文化芸術ホールは市役所跡地 長崎市長表明、県庁跡を断念

 長崎市の田上富久市長は31日、新設する文化芸術ホールの建設地について、県庁跡地(江戸町)を断念、市役所移転後の跡地(桜町)にすると正式表明した。長崎県教委による県庁跡地の埋蔵文化財調査で江戸期の遺構が出土し、専門家は保存や追加調査を要望。ホールの完成は市役所跡地の方が早い見通しとなったため。
 長崎市は関連予算を2月の定例市議会に提出する方針で、2026年度のホール完成を見込む。県は20年度中に県庁跡地活用の基本構想を策定する計画だが、内容の再検討を迫られる。
 県庁跡地は、16世紀の長崎開港後にキリスト教の国内拠点「岬の教会」、江戸初期の禁教令後は長崎奉行所西役所などがあった。昨年10月から今月にかけての調査で、長崎奉行所の遺構などが相次ぎ出土した。
 田上市長は同日、県庁で中村法道知事と非公開で面会し、方針を伝えた。中村知事は面会後の取材に「継続して詳細な調査が必要。現段階で建物を建てるという判断は難しい」と述べた。県庁跡地は「長崎発祥の地として非常に大切な土地」とし、にぎわい創出へ市と協議を続けるとした。
 市役所で記者会見した田上市長は「質が高く、市民が使いやすいホールの早期整備を目指してきた」と強調。県と市が当初、県庁本館が何度か建て直された歴史を挙げ「ほぼ遺構は残っていない」とみていたことについても「掘らないと分からない部分はあった。(遺構出土は)決してマイナスではない」と語った。
 もともと市は、廃止した市公会堂(魚の町)に代わるホールを22年度ごろの市庁舎移転後の跡地で建設予定だったが、早期整備が可能な県庁跡地に変更。18年11月、市によるホール整備で県と合意し、県は「広場」と「交流・おもてなしの空間」を整備予定だった。

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