手取り月40万の共働き夫婦「今の収入で子育てできますか?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、低収入であるため将来の見通しが立たないという30代の共働き夫婦。子どもやマイホームが欲しいけれど、収入面で不安があり、なかなか踏み出せないといいます。FPの氏家祥美氏がお答えします。

低収入であるため、将来の見通しが立ちません。子どもをもうけて生活できるのか、老後の費用が足りるのか不安です。

結婚7年目、地方で共働きの夫婦です。お互い正社員ですが、二人とも田舎の中小企業勤めであり、給与・賞与の額が低く、また退職金も出るかどうかわからない状況です。結婚当初、お互いの手取りを考えたとき、子どもや持ち家を考えることは難しいかもしれないと思っていましたが、貯金が1000万円を超えたことで、もしかすると、それらの夢に挑戦してもいいのではないかとも思うようになりました。

ただ、もし子どもを授かれたとしても、産休や育休、場合によっては私が仕事を辞めることになる可能性も考えなければならないとなると、収入が半減することになるため、やはり無理なのかなとも思います。年齢が年齢であるため、もう決断しなければならない時期になってきていると感じます。

転職して収入を増やすという方法もあるとは思いますが、私も夫も残業が少なく、休日出勤・転勤などがない現在の仕事を気に入っています。また前職の激務で体調・精神を崩した経験があり、体調を一番優先したいと考えているため、転職は考えていません。

お小遣いは3万円ずつで、そこから趣味の音楽や服にお金を使っています。いまはほとんど使い切っていますが、お互い子どもができたら、半分以下になっても構わないと考えています。

家計の中で通信費が高額なのは、田舎のためインターネットとテレビの回線が一緒の契約となっており、それが月1万円くらいかかるのと、趣味のためにテレビの有料放送を契約しているためで、削減するのは難しいです。二人にしては高額な食費は、飲食がお互いの共通の趣味であり、週末に外食をしているためです。

年金定期便によると、受取見込額は現時点で夫は400万円、私は300万円程度でした。ボーナスは少額で、そこから年払いの夫の生命保険(年15万)、年払いのがん保険(2人で3万円)、自動車保険(2台で10万円)、自動車税(2台で5万円)、家具家電の買い替え費などを除くと10万円程度しか余りません。それを貯蓄にまわしています。

iDeCoやつみたてNISAに興味があり、やってみたいと思ってはいますが、現金の貯蓄が減る、必要なときに引き出せないと考えると踏みとどまってしまいます。現金預金も同じ理由で、普通預金と1年の定期預金にしています。外貨預金や仕組預金も気になりますが踏み出せません。

<相談者プロフィール>

・女性、36歳、既婚(夫:39歳、会社員)

・職業:会社員

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の手取りボーナス額:50万円

・毎月の世帯の支出目安:25万円

【支出の内訳】

・住居費:6万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1.5万円

・生命保険料:1万円(医療保険0.4万円、年金保険0.6万円)

・通信費:2万円

・車両費:0.5万円

・お小遣い:6万円(3万円×2人)

・その他:2万円(日用品ほか)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:15万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:10万円

・現在の貯蓄総額:1500万円(うち400万円は生命保険の現時点での返戻金)

・現在の投資総額:50万円(株主優待目当てのNISA)

・現在の負債総額:なし


氏家:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの氏家祥美です。今回のご相談は、低収入で将来の見通しが立たないというご相談です。

はたして、本当にそうでしょうか。現在の状況と、将来のご希望を、分解しながら考えてみましょう。

現在の家計状況から将来のお金を予測する

夫婦共働きのご相談者さんは、世帯の手取り月収が40万円です。それに対して、月々の支出合計は24万円で、毎月15万円を貯蓄しているといいます。妻36歳、夫39歳の結婚7年目で、貯蓄残高は1500万円(うち400万円は生命保険の解約返戻金の現在価値)という状況です。

