「大阪都構想」のおさらいをしようか。 IR汚職事件、新型コロナウイルスの影響は?

「大阪都構想」の再度となる住民投票は、今年11月1日にも実施される見込みとなっています。

昨年 4月に行われた大阪府知事選と大阪市長選。時の松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長が辞任し、入れ替えで立候補した「ダブル・クロス選挙」で、吉村新知事と松井新市長が誕生。「大阪維新の会」の盤石さを示すとともに、選挙結果を重く見た公明党の「都構想賛成」を取り付けた結果、大阪都構想は実現に向け再度、歩みを進めていました。

昨年、暮れには特別区設置法に基づいた大阪府・大阪市特別区設置協議会(以下「法定協議会」)で、同構想の大枠についての採決が行われ、維新・公明の賛成多数で了承されるなどしましたが、今年に入ってから風向きが怪しくなってきています。

1月に、国政政党「日本維新の会」で、長年、沖縄から地方をけん引する働きをみせていた下地幹郎元郵政民営化担当相が、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件に絡んで、除名処分。続いて、コロナウィルスの影響で、3月 22日に大阪市内で予定していた党大会が中止。加えて、「大阪都構想」の意味を大阪市民に改めて知らせるタウンミーティングなどの動きが止まっています。そのような状況で「大阪都構想」がどう動いていくのか、過去の経緯のおさらいを今回はする形で、今後を見据えてみたいと思います。

2008年2月、自民党大阪府連の推薦と公明党本部の支持を受け知事となった橋下徹氏は、2010年1月に2元行政の解消を目指して都構想を唱えました。そして、同年4月 に地域政党「大阪維新の会」を設立。2011年4月、統一地方選に挑み府議会で単独過半数、大阪市議会と堺市議会でも第1党となります。

同年5月の府議議会で議員定数を21名削減し88名にする条例を提案し可決、また都構想を本格化させるため「大阪府域における新たな大都市制度検討協議会」を設立する条例を成立させるなどしました。 大阪維新の会としても同年11月に「大阪都構想推進大綱」を作りました。これが同月に行われたダブル選挙で知事・市長の共通マニュフェストとなり「変えたい、と思うのであればまず自分たちから第一歩を踏み出さなければいけない」と橋下氏は都構想実現への一歩、と訴えます。そして、知事から市長に鞍替えした橋下氏、知事の後任として立った松井氏がともに当選することになりました。

この勝利で、大阪府と大阪市は共同で都構想の設計図作りを行うことになります。当時の竹山修身市長が指揮を執っていた堺市の参加こそなりませんでしたが、 「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」が2012年4月に立ち上がり、大阪維新の会の高い人気を背景に、同年8月には「大都市地域における特別区の設置に関する法律案」(以下「特別区設置法」)が国会で成立し「都構想」を実現する素地は整いました。そして2013年1月には4つの区割り案が完成、「法定協議会」が検討の場となっていきます。

法定協議会は同年2月から始まりますが、同年9月の堺市長選で維新候補が竹山氏に敗れ、堺市の不参加が続行されてから混乱します。区割り案否決から、橋下市長は「法定協議会」の在り方に対する民意を問う市長選を2014年2月に実施。この選挙は橋下氏の圧勝。

しかし、選挙で民意を確認後も「都構想」賛成派と反対派の「法定協議会」での攻防は続き、同年10月に完成した協定書案は大阪府市両議会で否決されました。
しかし、同年12月の衆議院議員選挙を境に公明党が「住民投票を行うことには賛成する」と、転じて2015年1月に再開された法定協議会で協定書は承認。同年3月に大阪市議会、大阪府議会でも承認され住民投票へと続く道筋が出来ました。

住民投票は同年5月17日に行われます。「投票しなければ賛成とされるので投票所に行く必要はない」などのデマが飛び交う中での投票は、反対が70万5585票で賛成の69万4844票を僅差で上回り、「大阪都構想」は頓挫しました。対案として「大阪戦略調整会議」がその後、行われましたが、実質的な協議はないまま同年11月に大阪維新の会にとって2度目のダブル選挙を迎えました。この選挙で松井氏が知事に再選、大阪市長には引退表明していた橋下氏に代わって吉村洋文氏と維新が勝ち、再度「都構想」を俎上に載せました。

大阪都構想とは 大阪府と大阪市がそれぞれ行ってきた広域行政を一元化し、地域のことを地域で決定できるようにする構想です。

① 大阪市を廃止

② 区長が大きな権限を持つ特別区(現在の案は4区)に分割

③ 大阪市が財源や行政権のうち広域行政に関わるものを大阪府に譲渡

④ 残りの市民税など地域行政に関わる財源や行政権を「特別区」に分割

府市の二重行政の解消、広範囲な地域を対象とした行政サービス、小さな自治体=特別区によるきめ細やかな地域サービス、を実現する新しい統治機構を作り出すのが狙いとなる構想です。区割りこそ、一時、5区案などが出ましたが、それ以外は、当初の訴えから今まで、内容的に大きく変わるものはありません。

今後は、11 月1日にも実施される、2015年以来、2度目となる住民投票に、実現の可否が委ねられていくことになりますが、国政政党の「日本維新の会」の全国展開の停滞。そして、「新型コロナウィルス」による世界規模での経済、そして、情勢への影響。しばらくは、先が読めない状況のまま、大阪都構想の住民投票の日に進んでいくことになります。

今回は、ここまでの《おさらい》をさせていきましたが、順次、新しい展開があれば、お伝えさせていただこう、と考えています。

(オフィス・シュンキ)

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