【MLB】イチローに通じる筒香嘉智の「言葉力」 技術を裏打ちする柔靱な思考力

レイズ・筒香嘉智【写真:Getty Images】

バットは音無しも、3つのゴロを捌き三塁での守備の堅実さをアピール

 レイズの筒香嘉智外野手は29日(日本時間3月1日)、ナイターで行われた本拠地でのブレーブス戦に「5番・三塁」で出場し、左直、空振り三振で終え2試合ぶりの音無し。しかし、守備では3つのゴロをさばき、堅実さをアピールした。

 初回、緩い打球にダッシュをかけ、グラブ捕球から素早い送球で1死を取る。3回、二、三塁で前進守備を敷く中で痛烈なゴロが襲ったが、重心を落とし体の正面でがっちり掴み、三塁走者を釘付けにした。試合前の全体練習で、三本間より近い距離から柔らかいクッションが入った特製のボールを使い、ノックバットを強振する練習も重ねたケビン・キャッシュ監督は「俺に借りができたな」と笑みを浮かべた。

 この日の3つの守備機会で、筒香のセンスが滲み出たのが緩い打球をさばいた直後の初回2死二塁の場面だった。途中でバウンドが変わり高く弾んだゴロには瞬時の判断で、一歩下がって捕球。最後は体勢を切り返して素早く一塁へストライク送球で仕留めた。

筒香が大切にするキャッチボールの質「僕の中ではもう何年も前から変わってない」

 間一髪で打者走者を封じた送球を、“順応”の二文字で括るにはあまりにも短絡的過ぎる――。日本とは違い試合前のシートノックがないのが米国流だ。日々の全体練習でも捕球後に送球をする練習はほとんど行われない。この環境下で、実戦での送球の準備になるのはキャッチボールだ。その重要性をどれほどに感じているのか。水を向けると、筒香は敏感に反応した。

「いろんな体の使い方をずっとやっている中で、(左打ちの)僕の中でキャッチボールとバッティングは(体の使い方が)反対の動きですけど、連動しています。日本にいようがアメリカに来ようがキャッチボールの質というのは僕の中ではもう何年も前から変わってないですね」

 しびれるような秀逸なコメントに、なぜか桑田真澄氏(現野球評論家)が浮かぶ……。あるインタビューで打撃の良さについて問われた桑田氏はその秘訣を「キャッチボールをしっかりやっていれば打てるもんなんですよ」と、歯切れ良く答えている。

 打撃練習をほとんどしない元投手と筒香の感性が見事に絡み合う。

かつてのイチローに通じる野球への息遣い

 考え抜かれた手堅い説明を施すことができる筒香の「言葉力」に触れた時、マリナーズで眩いほどの輝きを放っていたかつてのイチローが重なる。今、この瞬間に忘れ得ぬイチローの至言が浮かび来る――。

「僕の動きにはすべて意味がある」

 背番号「25」のルーキー、筒香嘉智の一挙手一投足は刮目に値する。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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