読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、3年前に住宅ローンを組んだという33歳のパート主婦。繰上げ返済をしつつ、子ども2人の教育費も貯めていきたいといいます。どのようにバランスを取ればいいのでしょうか。FPのたけやきみこ氏がお答えします。
教育資金と繰上げ返済、バランスの取り方を教えてください。3年前に住宅ローンを組みました。早く完済したいと思っているのですが、なかなか貯まりません。
子どもは、できれば二人とも大学まで奨学金なしで進学させたいと考えています。本人が希望するなら、高校から私立も視野に入れられたらと思いますが、家計的に無理そうなら高校までは公立に進んでほしいと思っています。児童手当は全額学資保険にまわしていて、その額は貯蓄には入れていません。
近くに頼れる親がいないため、私は夫の扶養内でパートをしています。子どもが高学年または中学生になったら正社員で働こうかとも思いますが、できれば正社員ではなく、このままパートでいたいと思うのが正直なところです。
地方在住のため、車1台は必須です。現在はワゴン車と軽自動車の2台持ちです。現在のワゴン車が5年目のため、買い換えは5年以上先の話になりますが、またワゴン車を購入したいと考えています。もう1台の軽自動車は昨年キャッシュで購入したばかりなので、10年ほど買い替えする予定はありません。
現在は年間100万円前後の貯金ができています。このままの貯蓄ペースで、繰上げ返済をしながら教育資金を貯めることは可能でしょうか。また繰上げ返済のタイミングを教えてほしいです。アドバイスお願いします。
<相談者プロフィール>
・女性、33歳、既婚(夫:33歳、会社員)
・子ども2人:6歳、4歳
・職業:パート
・居住形態:持ち家(戸建て)
・毎月の手取り金額:35万円
(夫:26万円、妻:9万円)
・年間の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出目安:30万円
【支出の内訳】
・住居費:7.3万円
・食費:4.5万円
・水道光熱費:2万円
・教育費:3万円
・保険料:3.5万円
・通信費:1万円
・車両費:4万円
・お小遣い:3万円
・その他:2万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:5万円
・ボーナスからの貯蓄額:50万円
・現在の貯蓄総額:1200万円
・現在の投資総額:なし
・現在の負債総額:2400万円(住宅ローン:金利0.97%、返済期間35年)
たけや:マイホームを購入されたとのこと。やはり住宅ローンの返済については気になりますよね。一方で、お子様たちの教育費も考えなくてはなりません。その狭間で、悩まれてしまうのは当然です。
それでは、返済を優先すべきか、それとも貯蓄を優先すべきか。はたして両立は可能なのでしょうか。
地方の場合は自宅外通学の可能性も、教育費はMAXの額で想定を
教育費はどうしても学費の額に目が行きがちです。しかし、高校や高校卒業後の進学先が自宅通学とは限りません。
地方にお住まいの場合、高校から他県の学校へ進学し自宅外から通学する可能性についても想定しておきましょう。高校から自宅を出る場合は、高校の学生寮などに入ることになります。また、高校卒業後に大学や専門学校に通うために、学生寮やアパート・マンションに住むことになるでしょう。この場合には、学費とは別に、家賃や食費などの生活費が必要となります。
例えばですが、お子様が東京の大学に通うことになったと想定します。家賃や食費代など諸々の生活費を10万円と見積もると1年間で120万円、4年間で480万円です。お子様1人当たり、学費以外に約500万円を準備しておく必要があります。
教育費におかれましては、お子様たちがいつまで自宅通学をするのか見通しを立ててみましょう。
繰上げ返済と教育費の準備、どちらを優先させるべきか?
住宅ローンを早く返済したいが、貯蓄が思うように貯まらないと悩まれています。繰上げ返済と教育資金準備、これは、真逆の目的になっています。つまり、早く返済をしてしまいたいが、一方で貯蓄もしたい、というのは相反していますよね。
現在は年間100万円貯蓄できています。お子様がまだ小さく、お金が最もかからない時期だからです。今後、塾などの費用が必要になり、このまま収入が変わらなければ、貯蓄額は一気に減っていきます。
繰上げ返済についてアドバイスをというご相談ですが、繰上げ返済をすると、返済したお金は二度と戻ってきません。ですので、よく考えてから行動してほしいのです。
ですが、残念なことに繰上げ返済は、早ければ早いほど利息の軽減効果があります。したがって、繰上げ返済を効率的に行うなら早い時期に、しかし、その分、手元の資金は貯まらないということになります。
余談ですが、わが家の住宅ローンは、返済方法を元利均等返済ではなく、元金均等返済にしています。元金均等返済は、返済額のうち元金が均等(一定)になるため、毎回の返済で確実に元本を返済していくことができます。ですので、返済額も毎月減っていきます。“勝手に繰上げ返済”というネーミングを付けて、あえてこの方法にしています。
そして、住宅ローンには団体信用生命保険が付帯されています。万が一の場合は、ローンは残らないのです。つまり、生命保険に加入しているということを忘れてはいけません。
また、注意点として、住宅ローン控除が適用される期間は、繰上げ返済によって借入金額が減ってしまうと、税額控除される額も減ってしまいます。
順番からすると、まずは、お子様にかかる費用のMAXの金額を試算します。繰上げ返済の検討はそれからです。
予測できないからこそ、常にリスクヘッジを
ご主人の扶養でいらっしゃるとのこと。お子様がまだ小さいため、フルタイムでバリバリ働くのは厳しいのでしょうか。働き方に対する考えは人それぞれですので、正解はありません。
将来、家計が危機的な状態にならないとは限りません。ご主人は30代で現在は健康に対する不安はないかもしれません。ですが、今後お子様たちが大学等に進む15年後には、ご主人の年齢は50歳手前。この時期に、お子様たちの学費が最もピークを迎えます。
そこで、50歳を迎える年齢時の体力や健康状態について想像をしてみてください。また、仕事については、どうでしょうか。今のまま変わらず仕事を続けていけるでしょうか。
想像ができないからこそ、あらゆるリスク管理をしてほしいと思います。ご主人の収入だけに頼っていると、もし、その収入が減収となったり、途絶えてしまったら大変です。正社員になれるチャンスがあるのでしたら積極的に検討をされてはいかがでしょうか。
繰上げ返済をしながら教育資金を貯めることが可能かどうかは、収入を増やすことが成功のカギです。また、繰上げ返済のタイミングは、教育費の見通しを立てて、繰上げ返済の準備ができてから検討をしましょう。