英国人ライター分析による2020年F1ランキング(10~4位)/期待外れの2チーム。中団首位をめぐる三つ巴の戦いに注目

 イギリス出身のF1ジャーナリスト、クリス・メッドランドが、2020年プレシーズンテストの現地取材をもとに、全10チームの現時点での序列を予想、各チームの相対的・絶対的な評価を行った。

 今回は第1弾としてランキング10位から4位を発表。追って、第2弾のトップ3チーム編をお届けする。

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 テスト期間が短縮された2020年、開幕前にどのチームが好調でどのチームが苦労しているのかを推し量るのはますます難しい。

 しかしコース上を走るマシンを実際に観察し、ラップタイムを分析し、各チームのスタッフと話をすることによって、自分の仕事に満足しているチームはどこなのか、満足できていないチームはどこなのか、ある程度の感触をつかむことはできる。

 テストを取材した結果から、10チームを相対的に評価し、ランキングを予測した。一方で、それぞれのチームの仕事ぶりを絶対的に評価し、10点満点で点数をつけた。つまり、「チームとしてはいい仕事をしたためいい点数を与えるが、相対的なパフォーマンスはよくないためランキングは低い」ということもあり、点数順にランキングを形成したわけではない。

 それでは10位から遡る形で紹介していこう。

■10位:ウイリアムズ/大きく進歩も最下位は抜け出せず

 2019年はマシンの完成がテスト初日に間に合わず、その上、他より大幅に遅かった。ウイリアムズにとって2019年は最悪なシーズンだったので、今年はそれより悪くなりようがないだろう。とはいえ、少しでも他とのギャップを縮めるために、この冬、ウイリアムズは大量の仕事をこなす必要があった。

 今年はマシンをテスト1日目に走らせ、いの一番にコースに出ていった。それだけでも進歩であり、今季型FW43が2019年型よりもはるかに一貫性あるマシンであることもすぐさま明らかになった。

 純粋なペースをみると、予選で中団勢と戦えるだけの力はないが、決勝ではライバルたちとポジション争いをすることができそうだ。それだけでも大きな進歩だろう。全体的に2019年より優れたマシンに思えるし、昨年よりもたくさんのポイントを稼げるはずだ。最下位から脱出できてはいないものの、ポジティブな兆候は見られる。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:7/10

ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)

■9位:アルファロメオ/パフォーマンスにも信頼性にも懸念

 プレシーズンテストで最も期待外れだったチームのひとつがアルファロメオだ。2019年のマシンは、たびたび中団トップの座を狙って戦う力を見せていたのに、今年のテストではすっかり後方に沈んでしまっているように思えた。

 コース上のマシンの動きにシャープさがなく、レースペースは、ウイリアムズよりはいいものの、大きな差はなく、なんとか挑戦できそうな相手はハースのみ、というありさまだ。

 また、キミ・ライコネンには時折、熱意のない様子が見られた。もちろん、キミがテストを好きでないことは分かっているが、少々不安な材料ではある。さらに、わずか6日間のテスト期間において、信頼性が万全ではなかったことも懸念される。

 中団は極めて接戦ではあり、チャンスはあるが、今年前進を狙えるはずのチームがいいスタートを切れなかったことは残念だ。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:4/10

2020年第1回F1プレシーズンテスト2日目:キミ・ライコネン(アルファロメオ)

■8位:ハース/苦しんだ昨年より前進した兆候あり

 最も判断しづらいチームのひとつがハースだ。彼らはテストでの走行距離では断トツの最下位だが、走りを見る限り、マシンは悪くなさそうなのだ。

 ハースは2019年、強力なスタートを切りながら、あっという間に転落、シーズンのなかでレースペースを改善することができなかった。そのため、今年は、一貫性のあるマシンを作り上げ、ポテンシャルを毎戦フルで発揮できるようにする必要がある。そのポテンシャルが昨年までよりも低かったとしてもだ。

 テストを見る限り、その重要な目標は達成していたようだが、信頼性の面で懸念がある。2019年シーズン終盤の状態と比較すると、わずかに前進した兆候があるが、昨年の今頃ほど好調には見えない。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:5/10

ロマン・グロージャン(ハース)

