「ねんきん定期便」が届いたら始めたい、老後資金の不安対策

人生100年時代という言葉が広がり、幅広い年代の人が「老後のお金」に不安を抱いています。こうした漠然とした不安は、原因となる問題を明確化して具体的な対策を始めることで和らぐものです。そうはいっても、何から始めればよいのか分からなければ動くことができません。

そこで、「ねんきん定期便」が届いたら気軽に始められる老後資金の不安を吹き飛ばす方法をご紹介します。ねんきん定期便は「中身を眺めたら終わり」にせず、老後対策を始める足掛かりにしましょう!


ねんきん定期便で将来の「年金見込み額」を知ろう

1年に1度、誕生月に届くねんきん定期便を利用すると、老後の収入の柱となる公的年金の見込み額を確認しやすくなります。年齢が50歳以上かどうかで確認方法は異なります。

(1)50歳未満の人
ねんきん定期便には「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されており、今後納める年金保険料のことは考慮されていません。将来もらえる年金見込み額を知るためには、「ねんきんネット」に利用登録して試算する必要があります。

ねんきんネットへの登録はいつでもできますが、ねんきん定期便に記載されている「アクセスキー」が分かっているとスムーズです。登録後、ねんきんネットの「年金見込額試算ページ」で手順に沿って入力することで、年金見込み額が分かります。

(2)50歳以上の人
ねんきん定期便には「現在の加入条件で60歳まで継続加入した場合の年金額」が記載されています。今後働き方が大きく変わらないのであれば、記載された金額がもらえると期待できます。

ただし、ねんきん定期便の年金見込み額には、年下の配偶者がいるときなどに支給される「加給年金」や、厚生年金基金の加入実績がある人がもらえる「代行部分」などは含まれていません。

年金見込み額が少ないと思ったら、ねんきんダイヤルや年金事務所で相談して正しい年金見込み額を確認すると確実です。厚生年金基金からの支給額については、加入実績のある厚生年金基金へ問い合わせると確認できます。

「収入-支出」で分かる老後資金の不足金額

年金見込み額が分かったら、次は必要な老後資金の金額を確認しましょう。

「老後資金は〇円必要」などの情報を耳にすることも多いと思いますが、本当に必要な老後資金の金額は、自身の環境や希望する生活内容などで大きく変わります。「自分の場合はどうなのか」をしっかり確認することが大切なのです。

下記表の例のように、老後に予想される収入と支出の内容と合計金額を書き出してリスト化してみましょう。これで不足する老後資金の金額を確認できます。

表:筆者作成

「老後の合計予想収入-老後の合計予想支出」を計算した結果、プラスになれば今のところこれ以上の老後資金を準備しなくても大丈夫ということです。反対にマイナスだったときは、その金額分の老後資金をおぎなう方法を考える必要があります。

老後資金が足りないときの対策

不足する老後資金の対策は、大きく分けて「収入を増やす」「支出を減らす」「貯蓄する」の3つです。自分にとってストレスの少ない方法から始めてみましょう。

(1)収入を増やす
一つは、もらえる年金額を増やす方法があります。

もしも過去の年金記録に未納期間があれば、後払いすることで年金額を増やすことができます。通常は納付期限から2年まで、「学生納付特例制度」を利用していた場合は10年までの分を支払うことができます。

そのほか、60歳を過ぎてから保険料を納付する「任意加入」や、年金を受給し始める時期を遅らせる「繰下げ受給」をうまく活用すると、年金額を増やすことができます。

また、老後も働いて収入を増やす方法も有効です。特に60歳から年金がもらえるまでの期間は、働くことで貯金を減らさないようにできると安心です。

現役時代でもできることとしては、「健康的な生活習慣を心がけて、長く働ける体づくりをする」「キャリアアップや副業を検討する」などが挙げられるでしょう。

(2)支出を減らす
必要な老後資金に大きく影響するのは、「日々の生活費」です。老後は被服費や外食費などは抑えやすいので、必要な生活費は現役時代の8割くらいが目安となります。

必要な生活費が月1万円異なるだけでも、60歳から90歳までの30年間で計算すると360万円の差になります。もし5万円異なれば1,800万円もの違いです。そのため、今から生活費は抑えつつも楽しめるようなお金の使い方を身に着けると安心です。現役時代にお金が貯めやすくなるのに加えて必要な老後資金も減るので、一石二鳥です。

また、老後の支出を「絶対必要な支出」と「できれば用意したい支出」に分けるのもよいでしょう。「親族と同居すれば住居費は減らせそう」「自動車はなくてもよい」「旅行代や孫へのお祝い金などは老後も働けたら出そう」などの妥協案を考えておくと、目標の老後資金が準備できなくても焦らず対応できます。

(3)貯蓄する
老後までに毎年いくら貯めていけばよいのかは、「不足する老後資金÷老後開始までの年数」で算出できます。

ただ、教育費や住宅ローンの支払いなどの支出が多い時期は貯めにくく、反対に子どもの独立後などは貯めやすいものです。ライフイベントを考慮しながら毎年の目標貯蓄額を設定すると実行しやすいでしょう。

今から対策して老後不安を吹き飛ばそう

漠然とした老後の不安は、「分からない」ことが大きな原因である可能性があります。そのため、ねんきん定期便が届いたら将来もらえる年金額を確認し、老後資金が不足しそうなら具体的な対策を考えて実行し始めてください。今できることを行動に移すことで、不安感は軽減することでしょう。

本記事で挙げた老後対策はほんの一例です。自分で作成した老後の収支内容を見ながら、改善できるところをじっくり考えてみましょう。自分にあった老後対策を実行して、現役時代も老後も充実した生活を実現してください。

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