元レイズ岩村明憲氏、筒香嘉智に成功の秘訣伝授 「守備でミスしても打てばいい」【前編】

レイズ・筒香嘉智【写真:Getty Images】

岩村氏は2007-09年にレイズ在籍、08年にWSに出場した

 レイズに加入した筒香嘉智外野手が好スタートを切った。“デビュー戦”となった23日(日本時間24日)のヤンキース戦で1打数1安打1四球。24日(同25日)のレッドソックス戦では左中間に本塁打を放って1打数1安打1四球と、2試合で2打数2安打2四球の打率1.000をマークしている。

 実戦前日の22日(日本時間23日)には、レイズOBで現在はBCリーグ福島レッドホープスで監督を務める岩村明憲氏から激励を受けた。41歳の岩村氏はポスティングシステムを利用して2006年オフにヤクルトからレイズに移籍。レイズでは07年から3年間プレーし、08年にはレイズの地区初Vに貢献してワールドシリーズに出場した。レイズの“レジェンド”はメジャーでの心構え、成功の秘訣などを語ってくれた。

――筒香選手とは初対面ではないですよね

「初対面ではないです。勿論選手同士でも一緒にやってますし。解説になってもキャンプは回っていたので、横浜(DeNA)にも必ず行っていました。ラミレス監督もいましたので。彼の練習も見ていましたね。ロングティーとかも結構近くで。彼がこうやってメジャーに行きたいっていうのも分かる気がすると言うか。ウインターリーグが凄く大きな経験になって、これが多分人生を左右している部分なんじゃないかなと思いますけどね」

――打者としての印象は

「まず侍ジャパンの4番を打っているということがあるし、チームでも主軸しか打ってないわけですから。高い数字を求められる部分もあると思うんですけども、持ち前のパワー、長打力というのはレイズのファンが楽しみにしている部分だと思います。ただ、自分がやらないとやらないと思い過ぎると、ここは日本じゃないのでね。そこだけは気を付けて欲しいとは思いますけどね。地に足を着けて普通に野球ができれば彼なりの成績が出るんじゃないかなと思います」

――準備をかなりしてきているようですが、練習を見て

「バッティング練習で反対方向を意識しているというのはそういうところだと思います。例えば、日本のキャンプは何スイング中何本柵越えとか。見出しを飾りたいがためにそういうものを書くメディアさんがあると思うんですけども、そういうのに一切囚われない。本当に反対方向で終わる日もありましたしね。それこそ反対方向にホームランを打てばというところ。勿論球場の特性もあると思いますし、自分がどこをホームにしているのかというのがあると思います。横浜スタジアムということはそんなに引っ張らなくてもある程度どの角度でも入りますよっていうものが、ああいう練習にもつながったと思う。それがメジャーにも来たいという部分の、やらなければいけないことだという。そういうことが彼にとっては準備だったんだと思いますね」

――ギリギリまで引きつけて打つ

「そうですね。特に(ボールが)動くというのが。日本よりも多くアクションしてくるので。対応していくにはギリギリまで待つ必要があります」

――自身の経験から1年目に最も苦労したことは

「思い出しますよ、オープン戦で全く打てなくて本当に。大丈夫かって? よくみんなに言われていたんですけど。外のストライクゾーンの確立というか、そこで今まで通り自信を持って、日本でやっていた時と同じようにやれれば、メジャーの審判もここまでなんだみたいなものがあれば、それがオープン戦で早いうちに分かれば気負うことなく打席に入れると思います。ただ、ストライクゾーンが審判によって違うというのがまず大きくあるし、日米で(ストライクゾーンが)違うとなった時に、何を投げてくるかイメージが付かない場合っていうのは、結構、暗闇を入っていって出口を見つけるようなもので、結構恐怖心があったりするので。その恐怖心を一つずつ拭い去っていければ。そういう1か月にして欲しいなと。本当にそれが早いうちにできたら、彼の野球がここでできると思いますけどね」

岩村明憲氏(左)から激励を受けたレイズ・筒香嘉智【写真:木崎英夫】

岩村氏「守備の負担がバッティングにつながらなければいい」

――守備面では

「こうならないで欲しいなあっていうのは、守備の負担がバッティングにつながらなければいいなっていうのはあると思います。完璧を求めすぎて、例えばサードというポジションはそんなに今まで深くやったことがない。レフトを主に守ってきた。ずっとサードでやっていない選手がいきなりサードに行った時に、『俺できないから』と、もっともっとと追い詰めていくと、メンタルが心配。僕はバッティングにつながらなければいいなって思っているので。ある程度はミスしても打って取り返すぐらいの気持ちでいんじゃないかなと。それから慣れてくればサードにも適応していくだろうと思います」

――完璧を求めすぎない

「勿論、レフトには何も問題ないと思うので。いろんなポジションを守るというところの心の準備でしょうね。あとは監督ともコミュニケーションは取っていると聞いたので、そこは監督がどういう思いでサードで使ったり、レフトで使ったりするのか。だからサードで使うっていうことは必ず外野手が4人はいるということですよね。もともと外野手の筒香をサードに使うということですから。そういうのもコミュニケーションが取れて自分が動く意味さえわかれば、バッティングには影響しないと思うんですけどね」

――ご自身の経験を踏まえて

「僕がセカンドに行ったのも、ジョー・マドン(監督)といろんな話ができて。僕が言われたのは『お前がセカンドに行ったら強くなる』という言葉があったからこそセカンドに行けた。それまでサードとしてプライドを持って日本でゴールデングラブを取って。へたくそからたたき上げでここまで来た自負があっただけに、動く時ってどうなのかみたいなものはありましたけど、監督に言われると、動かざるを得ないというか。じゃあ、行きましょうと」

――チームのために

「強いチームを目指すのは当たり前だし、自分のパフォーマンスだけではなくて、そっちでいいとなれば筒香君もレフトやサードだけではなく、勿論ファーストもあるでしょうし、今度は外野だと全部なるだろうし。外野手がもし怪我をしてしまった場合、その穴埋めをしないといけないですから。カバーできるぐらいの守備力もあれば、打つだけではないというところが見せれたら、また、パワーヒッターの新たな一面が出せて筒香君の評価も上がるんじゃないかなと思いますけどね」

――岩村さんはグリーンモンスターを超えた唯一の日本人左打者

「是非ね、グリーンモンスターを超えて欲しいですし。壁当てを好きになって欲しいですね。あそこがホーム球場じゃないからなかなかですけれど、ただあそこに行ったら壁当てしたいんだっていうね。それぐらいの気楽な気持ちで」

――日本人左打者2人目は筒香選手で

「そうなって欲しいですね。勿論大谷君もそうですけれど。大谷君はあそこでバッターとして行くことが少なかったりするので。あそこは楽しみで、歴史のある球場なので(必ず名前が出ることになる)。もうそうなって欲しいですね(笑)」

(後編に続く)(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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