ボーナスからの貯蓄10万円をあわせると、年間の貯蓄額は190万円です。仮に定年退職の年齢が60歳だとして、この生活を夫60歳まであと21年続けると、元金だけでこれから3990万円貯められます。現在の1500万円と合わせると、これだけで5490万円になりますね。そこに、これから払っていく分の保険の解約返戻金や投資の運用益も上乗せされることでしょう。

現在の生活費は、月額24万円ですから年間で288万円です。ボーナス50万円のうち、保険の支払い18万円と、貯蓄10万円を差し引くと、実際に使っているのは22万円ですね。以上より、ご相談者さんの1年間の生活費は現在310万円と計算できます。がん保険と医療保険、終身保険に加入しているので、老後病気になっても、ある程度は保険でカバーできるでしょう。

将来の年金見込み額が夫400万円、妻300万円ならば、65歳以降は年間700万円の収入となるわけですから、お金がどんどん貯まる状況になりそうです。少なくとも、いまの夫婦の暮らしを続けた場合、「老後の費用が足りない」という心配はなさそうだと思いませんか?

念のため、将来の年金額については、「ねんきんネット」を使って、もう一度計算をしてみてください。激務の仕事からの転職歴があるというので何とも言えませんが、現在のご夫婦の年収・年齢から考えると、将来の年金額が大きく見積もられている可能性があります。

今の収入で子どもを育てられるのか?

子育てを考えるとき、お金のことも大切ですが、同時に夫婦の年齢を考えることも重要になります。夫婦の年齢が上がるほど、子育ての終了年齢が上がります。

現在は、夫39歳、妻36歳ということですが、今すぐに子どもを授かり1年後に出産するとして夫40歳、妻37歳からのスタートです。子育てに22年間かかるとすると、子育て終了時は夫62歳、妻59歳になります。

実際、子どもを欲しいと思ってもすぐに授かれるとは限りませんし、子どもの進路によっては22年間で子育てが終わるとは限りません。それを考えると、あまり悩んでいるタイミングではないのかなと思います。

いまの貯蓄額のペースを考えると、医学部や薬学部などはともかくとして、一般的な大学であれば国立・私立問わず、文系でも理系でも進学させてあげられそうですよね。お金のことをあまり心配せずに、子育てへと一歩前進してみてはいかがでしょうか。

産休・育休中に妻の給与が止まっても、産前産後休暇中には出産手当金、育休中には育児休業給付金がもらえます。通常の給料よりも支給額は少なくなりますが、どちらも非課税ですし、休業中の社会保険料の支払いは免除されているため、手取りベースではさほど減額しません。そのため、「思ったほど生活は大変じゃなかった」という人が多くなっています。

夫婦ともに残業が少なく、休日出勤や転勤などもない職場ということですから、職場的にも子育てには向いていると思いますよ。

この先、マイホームは持てるのか?

マイホームについても、過度に心配する必要はありません。頭金としては一般的に物件価格の2割を用意したい、と言われていますが、その程度の頭金はすでに用意できています。

マイホームも、購入年齢が上がるほど高齢になってもローンを払い続けることになりますから、あまり決断を遅くするのは得策ではありません。ただし、子育てに入って妻が仕事を辞める可能性が高い場合には、購入できる物件価格が変わってきます。

世の中全体の流れとしては、出産後も夫婦ともに働き続けて夫婦で子育てする家庭が増えており、国としてもそれを推し進めているので、その流れに乗るのが自然だとは思いますが、体調面の心配や子育て方針として、辞める可能性も考慮したいということであれば、出産して無事に職場復帰してから家を購入するという選択もアリでしょう。

貯蓄を続けて頭金額を増やし、ローン返済期間を短めにできれば、購入が遅くなっても老後にしわ寄せはいきません。

「お互い子どもができたら、お小遣いが半分以下になっても構わない」と考えているほど、実は子どもへの想いが強いご夫婦です。準備期間は7年と、もう十分取りました。怖がらず、安心して一歩進んでみてください。

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