【今後の展望】論点は漁業被害に 開門派 和解協議求める

 今回の長崎地裁判決について漁業者側弁護団は控訴する意向を示し、福岡高裁で審理中の請求異議訴訟差し戻し審と併合する形での和解協議を求める。今後、漁獲量の増減を巡り、国と漁業者側の主張の相違がより鮮明になりそうだ。
 国は2月21日の請求異議訴訟差し戻し審の口頭弁論で、諫早湾近傍部のエビ類の2017年の漁獲量が、1997年の約17倍の2480トンに急増したと主張。漁業者側弁護団は「利益率が高いクルマエビは低迷したままなのに、利益率が低いシバエビの増加を理由に回復したと言うのはおかしい。量でなく、漁業の質的変化を捉えなければいけない」と反論。国の主張の矛盾を追及する構えだ。
 今回の判決ではアサリやタイラギ、漁船漁業の漁獲量減少は「湾閉め切り以外の全国的に共通する漁場環境の悪化が要因」とし、「個別の漁業被害の有無を検討するまでもない」と原告の訴えを切り捨てた。
 「判決の論理の組み立て方がむちゃくちゃ。だから、高裁でひっくり返せる」。同弁護団の馬奈木昭雄団長は自信を見せる。堀良一事務局長も「論点は漁業被害で煮詰まってきた。国は追い詰められている。開門して、被害の実態を調べるしかない」と言い切る。
 長崎地裁では別の漁業者の開門請求訴訟、営農者らによる損害賠償と開門請求訴訟が審理中。馬奈木団長は「われわれを負けさせて黙らせようとしても、被害が続く限り、黙らせることはできない」と強気の姿勢を崩さない。

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