働く女性 “重い”“軽い”人それぞれ 「男の人うらやましい」「早く閉経して」 2020国際女性デー

女性はそれぞれ症状の異なる生理と付き合いながら働いている

 3月8日は国連が定める国際女性デー。女性の地位向上や差別撤廃について考える日です。それが実現する先には、性別にとらわれず誰もが自分らしく生きられる社会があるはずです。一方で、多くの女性には毎月の月経(生理)があり、否が応でも「女性」である自分と向き合うことになります。現代の女性たちにとって、月経はどんな存在なのでしょうか。恥ずかしいもの? 邪魔なもの? ジェンダーフリーの壁でしかないの? そんな疑問を込めて、県内の布ナプキン専門店を営む女性やアスリート、働く女性たち、そして、彼女たちの月経の悩みに寄り添う産婦人科医に話を聞きました。

 女性の生き方が多様化した現代。“重い人”や“軽い人”、生理(月経)の症状も十人十色だ。

■不調3週間続く
 「1カ月のうち、3週間はおなか痛い。生理は邪魔でしかない」。県内の公的機関で働く30代のみかさん=仮名=はため息をつく。
 生理になる2週間前から腹痛があり、胸の張り、むくみ、肌荒れなどの症状が現れて、生理が始まる。生理中は鎮痛剤を飲んでも効かないほどの生理痛に悩まされる。「お風呂で体を温めてみても、おなかを雑巾のように絞られる痛みで、1時間くらい身動きできないことがあった」
 経血の量も多く、吸収力最大のタンポンを使っても漏れるほど。仕事は外での活動や泊まりがけの出張もあり、漏れないようにスパッツを履いたり、寝る時にタオルを腰に巻いたりと工夫する。
 学生の頃から症状が重く、保健室でよく湯たんぽを借りた。20歳で婦人科を初受診。昨年から、出血を抑えるために低用量ピルを服用。経血量や痛みは減少した。「ピルを飲む前は、いつも気分が上がらず、外出がおっくうだった。イライラして人にも当たっていた。男の人は生理の苦労がなくうらやましい」
 一方、長崎市の30代検査技師の女性は学生の頃から「軽い方」。痛みがあれば鎮痛剤を飲んで対処する。出産願望はなく、「早く閉経してほしい。だけど更年期障害も怖い」と語る。

■休暇取得は少数
 佐世保市出身で元客室乗務員(CA)の30代女性=福岡市=は「仕事中はトイレを我慢することが多く、忙しいとトイレに行ってもナプキンの交換ができないこともあった」と言う。乗務中に体調が悪くなると途中で飛行機を降りることになり、状況によっては乗客に遅延などの影響が出る。「生理にかかわらず、体調が悪いときは早めに伝えることが大切」
 ながさき女性活躍推進会議の企画委員で長崎大ダイバーシティ推進センター長の吉田ゆり教授は「女性に生理があっても、仕事の業績やパフォーマンスに影響はないと原則考える。けれど、女性自身が『力を出し切れない』とか、『迷惑をかけてしまう』と思うようなら、そうした心理的な不調がパフォーマンスや意欲を下げる。それは女性活躍の大きな妨げになり、企業、組織にとっても非常にマイナス要因」と指摘する。
 生理で就業が難しい場合、企業によっては毎月生理休暇を取得できる。みかさんも一度、朝から痛みで動けなくなり、生理痛を理由に休んだことがあった。その時は上司の判断で生理休暇を取得した。現在は生理できつくなる日を予想して、事前に有給休暇を申請することもある。
 しかし、生理休暇を利用する女性は少ない。県人事課によると、県庁知事部局の女性職員約900人のうち、2019年は27人が延べ127回、18年は27人が延べ173回取得した。

■多様性の配慮を
 吉田教授は「看護師や教員などに多いが、使命感の強い人は、とても我慢してしまう。『私がいなければ』という思いは仕事のモチベーションを上げるので、その気持ちは大切。であれば、必要な時には代わりの人に引き継いで休めるように、業務の可視化などを進めるのが組織の仕事」と指摘する。
 一方、生理の大変さは男性をはじめ周囲に分かりづらい実情もある。吉田教授は「(社会や組織は)この問題に恐る恐る関わるのではなく、『あなたの業績やパフォーマンスについて信用している、だけど配慮すべきことは言ってほしい』という明確なメッセージを出さなければいけない。生理にかかわらず、いろんな特性のある人が多様性を持って生きていく社会を進めていくことがダイバーシティ。お互いを尊重して、思いやりを持って受け入れていくことが大事」と語る。


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