BTCC:急転直下、開幕3戦の延期を発表。無観客での“メディアデイ”はカローラ最速

 3月第2週の週末には「3月17日のシーズンラウンチ・テスト以下、開幕戦も予定通りのスケジュールで進行する」との方針を示していたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権と運営主体のTOCAだが、世界中で大流行する新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)への感染拡大対策で、新たな対応を打ち出したイギリス政府の方針転換を受け急転直下、開幕3戦の延期を決定した。

 BTCCシリーズは先週後半に声明を発表し、ボリス・ジョンソン首相により「屋外イベントに関する制限は、現在導入されていない」との行動指針に基づき「2020年シーズンを計画どおり進める」ことをアナウンスしていたが、その週末の間にも感染状況は刻一刻と変化。政府の最高科学顧問らの進言によりアプローチが変更され「屋外であれ、プロスポーツのような大規模イベントを開催するのに適切な時期ではない」との態度が優勢となった。

 イギリス政府は週の明けた3月16日(月)に改めて政府関係者を招集した緊急会議を実施し、パンデミック(世界的大流行)拡大とウイルス拡散圧力を軽減するため、屋外大規模集会へのサポートを撤回。また、一般市民に対しても「不要不急の旅行や外出を控え、社会的接触を可能な限り低減する」よう要請した。

 これを受け、TOCAは前日に急遽無観客開催を決定したシルバーストンでの恒例シーズンラウンチ『メディアデイ』が進行中の3月17日(火)に追加のステートメントを発行し、3月28~29日開幕予定だった開幕戦ドニントンパークを筆頭に、第2戦ブランズハッチ(インディ)、第3戦シルバーストン(ナショナルコース)の3ラウンドをキャンセルすると発表した。

 TOCA声明文の導入冒頭には「昨日(3月16日)、政府は更新されたコロナウイルス対策令を導入した」と記されている。

「これらには、すべての不要不急な社会的接触および不要不急の旅行を避けるよう一般市民に求めること、および大規模な集会やスポーツイベントへのエマージェンシー・サービス提供を撤回するとのアドバイスが含まれていた」

「TOCAはもちろん、政府の対策方針を完全に尊重する。レースのファン、エントラント、マーシャル、競技役員、運営メンバーだけでなく、イギリスの国家全体の健康は絶対的に重要なものだ。したがって、2020年シーズンのBTCCの開始を遅らせる必要があるため、開幕から3イベントの延期を決断した」

「明らかにCOVID-19の状況はつねに変化しており、誰にとっても対応が非常に困難だ。我々の確固たる意図は全10戦のフルシーズンを実行することであり、延期される全イベントの新たな変更日程を調整するため、サーキットや関係者らと密接に協力していく。これらは主要なスポーツイベントの最終的な再開に関して、さらに明確になったときに確定および発表されるだろう」

シーズンラウンチ・テスト前日に2020年仕様車を公開したチーム・ダイナミクス。引き続きHalfords Yuasa Racingとして参戦する
AmD Tuning.comの運営するThe Trade Price Cars RacingもアウディS3セダンBTCCのカラーリングを公開した
王者WSRのBMWはブラック、モーターベースの新型フォーカスはレッドと、大きくイメージチェンジ

■2年目のシーズンを迎えるトヨタ・カローラBTCCが最速タイムを記録

 依然としてイベントのスケジュール変更とシーズン再開は、政府が導入した新たな制限がいつ解除されるかに影響されるものの、例年に比べて控えめな状況での実施となったオフシーズン唯一の公式テストでは、トム・イングラムのドライブするトヨタ・カローラBTCCが最速タイムをマークした。

 シリーズに参戦する全29台が集結し、フィルミングに続いて実施された走行セッションでは、この2020年シーズンからエントリー名を改め『TOYOTA GAZOO Racing UK with Ginsters』とし、TGRのステータスを得たイングラムのカローラが躍動。午前最速だったジェイク・ヒルのFK2ホンダ・シビック・タイプRをわずか0.051秒差で上回り、1分06秒171でタイムボードの最上位を確保した。

 昨季のアウディS3セダンBTCCから一転、同じAmD Tuning.com陣営内で移籍し、新たに元F1ドライバー、マーク・ブランデル率いるMB Motorsportのシビックを走らせるヒルは、朝のセッションでいち早くターゲットタイムを設定すると、ライバルに対しコンマ3秒ものマージンを築いてランチブレイクへと入っていた。

 しかし両セッション最速の野望は午後のアタックラップでトラフィックに捕まったところで夢と消え、惜しくも総合2番手。その背後3番手には、0.319秒差でチーム・ダイナミクスのダン・カミッシュ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)が続き、2019年ドライバーズランキング3位からの雪辱を期す好スタートを切った。

 また、4番手には2020年投入となる新型モデル、第4世代フォード・フォーカスSTのステアリングを握るインディペンデント王者ロリー・ブッチャーが続き、5番手に4冠王者コリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/ウエスト・サリー・レーシング)、6番手にもブランニューモデルのヒュンダイi30 Fastback N Performanceをドライブするセナ・プロクターが続いている。

スバルからインフィニティにスイッチした2017年王者アシュリー・サットンは、トラブルを抱えながら9番手
マーク・ブランデル率いるMB Motorsportのジェイク・ヒルが、テストを牽引するスピードを披露した
TGR体制となったスピードワークス・トヨタのトム・イングラムが、幸先良くトップタイムを奪取した

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