WEC:山下健太、タイヤとエンジニアを一新したCOTAで様々な経験「レース中に初めて」のスピンも

 2月22~23日、アメリカ・テキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)でWEC世界耐久選手権第5戦ローン・スター・ル・マンが行われ、TGR WECチャレンジドライバーの山下健太はLMP2チームのハイクラス・レーシングとともにレースに挑み、クラス7位/総合10位でフィニッシュした。

 2019/20年シーズンよりWECのLMP2クラスに初参戦している山下を含むハイクラス・レーシングのアンドレス・フィヨルドバッハ、マーク・パターソンにとってCOTAは初めて走行するトラックだ。また、チームは今戦からタイヤメーカーをグッドイヤーからミシュランに変更しエンジニアも交代するなど未知の要素が数多くあるなかでの戦いとなった。

 さらに、この週末は通常よりも1日少ない2日間開催となったことから、ハイクラス・レーシングのドライバーたちは主催者の許可を得て事前にレンタカーでコースを試走。山下は渡米前にTMGトヨタ・モータースポーツGmbHでシミュレーションテストを行うなどの準備を重ねて22日のプラクティスに臨んだ。
 
 その走行1回目、山下のタイムはトップから2.5秒ほど遅れるもので、「最初はオーバーステアが強くて、その後は多少よくなりましたけど、全体的なグリップ感がないし他のクルマのタイムにはまったく届きそうもない」というコメントが出るほどクルマが決まっていない状態。

 続く2回目のプラクティスではトラクション対策を施し、コンパウド違いのタイヤを試すものの首位との差は依然として2秒以上あり、パフォーマンスの向上がみえないまま予選に臨むことになった。

 今回も予選は山下とフィヨルドバッハがアタックを担当し、まずは山下が1分50秒771を記録する。チームメイトは1分52秒724で、平均タイムは1分51秒747となりハイクラス・レーシングの33号車オレカ07はクラス6番手グリッドからのスタートとなった。

 予選後、山下はミシュランタイヤの特性について次のように語った。

「正直なところ、もっとピークのパフォーマンスが上がるかと期待していたんですけど、そんなに甘くないというか、まだ使いこなせていないことが大きいと思いますが実際には差が広がってしまいました。それは残念です」

「前回まで履いていたタイヤと比べて、許容量が大きいというか、ピーキーさは減っている印象なのでレースでは使いやすいのかなと感じています。レースペースは悪くないと思います」

 その言葉どおり、翌日の決勝はスタートドライバーを務めた山下がレース序盤、クラストップから6番手までが5秒以内にひしめく接近戦のなかで虎視眈々とポディウム圏内を窺う走りを披露する。
 
 山下は5番手で1回目のピットに入ると、タイヤ無交換で2スティント目へ。その後、タイヤと燃費をセーブする走りに徹するが、スティント終盤にはペースアップ。1台を交わしてクラス4番手でチームメイトにバトンを渡した。

■チームが手応えを感じる1戦に

 ステアリングを引き継いだフィヨルドバッハは一時トップを走行し、続くパターソンも他のブロンズドライバーよりも速いペースで周回を重ねていく。その後、ハイクラス・レーシングドライブスルーペナルティやスピンでタイムを失いながらも、今後のレースに期待を抱かせるレース内容を披露。

 レース終盤、残り1時間を切ったところで、ふたたび山下が乗り込んだ33号車オレカは、途中コースオフを喫するシーンもみられたものの、順位はキープしてクラス7位でチェッカーを受けた。
 
「ペースは悪くなかったです。ただ周りに比べてすごく速いというわけでもないですし、劣っているなと感じるところもありました」とレース後に語った山下。

「この週末は本当にいろいろありました。自分自身もレース中に初めてスピンしましたし、いろんな経験をしました」

 次戦、3月18~20日に行われるセブリング1000マイルについては「セブリングは特殊ですごいバンピーで難しいコースだとみんな言っているので、そのコースを走れるのをとても楽しみにしています」とコメント。
 
「今回うまくいかなかった部分を修正して、ミシュランタイヤをもっとうまく使えるようになればチャンスはあると思うので、表彰台を目指して頑張りたいと思います。応援よろしくお願いいたします」

スタート直後の1コーナーに4ワイドで進入するLMP2クラスのマシン。山下健太駆る33号車オレカ07は内側から2番目
LMP2クラスに参戦しているハイクラス・レーシングの33号車オレカ07・ギブソン
ミシュランタイヤと新しいエンジニアでの初陣はクラス7位。しかし、チームにとっては手応えを感じる1戦となった。

© 株式会社三栄