長所、短所、実現性は? 国提案の5整備方式比較 未着工の新鳥栖-武雄温泉 新幹線長崎ルート

 

 九州新幹線長崎ルート未着工区間の新鳥栖-武雄温泉(佐賀県の約51キロ)の整備方式を巡り、国土交通省がフル規格前提の協議に反発する佐賀県に譲歩する形で、フル規格に加え、ミニ新幹線など計五つの整備方式を今月提案した。各方式の長所や短所、課題をまとめた。
 佐賀県が主張していた選択肢は、過去に合意がある「スーパー特急方式」「フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)」、新幹線と特急を乗り継ぐ「リレー方式」の3案に加え、与党検討委員会で比較検討された「ミニ新幹線」「フル規格」の計5案だ。国もこの5案での協議を提案した。

 ▼スーパー特急 
 スーパー特急方式は、フル規格(標準軌)整備までの暫定的な措置として考案された。武雄温泉-長崎の路盤やトンネル、高架橋などを新幹線規格で整備するが、レール幅は在来線と同じ狭軌とし、武雄温泉以北の在来線区間と直通運行する。鹿児島ルートも当初、同方式で着工したがフル規格に格上げされた。現在、スーパー特急方式の路線、車両は国内に存在しない。

 ▼FGT 
 FGTは、車輪の間隔を変えて新幹線と在来線の両区間を走行できる車両。新幹線区間を時速270キロ、在来線区間を130キロで走り、博多-長崎の所要時間は約1時間20分。現行より28分短縮される。ただ、耐久走行試験で車軸の摩耗が判明し、国は開発難航や経済性の問題から導入を断念した経緯がある。技術開発は続いており、レール幅が異なる在来線間の直通運転を想定して近畿日本鉄道が国から委託を受けて開発に取り組んでいる。

 ▼リレー方式 
 長崎ルートは2022年度に、武雄温泉で新幹線と在来線を乗り継ぐリレー方式で暫定開業する。所要時間(武雄温泉-博多は在来線使用の場合)は約1時間20分で、FGTと同じ。武雄温泉での乗り換え時間は約3分。同じホームで対面乗り換えするための追加工事に約24億円、新幹線車両の検修設備を大村、熊本に追加する工事費約46億円の計約70億円が必要となる。鹿児島ルートの部分開業時に採用され、新八代駅で在来線と対面で乗り換えできるホームが整備された。

 ▼ミニ新幹線 
 ミニ新幹線は、在来線にレールを1本追加してフル規格のレール幅とし、新幹線区間との直通運行を可能にする方式。車両は在来線特急と同じ大きさ。秋田、山形新幹線で導入されている。長崎-博多の所要時間は1時間13~19分。ただ、在来線の対応工事中は所要時間が長くなり、運行本数も減少する。また在来線を活用するためフル規格に比べ輸送障害が多くなる。長崎ルートの場合、未着工区間の建設費は約1800億~2700億円で、佐賀県の実質負担は約280億~490億円。収支改善効果は年約1億~9億円。工期は約10~14年。

 ▼フル規格 
 フル規格は、博多-長崎の全線を新幹線で整備する(博多-新鳥栖は鹿児島ルートと共用)。所要時間は最速約51分で時間短縮効果、収支改善効果が大きいなどとして与党検討委員会が「フル規格での整備が適当」との基本方針を示した。建設費は約6200億円で佐賀県の実質負担は約660億円。収支改善効果は年約86億円。工期は約12年。
 各方式は時間短縮効果や建設費、費用対効果などで一長一短あり、実現性に課題がある方式もある。佐賀県が国交省との協議入りに合意すれば未着工区間の在り方を5案で議論することになる。

 

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