メルセデス・ストラテジスト インタビュー:「確実に2位を狙ったはずが余計なリスクを冒してしまった」/F1ブラジルGP

 2019年F1第20戦ブラジルGP決勝のレース終盤、フェラーリの同士討ちによるセーフティカー出動で2番手だったルイス・ハミルトン(メルセデス)がピットイン。セーフティカーが明けると残り2周のうちに前方を走る3番手ピエール・ガスリーと2番手アレクサンダー・アルボンをオーバーテイクする必要に迫られていた。そのときの戦略についてメルセデスのチーフ・レースストラテジストを務めるジェームス・バレスに話を聞いた。
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──最初のセーフティカー導入時に先頭を走っていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はピットインしましたが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)はピットインしませんでした。バレス:我々にもピットインするという選択肢をもっていたが、マックスと同じように我々もピットインすれば、逆転はできない。だから、ピットインしてもいいが、もしマックスがピットインしたら、ステイアウトしろという指示をルイスに送ったんだ。

──しかし、セーフティカー明け直後に、フェルスタッペンにあっさりとオーバーテイクを許してしまいました。バレス:我々は最初のセーフティカー導入時の時点でルイスのタイヤの状況を正確に判断できていなかった。レースが再開されると、ルイスはソフトタイヤを履いたライバルたちに対して、明らかにタイヤのグリップを得るのに苦しみ出したので、セーフティカーウインドウを確認していた。

──そのとき(66周目)、フェラーリの2台が接触して、コース上にデブリが落ちてセーフティカーが出動しました。セーフティカー中のピットストップロスは約11秒。前の周の65周目にハミルトンと(ピエール・)ガスリーの差は9秒しかありませんでした。バレス:我々は完全に間違った選択を行ってしまった。我々はポジションはひとつだけしか落ちないと判断していた。ならば、レース再開後に失ったポジション(アレクサンダー・アルボンの2位)は奪い返せると判断した。ところが、実際には2つポジションを落として、ガスリーの後ろに回ってしまった。

──さらに、コース上のデブリの回収が想定よりも時間がかかった。バレス:ああ、残り2周で2台を抜くために、ルイスに余計なプレッシャーを与えてしまった。

──そもそもですが、66周目のピットインは、逆転優勝を狙ったものだったのでしょうか。バレス:いや、2番手だったルイスを確実に2位でフィニッシュさせるために採った戦略だった。しかし、それならば、あのようなリスクは冒すべきではなかった。なぜなら、リスクを冒しても同じポジションにしか戻れないのなら、ステイアウトさせたほうが良かったからだ。そうしていれば、ルイスが5秒加算のペナルティを受けて、7位に終わることもなかっただろう……。

──つまり、ブラジルGPではどのような戦略を採ったとしても、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンには敵わなかった?バレス:残念ながら、その通りだ。インテルラゴスでホンダ・パワーは強力だった。それは高地によるアドバンテージもあるのだろうが、それだけがすべてではない。そのことは、レッドブルだけでなく、ホンダPUを搭載するトロロッソもトップ3に入り、一時ホンダ・ユーザーがワン・ツー・スリーを独占していたことでもわかる。ホンダはものすごくいい仕事をした。ワン・ツー・フィニッシュは。その正当な報酬だ。

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