■7位:アルファタウリ/有利な条件を十分活用できず

 最も期待外れだったチームとして、アルファロメオとともに挙げたいのが、アルファタウリだ。彼らはレッドブル・テクノロジーのサポートを受けているため、昨年型のレッドブルのリヤエンドを使用できるし、ホンダのパワーユニット(PU/エンジン)は昨年以来大きく進歩したため、エンジンの要素を言い訳に使うこともできない。

 つまりアルファタウリは大きなポテンシャルのあるチームであるはずだ。それにもかかわらず、2020年型マシンはそれほど速くなさそうだった。走行距離は順調に稼いだが、ロングランペースは目を引くものではなく、ドライバーたちは昨年ほど強気の姿勢を示していない。

 2019年、彼らはランキング6位だった。今年は7位につけることはできそうだが、“トップ3以外のトップ”の座を本格的に争うのは難しいかもしれない。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:5/10

2020年第2回F1プレシーズンテスト3日目:ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)

■6位:ルノー/新コンセプト導入がプラスになるか

 これから紹介する中団の3チームはほぼ互角で、力関係を予測するのは極めて難しい。そのひとつがルノーだ。

 ルノーはテストが始まるまで、極力ニューマシンの情報を隠そうとしてきた。テストに登場したオールブラックのスペシャルカラーに彩られたマシンは、フロントエンドのコンセプトが一新されたものだった。大きな変更がなされたため、マシンを理解し、そのパフォーマンスを引き出すのに時間がかかり、テスト序盤には、マクラーレンやレーシングポイントと戦うのは難しいという印象を持った。

 しかしテスト終盤、R.S.20は非常に速いタイムを出し、ルノーは励みになる形でプレシーズンを締めくくることができたようだ。走行中のマシンを見ると、堅実なパフォーマンスを持っているように感じた。極めて優秀なダニエル・リカルドとエステバン・オコンがドライバーラインアップを形成していることも大きなアドバンテージであり、ルノーが選手権を6位でなく4位で終える可能性は十分ある。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:6/10

ダニエル・リカルド(ルノー)

■5位:レーシングポイント/速さと信頼性を併せ持つ“ピンクのメルセデス”

 プレシーズンテスト最大のサプライズのひとつが、レーシングポイントがデビューさせた“ピンクのメルセデス”だった。このマシンは走り出すやいなや、速さを発揮し、ライバルたちの目を引いた。

 昨年F1タイトルを獲得したマシンをベースに設計したことを考えれば、速くて当たり前、と思われるかもしれない。だが、レーシングポイントは、全くの新しいコンセプトを理解し、非常に大きな変更を行うという、大仕事を成し遂げなければならなかった。

 1ラップのペースは強力そうだし、レースペースも悪くない。レーシングポイントRP20の合法性に問題はなく、信頼性が高く、速さもあり、チームがプレシーズンにいい作業ができたことは間違いないだろう。“トップ3以外のトップ”の座をめぐってマクラーレンと激しく戦うことになるのではないだろうか。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:9/10

2020年第1回F1プレシーズンテスト1日目:セルジオ・ペレス(レーシングポイント)

■4位:マクラーレン/オールラウンドの強さを持つMCL35

 今年、最終的に“トップ3以外のトップ”に立つのは、マクラーレンだと私は考えている。マクラーレンがレーシングポイントに勝つと考える理由はふたつある。ひとつは、MCL35がオールラウンドに強さがあるマシンであることだ。テスト期間では、燃料を少なくした状態でのフルポテンシャルを披露しなかったが、レースディスタンスでの速さは感じ取ることができた。

 もうひとつの理由は、ドライバーラインアップだ。セルジオ・ペレスとランス・ストロールの組み合わせよりも、カルロス・サインツJr.とランド・ノリスのペアの方が優れていると私は考える。マシンはプレシーズンテストを通して一貫性を発揮しており、このマシンの助けを借りて、ふたりはいい結果を引き出すことができるだろう。

 第2回テストで導入されたアップデートは予想どおり機能し、マシンは高速走行時に非常にシャープに見えた。マクラーレンは、メルセデスとフェラーリに次ぐ走行距離を走り、昨年型を大きく進化させて作り上げたニューマシンの調整を順調に行った。

★プレシーズンテストまでの仕事の評価:8/10

カルロス・サインツJr.(マクラーレン)

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※第2弾「トップ3チーム編」は後日お届けします。

■著者:クリス・メッドランド。イギリス出身のF1ジャーナリスト。ESPN、Crash.net、F1iなどを経て、現在RACERと契約。formula1.comでの仕事も行っている。

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