株価が下がっても利益は出せるの?

みなさん、相場を見るのに疲れていませんか?日経平均やNYダウなど世界各国の株価指数が急落しており、「〇〇が過去最大の下げ幅を記録」などといったニュースの見出しを目にすることも多くなってきました。

先日、投資を始めたばかりの人から、既に投資歴が20年以上にもなるようなベテラン投資家も交えて投資談義をしていました。

ベテラン投資家がこの下落局面でも「売っているから大丈夫」と話すと、投資歴の浅い方から「どういうことですか?」と質問が出ました。

今回は「株が下がっても利益はだせるのか」という内容を解説しようと思います。


下落局面でも利益を出す取引とは

この数年で投資を始めた投資家の多くが、インデックス投信を積み立てたり、個別株を買っていると思いますが、「買う」という選択肢だけだと、今回のような下落局面ではひたすら評価益が減ったり、評価損が膨らんでいくので、とてもつらいと思います。

今回の下落局面は非常に強烈で、米国の株式市場では16日にNYダウが1日で2,997ドルも下落しました。取引時間中には下げ幅が3,000ドルを超え、前週の12日に記録した過去最大の下げ幅(2,352ドル)を塗り替えました。米国だけでなく、日本を含めた世界各国の株式市場が急落に見舞われています。

前出のベテラン投資家の「売っているから大丈夫」との発言を紹介しましたが、それはどういうことなのでしょうか。個別株であれば証券会社から株券を借りてそれを売ったりする「信用取引」の投資手法もありますし、株価指数であれば「証拠金」と呼ばれる担保を差し入れて、売りから入って安くなったところで反対売買をして利益を出すことが可能です。これらの取引を活用すれば、株価の下落局面でも利益を出すことが可能になります。

たとえば、日経平均は今月の急落で2016年後半からの上昇分を消してしまいました。そう考えると、タイミングさえあえば、「売り」の方が効率的に利益が上げられる可能性が高いこともわかります。

過剰なリスクをとらない方法

質問をした投資歴の浅い投資家に「信用取引」や「先物取引」の存在を教えたところ、「非常に危険な取引という印象がある」との反応が返ってきました。

おそらく、これらの取引がレバレッジをかけるため、投資した以上の金額がなくなってしまう印象があるのでしょう。その感覚は持ったままでいいと思います。

しかし、昨今はさまざまな金融商品が生まれており、「売り」から入れるETFや投資信託もあります。これらの商品は「ベア」や「インバース」という言葉が名前に入っていることがほとんどなので、すぐに探すことができるかと思います。更に、最近ではレバレッジまでかかっている「4.3倍ベア」や「ダブルインバース」などの金融商品もあります。

これらはETFや投資信託ですから、追加証拠金など投資金額以上のお金がなくなることもないため、普段通り個別株や投資信託を買う要領で投資することが可能です。

さて、「売り」という株価の下落局面でも利益を出す投資手法を紹介しましたが、勘違いしないでいただきたいのは、決して「売り」をしましょうという推奨はしていません。

この連載でも何度も言っていますが、将来のことは誰にもわかりません。タイミングが合えば売りの方が効率よく利益を上げられる可能性が高いのは前述の通りですが、そんなにうまくはいきません。あくまで、そのような選択肢もあることを知ってもらいたいのです。

利益は出なくてもマイナス幅を減らす方法

投資談義のなかで、もう1つ出た話があります。他のベテラン投資家は「売り」はやっていないけど、個別株でポートフォリオを組んでいるが、株価指数ほどは下落していないという話題です。

その投資家は投資している金額が非常に多く、かなり多くの銘柄数を保有していますが、彼のポートフォリオでは何が起きていたのでしょうか。

インデックス投資の弱点として指摘されることもありますが、インデックスに投資することは、そのインデックスを構成する全ての銘柄へ投資することを意味します。しかし、インデックスを構成する銘柄が多ければ多いほど、市場平均よりも大きく下がる銘柄にも多く投資することになってしまいます。

その投資家は基本的にはインデックスに近い動きをするようなポートフォリオを組んではいるものの、この局面で大きく売られそうなセクターに属する銘柄は早目にポートフォリオから外していたということでした。

たとえば、今回のコロナ問題について考えてみれば、小売業や観光業などは大きなダメージを受けることは容易に想像できるかと思います。そのようなセクターに属する銘柄を外して、その分の金額を他のセクターの銘柄に投資することで、より改善したインデックスを自分で作り出したと考えるとわかりやすいですね。このような作業を専門的に行って再構築されたインデックスを「エンハンスト・インデックス」と呼ぶこともあります。

資産形成の基本を忘れるべからず

さて、「売り」や「エンハンスト・インデックス」など、これまでの記事では触れてこなかったような話をしてきましたが、前述の通り、必ずしもこれらを推奨しているわけではありません。この連載はあくまで投資未経験者や投資初心者に向けたものですから、「そういうものもあるんだ」という気づきがあれば十分です。
将来のために資産形成をすることが目的ですから、長期目線で投資対象を十分に分散し、機械的に積み立て続けるという基本を忘れないようにしましょう。

毎日のように株式市場が乱高下していると、ついつい相場の動きが気になるのはわかりますが、基本に立ち返ればこんな時でも相場を見ないぐらいのスタンスが正しいはずです。

あくまで投資は人生においては脇役であり、主役になるべきものではありません。目まぐるしい相場展開に惑わされず、基本に忠実な投資行動を心掛けましょう。

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