漁業者の請求棄却 諫干即時開門訴訟 漁場環境悪化認めず 長崎地裁判決

請求が棄却され、「不当判決」などの垂れ幕を掲げる原告ら=10日午後3時7分、長崎地裁前

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査を巡り、諫早、雲仙両市の漁業者33人が国に即時開門を求めた訴訟の判決で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は10日、「潮受け堤防閉め切りによる環境変化が漁場環境を悪化させたと認められない」として、原告の請求を棄却した。漁業者側は控訴する方針。
 長崎県の漁業者らが2008年4月、「諫早湾内や周辺の漁業不振は干拓事業が原因」として同地裁に起こした訴訟は昨年6月、最高裁が開門を認めない判断を初めて示し、原告敗訴が確定している。今回、同地裁が請求棄却したのは諫早市小長井町や雲仙市瑞穂、国見両町の漁業者が10年3月と11年3月に提訴した訴訟。
 判決理由で武田裁判長は、アサリ養殖、タイラギ漁業、カキ養殖、漁船漁業、ノリ養殖の漁業被害と同事業との因果関係の判断基準を「潮受け堤防閉め切りによって、諫早湾内の漁場環境が悪化したといえるかどうかが問題」と指摘。湾内の潮流速の低下など「環境の変化」は認定したが、「潮受け堤防閉め切りによって湾内の赤潮の発生が増加したとは認められない」と退けた。
 その上で、漁業種ごとの漁場環境の悪化については「全国的にも漁獲量が減少していることに照らすと、全国的に共通する要因によって生じている可能性を否定できない」とした。原告側は10年12月の開門確定判決を国が履行しないことの違法性も訴えていたが、判断を示さなかった。
 10年の開門確定判決を巡っては、国が執行力停止を求めた請求異議訴訟の差し戻し審が福岡高裁で審理されている。

 ■被害は事実/馬奈木昭雄原告弁護団長の談話
 極めて不当な判決。漁業被害を受けているのは事実。漁民を負けさせる判決をどれだけ出そうが解決にはならない。

 ■適切に対応/江藤拓農相の談話
 国の主張が受け入れられたと理解している。引き続き一連の訴訟について、関係省庁と連携して適切に対応する。

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