中学生も関与 「アポ電強盗犯」が高齢者以外を狙う可能性

このところ、詐欺の前触れ電話をかけた後の強盗事件が増えています。しかも最近は以前の手口に比べて、かなり短絡的なものに変わりつつあります。今は新型コロナウィルスの影響により旅行など長期での外出をする機会が減っていますので、私たちの大切な財産が奪われないためにも、この種の凶悪犯罪に警戒する必要があります。


今年に入り、犯行が短絡的に

昨年末より、詐欺を行うための下準備の電話、いわゆるアポイント電話(アポ電)をかけた後に、強盗に入る事件が立て続けに起きています。

昨年12月には、東村山市の80代の高齢夫婦の家に深夜、二人組が窓を壊して押し入り470万円が奪われています。この事件が起こる1週間前に警察を騙り電話があり、世間話から自宅にたくさんのお金があることを知られてしまいました。この時の強盗犯2人は翌月に逮捕され、後にもう1人犯人が捕まっています。3人が一組になって犯行に及ぶ手口は、昨年初めから起こっているアポ電強盗に共通するものですが、今年に入り少しずつそのやり口に変化がみられます。

昨年初頭に起きた事件では、痛ましいことに緊縛された高齢者が亡くなる事態も起きていますが、この頃のアポ電強盗は用意周到に臨んでの犯行でした。警察を騙って家のドアを開けさせて、正面から堂々と押し入り、高齢者を縛り上げてお金のありかを聞き出す。そして、逃げる際には玄関のインターフォンを取り外すなどして、証拠を残さないようにしていました。アポ電を通じてお金がどのくらいあるかなどの入念な下調べをしていたためでしょう。この時の事件では2千万円、400万円と奪われたお金も高額でした。

ところが今年に入って起きたアポ電強盗をみると、以前のような用意周到さがあまりみられません。その顕著な例が今年2月に起きた事件です。70代の高齢男性の住む家に男が押し入り「金を出せ」とナイフを突きつけてきました。しかしこの時、同居していた息子らが抵抗して、犯人ともみ合いになり、何も取らず逃走しました。この時も前日に警察を騙って「偽札の捜査をしている」と資産状況を聞き出すアポ電がありましたが、今回のケースがこれまでと違うのは、前日に電話をかけて家族が同居しているか否かの把握も十分にせず、すぐに犯行を行っている点です。しかも、これを一人で行い「ちょっとやってみるか」といった犯行の短絡さが伺えます。

今年3月の深夜にも、男らが窓を破って押し入り60代の女性を縛って、約1万6,000円を奪い逃走しています。この女性宅には不審な電話が何件もかかってきましたが、女性は電話を取ることがなかったといいます。ですので、おそらく犯人側は女性が一人暮らしという情報はつかんでいたかもしれませんが、財産が家にどのくらいあるのかを把握しないままに押し入ったのでしょう。結果、有り金だけを奪う形になったと思われます。

今年1月には、過去に詐欺被害に遭ったことのある高齢夫婦宅に男2人が押し入っていますが、男らが金を出すように言っても、夫婦は要求に応じず、結局、何も取らずに逃走しています。これまでならば、押し入った時に犯人側の要求を呑むような性格かどうかも、アポ電でチェックしていたと思いますが、それをしなかったためだとみてよいと思います。

当然、強盗の実行犯の背後には、アポ電をかける詐欺組織の指示があります。ですが、今はおそらく相手の状況把握など二の次にして、とにかく数多くの家に押し入り、金を取ろうとしているのではないかと思われます。これまでのようなターゲットを絞り、入念に準備して行う以外の手口が増えているということは、高齢者のみならず、比較的若い世代や高齢者と同居している人たちも凶悪犯罪に巻き込まれる可能性は高くなっているといえるかもしれません。

実行犯はSNSの裏バイトなどを通じて集められており、初対面同士で寄せ集めの犯罪者集団です。今年1月、深夜に高齢夫婦の家に押し入ろうと敷地に入ったところ、人に声をかけられて逃げた男ら4人がすでに逮捕されていますが、このなかには中高生が3人もいました。逆に、こうした寄せ集めの犯罪集団は強盗行為に慣れていないからこそ、何をするかわからない怖さがあります。

新型コロナウィルス騒動で、在宅率が高まり、詐欺のリスクが高いことは以前にもお話しましたが、今は空き巣もできない状況です。ですので、家に人がいることがわかっての犯行の増加が懸念されています。また経済活動がストップして、お金に困窮する人が今後さらに増えてくれば、安易にSNSで犯罪に手を染める人も出てくるでしょう。と原稿を書いていましたら、新型コロナ感染の影響で舞台照明などの仕事がキャンセルになってしまい、お金に困ってキャッシュカードを騙し取る「受け子」をした50代の女性が逮捕されています。今後も、こうした犯罪に染める人は出てくるものと思われます。

私たちの大切な財産を守るための防犯対策を、社会全体で考えなければならない時期に来ているといえます。

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