収入はあるのにローンで買う「借入スパイラル」からの脱出法

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、夫は自営業、妻は派遣社員という20代の共働き夫婦。できるだけ早くお金を貯めたいけれど、ローンの返済などで出費が多く、なかなか貯められないといいます。FPの前野彩氏がお答えします。

夫婦二人暮らしです。子どもはいません。夫は自営業のためボーナスもなく、日給のため、月の勤務日数により毎月の収入が変動します。私も事務職の派遣社員でボーナスはありません。時給ですがフルタイム勤務なので、毎月変動なく手取り16万6000円くらいです。

今後、中古の分譲マンションの購入を検討しています。また結婚式を挙げていないので、結婚写真(25万円程度)くらいは撮りたいと思っています。今月から2万円を貯蓄にまわしました。できるだけ早くお金を貯めたいのに、出費が多くなかなか貯めることができません。どうか喝を入れてください。

〈相談者プロフィール〉

・女性、29歳、既婚(夫:27歳)、子どもなし

・職業:派遣社員

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:46~52万円

(夫:30~36万円、妻:16.6万円)

・年間の手取りボーナス額:なし

・毎月の世帯の支出目安:約44万円

【支出の内訳】

・住居費:7.5万円(駐車場代含む)

・食費:5万円

・水道光熱費:1.2万円

・教育費:なし

・生命保険料:3.5万円(夫の国民保険料含む)

・通信費:2万円(スマホ2台、Wi-Fi)

・車両費:6.2万円(ガソリン1.2万円、車ローン4.2万円、保険0.8万円)

・お小遣い:8万円(必要に応じて変動)

・家電ローン:1.5万円(今年2月まで)

・美容代:2.5万円(美容院、ネイル)

・その他:3万円(夫のたばこ代など)

・不明:3.6万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:なし

・現在の貯蓄総額:なし

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:6万円(キャッシング)


前野:車に家電、スマホにキャッシングと、生活の大部分が借入でまかなわれています。ボーナスがないことを気にされていますが、収入は十分にあります。借入体質から貯蓄体質になって、「25万円の結婚写真」も「将来の中古マンション」も実現しましょう!

借入スパイラルからの脱出を!

まずは、「欲しい→お金がない→でも、欲しい→ローンで買う」という借入スパイラルから脱出しましょう。

「モノを買う」「サービスを利用する」という行動は、経済にとっては重要な役割ですが、行き過ぎると、「お金が貯まらない」「本当に必要な時にお金が借りられない」となり、現在のように、本当にやりたいことができた時の足かせになります。

目の前に欲しいものが出てきたときに、「他に代わりとなる方法はないか」「金額や時期など調整できないか」と、夫婦で話し合いをするように意識づけてみませんか?

わたしにご相談にいらっしゃる方の中には、面談アドバイスの後、意識を変えるためにお財布の内側に『これを買って何を得たいの?』という紙を貼った方がいます。たとえば洋服を買いたくなったとき、「これを買ったら仕事もがんばれそう」だから買いたいのか、それとも「友達におしゃれな人に見られたい」から買いたいのかなどと考えて、自分でブレーキをかけるようにしたのです。

頭の中だけで考えるのではなく、自分へのブレーキを「見える化」してみませんか。

収入が少ない月に合わせて家計をコントロール

ご主人の収入に変動があるものの、少ないときでも30万円の手取り収入があります。ボーナスはありませんが、ふたりで少ない月でも46.6万円、年間手取り収入として559万円あります。これは会社員なら年収約700万円に近い収入ですから、キャッシングなしでも十分に生活できるはず。

『喝をいれてください』というご要望通り、ここでしっかりと家計を立て直しましょう!

まずは、国民年金保険料分を除いた、生命保険料です。月額約2万円の保険の中身は、本当に必要な保障かどうかを確認しましょう。死亡保険が中心であれば、どちらかが亡くなった場合も、お互いに独身に戻るだけなので、多額の死亡保障はいりません。また、入院など働けなくなった時も、どちらかが仕事をしてサポートできます。保険が欲しい場合は、入院日額5000円を目安に検討してみてください。保険は、安くても不要なら解約、必要なときには、保険料の高い安いに関わらず加入しましょう。

次に節約できるのは通信費です。ご主人が自営業で、仕事の連絡で通話が多い可能性もありますが、1年に1度は通信料や通話料のプランを見直して、節約しましょう。格安SIMは会社によっては通話のひと手間が必要なることもあり、慣れるまでの不便もありますが、目標のためには通信費を月額1.5万円以内に抑えたいところです。月額5000円浮けば、1年で6万円。10年で60万円、30年で180万円貯まりますから、将来の車の買い替え費用や、マンションを購入した後のリフォーム費用に使えますよ。

また、スマホの分割払い購入は、実質ローンと同じです。一括払いの金額で価値を判断して、次の買い替えは一括購入を目指しましょう。

そして、車両費。車の保険は年間約10万円になっています。年間走行距離や車種、免許証の色(ブルー・ゴールド)によって保険料は変わります。ネットの一括見積サイトなどを利用して、保険料が下がらないか、検討しましょう。必ず必要な保障は、対人&対物、そして、もしもの時につけておきたいのが弁護士特約です。それ以外は、運転している自分側の保障や車への保障なので減らすことができます。必要な保障は守りつつ、保険料を比べてみてください。

「楽しみ」はそれぞれのお小遣いから捻出を

最後は、「楽しみ」のお金の見直しです。ここでいう「楽しみ」とは、お小遣いと美容代とたばこ代などのその他。この3つの支出の「楽しみ」の合計額は、13.5万円。さらに、使途不明金が3.6万円ですから、これも含めると17.1万円が「楽しみ」や「気が付いたらなくなっている」お金になっているのです。「出費が多いから仕方ない」という他人目線ではなく、「手取りの3分の1を自分達の遊びやストレス解消に使っている」という意識を持ちましょう。

そこで例えば、ご相談者さんは、美容院とネイルを含めたお小遣いを4万円、ご主人はたばこ代を含めたお小遣いを6万円として、その中でやりくりしてみませんか? この改善ができれば、「楽しみ」で月額3.5万円浮きます。“お小遣い”という名称の金額は増えても、そこに含める内容を2人で話し合い、決めた金額の中でやりくりする習慣をつけることが必須です。足りないからキャッシングは論外。なお、先ほどの金額はあくまでも「仮」ですから、お二人の将来のために、やりくりできるお小遣い額を話し合ってみてくださいね。

これからどうしたらいい?

ポイントは、2つ。ローンを減らすことと、貯蓄目標を夫婦で共有することです。

家電のローンは2月には終わりますから、この浮いた1.5万円と「楽しみ」のお金を見直した3.5万円を貯めて、まずは、キャッシングを完済しましょう。

キャッシングが完済したら、この月額5万円は結婚写真のために貯め、夢が叶ったら、そのあとはマンションの夢に向かって貯めましょう。

使途不明金の3.6万円は、車の税金や車検、電化製品の買い替え、旅行代に備えて、給与口座の自動積立預金の手続きをして貯めます。1年間で43万円になりますから、貯めながら必要な時に使うことで、次はキャッシングをしなくても、税金や車検の支払い、電化製品の買い換えもできるはずです。

住居費、食費、水道光熱費は引き締められています。今の楽しみと、将来のマンション購入の夢実現のために、夫婦で「いつまでにいくら貯めよう! そのために、この支出はこだわるけれど、これは減らそう」とメリハリをつけましょう。

結婚写真の夢が早く叶いますように。

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