KTM、『クロスボウGT4』にEVOキット登場。「最高速強化でオーバーテイクを容易に」

 多彩な2輪モーターサイクルと4輪ライトウエイトスポーツカーを送り出すオーストリアのKTMと、ドイツの技術企業であるライター・エンジニアリングは、現地12月12日にFIA GT4規定マシンの『KTM X-BOW(クロスボウ)GT4 EVO』を発表。2020年シーズンに向け、複数のパーツを含むアップデートキットを供給するとアナウンスした。

 2019年シーズンは、ドイツのADAC GTマスターズのGT4クラスだけでなく、日本のピレリ・スーパー耐久シリーズ ST-Z(GT4)クラスにもケーズフロンティア SYNTIUM KTMとして参戦したKTMクロスボウGT4。オープントップの市販ロードカーに対し、大型リヤウイングを含めた空力パーツやルーフを備えるのが最大の特徴で、その心臓部にはアウディ製の2リッター直列4気筒直噴ターボが搭載されている。

 KTMとともにGT4規定車両の開発、製造にあたるドイツのライター・エンジニアリングは、モータースポーツ・シーンでは長らくランボルギーニの実戦部隊として知られており、本社の新組織“スクアドラ・コルセ”が立ち上がるまでは、ガヤルドGT3 FL2などを手掛けてきた。

 今回、バイエルンに拠点を置く同社によって開発されたGT4初のアップデート・モデルでは、主に直線速度を上げることに焦点が当てられた。

 これまでKTMはその軽量な車体を活かしたハンドリングとコーナリング速度、ブレーキングの安定性やタイヤ攻撃性の低さなどを武器に戦ってきたが、レースを戦う上でストレートスピードの不足は如何ともし難く、相対的なエンジンパワーの低さを補う改良がメインとなった。

 エンジン出力は、GT4規定のBoP(性能調整/バランス・オブ・パフォーマンス)を司るSROモータースポーツ・グループの指定値により最大375馬力まで増加し、SRO指定外のシリーズや選手権の場合、またトラックデイのような走行会イベントなどでは最高で440馬力まで出力できる。

これまでKTMはその軽量な車体を活かしたハンドリングとコーナリング速度を武器に戦ってきたが、相対的なエンジンパワーの低さを補う改良がメインとなった
従来の2018年型モデル(写真)でも、キットにより最新のEVO仕様にアップデートすることが可能となる

 これらの技術的アップデートとEVOキット開発には、2019年夏に目撃されたKTMとライター・エンジニアリング共作の“コンセプトGTモデル”のテスト走行を通じて収集したデータや知見が活用されたと見られている。

「KTMクロスボウGT4の性能特性と優位点は、その軽量な車体を活かしたコーナリングスピードとブレーキング性能にあるのは疑いようのない事実だ」と語るのは、ライター・エンジニアリング創設者であり、オーナーのハンス・ライター代表。

「そのため、我々が2020年型のEVOモデルで開発したのは、そうしたクルマの象徴的な美点や方向性を失わないように細心の注意を払いつつ、ストレートライン・スピードを上げてパフォーマンス・ウインドウを拡大することだった」

「これによりKTMクロスボウGT4のカスタマーは、あらゆるドライビングスキルや、SRO指定を受ける世界中の高い競技レベルを持つどのカテゴリーでも、オーバーテイクの機会を増やすことになるだろう」

「我々としても過去の数シーズンで、そうした世界中のカスタマーの声に注意深く耳を傾けてきた。そして、すべての人々にとってもっとも有益なアップグレードを提供することに多大な努力を払ってきたんだ」

「そんな私たちの経験に基づき、KTMクロスボウGT4 EVOはジェントルマンやプロレベルのレーサーなど、世界のあらゆるドライバーの競争力を高める最適なマシンになるだろう。ストレート上でのポジション争いを優位にするだけでなく、これまで同様コーナリングとブレーキングでも充分な安定性とパフォーマンスが提供されるわけだからね」

 従来型のKTMクロスボウGT4を走らせるすべてのカスタマーは、この2020年型キットにより最新のEVO仕様にアップデートすることが可能となり、440馬力仕様のエンジンキットは、単体のアクセサリーパーツとしても供給されることが決まっている。

量産モデルはオープントップとなるが、GT4では前開きのクラムシェル型ルーフを備える
SROのBoP指定でも最高出力は375馬力まで増加。機械的には440馬力にまで対応する
2号車ケーズフロンティアSYNTIUM KTM

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