600馬力をサーキットで解き放つ!|日産 新型GT-R NISMO 2020モデル 試乗レポート

日産 GT-R NISMO 2020年モデル

進化した制御プログラム『Rモード』

ついにGT-R NISMOのコクピットへと収まるときがきた。

許された周回数はイン/アウトラップを含む5周と短かったが、スーパースポーツを全開で走らせるランニングコストを考えればそれは仕方ない。それでも今回は限られたメディアだけの試乗だっただけに、ステアリングを握れただけでも幸運だと思う。

アウトラップではまず、進化の感触を味わうことにした。

制御は全て「R」モード。開発陣いわく「アダプティブシフトコントロール」のシフトスケジュールを先鋭化し、シフト操作なしでもギア選択が最適化されたというので、パドル操作なしに走った。

クセというのは恐ろしいもので、特にブレーキングからはパドルをついつい操作してしまいがちだったが、確かにクルマ任せでもかなりの素早さでシフトダウンが行われた。

正直ダウンシフトはパドルを引きすぎてもオーバーレブするところまでギアは落ちないし、そのくらい面倒な操作でも何でもない。また自分のタイミングでシフトダウンする方がリズムを取る上でも自然なため、真剣に走っているときにはあまり必要ない制御である。しかしこの技術が将来的に完全なものとになったとき、GT-Rがステアリングだけに完全集中できるマシンになるだろうことは直感できた。さらにその速さを増したGT-Rには、有効なデバイスになるはずである。

軽量化やタイヤスペックの変更で軽やかに

日産 GT-R NISMO 2020年モデル

バネ下重量の低減やダウンフォースの増加。そしてタイヤの接地面積向上を果たしたことによって、サスペンション印象は従来よりもしなやかに感じられた。そしてフロントオーバーハング重量の低減やルーフの軽量化から、確かに初期の操舵レスポンスが鋭くなっている。いや、素早い反応を示すのだが動き自体は非常にマイルドで、身のこなしが軽やかになったと表現する方が正しいだろう。

日産 GT-R NISMO 2020年モデル

強烈なエンジンパワーはよりリニアに

エンジンパワーは相変わらずの強烈さで、アクセルを全開にすると目が覚めるような加速感が味わえる。しかしその出力特性を細かく確認して行くと、ブーストの掛かり方にオーバーシュート感が少なく、リニアな特性になっていることが感じ取れる。

コーナー脱出時は4WDのトラクション性能の高さや車体剛性のしっかり感、サスペンションの追従性がシャシー性能として凝縮され、600PSが手の内に入っている感覚が強くなる。アクセルを全開にしても車体が暴れるようなことはないため、一見するとパワーがドロップしたかのような気持ちになるが、これこそが日産の目指したシャシーファースト性能だと言える。

さらに素敵なスポーツカーになって欲しい

唯一残念なのは、ターンミドルからのアンダーステアが相変わらず強いことだ。

そこにはフロントにV6ツインターボを搭載し、ドライブシャフトを搭載したことによるエンジン重心の高さ、GT-Rが持つ本来の素性が大きく影響していると思う。またこの速さをアマチュアドライバーに提供する上で、リアのスタビリティをガッツリと上げているからである。

日産 GT-R NISMO 2020年モデル

とはいえポルシェ911が既にリア・ステアを投入しているように、少なくとも「R」モードやスタビリティコントロールを切った状況では、もう少し何らかの方法でニュートラルなステア特性が必要ではないかと思う。

もちろん今でも、その強烈な速さを楽しむエンタメ性は恐ろしく高い。しかしGT-R、とくにNISMOには、ブレーキングからターンインまでの区間でマシンの挙動をコントロールする喜びがあり、クリップからはアクセルを躊躇なく踏める。GT-Rには、本物のスポーツカーになって欲しいのだ。

日産 GT-R NISMO 2020年モデル

FR版のGT-Rという手もアリか!?

一番手っ取り早い方法は、GT3車輌のように2WD化してしまうこと。ポルシェ911 GT3/GT3 RSのように、FIA-GT3車輌のデチューン版もしくはその基礎となる車輌として、GT-R nismoのキャラクターを確立してしまうことだろう。

GT3 MY18モデルのようにエンジン搭載位置まで低めることはできないかもしれないが、4WDの代わりにリアデフの電子制御化で旋回性と安定性を両立できれば、素晴らしいFRスポーツカーになるのではないだろうか。

日産 新型GT-R NISMO 2020モデル
日産 新型GT-R NISMO 2020モデル

そうはいってもGT-Rは、第2世代から生み出された4WD技術「アテーサE-TS」がそのアイデンティティである。となればこれを活かしたまま、さらにハンドリングの自由度を高める方が技術の継承にもなり、リソースの活用においても現実的かもしれない。

ともかく現状でGT-Rを速く走らせるには、ターンインを我慢してクリップまでに向きを完璧に変え、そこからいち早くアクセルを全開にして4WDのトラクションを活かす走りが求められる。雨でもなければドリフトコントロールを楽しむような隙は一分もない。

600馬力/660Nmが導くドライビングプレジャーとは!?

そうしたコンサバな走りでさえ十分に刺激的。走らせるだけで思わず頬がひきつって、アドレナリンがドッと吹き出す気さえする。しかし「技術の日産」の象徴としては、その開発の手を緩めないで欲しいと願う。

いまや世界のスーパースポーツは700馬力時代に突入した。GT-Rはここに単純な追従を見せるのではなく、600PS/660Nmの出力をドライバーが使いこなし、そこにドライビングプレジャーを見い出せる一台となって欲しいのだ。

それができているのは永遠のライバルであるポルシェ。そしてクラスこそ違うが、同じグループであるルノー・スポールだけだと思う。

[筆者:山田 弘樹/撮影:佐藤 正巳]

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