被爆者なき時代に備え 講話用の証言ビデオ作製へ 長崎平和推進協

 公益財団法人長崎平和推進協会(横瀬昭幸理事長)は新年度の被爆75周年事業の一環として、被爆体験講話で活用できる被爆者の証言ビデオを作製する。講話予定の被爆者が体調不良などで急きょ参加できないケースが近年目立つとして、代替策として備えておく。
 被爆者のいない時代を見据えた事業。協会は、将来の講話の在り方について「証言ビデオを流しながら、説明員が補足する形になるだろう」とみている。
 協会は、修学旅行生や県内の児童生徒向けに2018年度で約1200件(受講者約14万7千人)の講話を実施した。語り部の会員は約40人いるが、体調不良や入院、日時の間違いで急きょ参加できない事例が年間10件ほどあり、協会は別の会員に頼むなどして、しのいでいる。今後も同様の事例は増えるとみている。
 新年度は、これまでに撮りためてきた会員の証言映像などを基に、男女数人ずつ分を講話用に編集する。映像の構成や時間、具体的な活用法は今後検討する。
 75周年事業ではほかに、昨年末に解散した朗読団体「夏の会」のメンバーだったベテラン女優の渡辺美佐子さんや高田敏江さんらによる原爆朗読劇を8月30日に長崎市で開く。
 夏の会は08年から、被爆者の手記に基づく朗読劇「夏の雲は忘れない ヒロシマ・ナガサキ一九四五年」を全国で公演してきたが、メンバーの高齢化に伴い解散した。今回は特別編として長崎に軸足を置いた脚本とする。

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