第3戦のメキシコ戦に3-1で勝利。全勝だったメキシコに初黒星をつけて3勝1敗で並び、決勝進出に“王手”をかけた。16日の韓国戦に勝てば決勝進出が決まるが、侍ジャパンはどのように戦うべきなのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、先発に岸孝之投手(楽天)を推薦した。

 日本は投手陣がしっかりと役割を果たし、メキシコに勝利。先発の今永(DeNA)が6回1安打8奪三振1失点と好投すると、7回は甲斐野(ソフトバンク)、8回は山本(オリックス)、9回は山崎と若き救援陣が無失点リレー。野口氏はこの流れを「理想的だった」と振り返る。

「今永は投げミスがなかったわけではありませんでした。ただ、今までに比べて少なかったですし、高めにいった球に力があって、空振りを取れていました。中途半端に抜けないで、抜けたら抜けたで高めの空振りゾーンまで強い球がいっていたから助かった部分もありました。あとは、チェンジアップを安定して低めに投げられていたのも大きかったですね。試合全体としてみれば、投手陣は盤石だったと言えるでしょう。今永が一発で1点は取られたにしても、勝ちパターンの3人は完璧でした。

 この試合の流れは理想です。先発が頑張って6回を投げて7回、8回、9回と救援陣がつなぐ。理想形で行けたのは、この試合が初めてではないでしょうか。特に、甲斐野、山本という若い2人は凄いですね。山本については、先日の試合で内角がもっと必要だと言わせてもらったのですが、この試合のように落ちる球を中心に投げられるのであれば、無理矢理インコースに行く必要はないのかもしれません。やはり、国際大会では落ちる球は有効だな、と再確認できました。甲斐野、山本、山崎と3人とも落ちる球を持っていて、しかも並の落ちる球じゃない。国際大会で有効になってくるピッチャー陣ですね」

 後ろが安定しているだけに、先発がゲームを作ることができれば、まず崩れることはない。では、決勝進出のかかる大一番の韓国戦では、誰を先発にすべきなのか。スーパーラウンド初戦の11日オーストラリア戦で4回2失点だった山口(巨人)は中4日で登板が可能。さらに、この試合に3番手で投げて2回1安打無失点と好投した岸も先発できる。登板間隔などを考えれば、このどちらかが現実的だ。

「山口がちょっと使いづらい」理由と「岸が行ったほうがいい」理由は…

 野口氏は「岸が行ったほうがいいと思います。今の状態なら、岸のほうがピッチングとして組み立てやすいでしょう」と言う。では、今季投手3冠(最多勝、最高勝率、最多奪三振)に輝き、横浜(現DeNA)時代には野口氏とチームメートでもあった山口の現在のピッチングについてはどう見ているのか。

「先ほどの落ちる球の話で言えば、先発でフォークを投げられる山口はしっかり抑えられるはずなのですが、ディープなカウントに行く前にコントロールミスしてやられてしまっている。追い込むまでの過程での真っ直ぐが甘いところに入ってくる状態です。甘いところでボールになるということではなくて、甘いところのストライクゾーンに入ってきてしまうからやられてしまう。例えば、ストライクゾーンではなくてボールゾーンに来るなら、やり直しがきくのでまだ他に考えようがあります。ただ、それを真ん中に投げてしまうと、本当に真っ直ぐを消すしかなくなってしまう。どんどんやられていってしまうので。逆にボールゾーンにいっていれば、それを見せ球に使えばいい、となりますが……。甘いところに抜けてくるボールは見せ球としては使えない。ただ、山口のピッチングスタイルから考えると、真っ直ぐを消すと非常にしんどい。カーブ、スライダー、フォークばかり投げるわけにはいかないので。割合として真っ直ぐを減らせても、消すことはできない。そういう意味でちょっと使いづらい状態ではあります」

 逆に、岸には安定感がある。コンディション不良で出遅れ、本来期待されていた先発ではなくて中継ぎでの登板をこなしてきた岸だが、1回を3者凡退に抑えた7日のオープニングラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦(台中)を含めて、投球内容は上々だ。オーストラリア戦で2イニングしか投げていないことでコンディション面も良い。山口は韓国戦で登板しなかった場合、決勝に進んだ場合に先発の選択肢に入れることもできる。

「岸は山口と同じ中4日でも、前回は2イニングしか投げていない。チャイニーズ・タイペイ戦とオーストラリア戦の投球を見ても、今ならば岸のほうが安定感はあります。組み立てを考えても、岸のほうが自在なピッチングができると思います。コントロールもいい」

 2日間試合がなく、残り最大で2試合ということを考えれば、ブルペンについては盤石。「みんな揃っていきましょうという感じでしょうね。韓国が相手だとシュートなどが有効になる可能性もあるので、大竹あたりも出番が出てくるのではないでしょうか。その次の試合で中南米系のチームが相手になったら、また落ちる球も有効になってくる」。まずは韓国戦で岸が先発すれば、中盤までゲームを組み立て、後は救援陣がしっかり試合を締める形を作ってくれると野口氏は見ている。

 世界一まであと2勝。まずは、前回大会の準決勝で大逆転負けを喫した宿敵・韓国との一戦を制し、しっかりと決勝へと駒を進めたいところだ。(Full-Count編集部)

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