どちらが先に倒れるか… 在宅医療支えるショートステイ 【連載】大空といつまでも 医療的ケア児と家族の物語<13>

瑞佳さんは短期入所中の注意事項について写真や図を付けて分かりやすく説明している=諫早市小長井町、むつみの家

 諫早市小長井町のみさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家。昨年末、ショートステイ(短期入所)のため訪れた森本裕也さんは慣れた環境に安心し、ベッドの上で笑顔を浮かべていた。
 母親の瑞佳さんは裕也さんの頭上のベッド柵や壁に、入所中の注意事項を書いた紙をテープで貼り始めた。「気管内が痰(たん)で閉塞(へいそく)しないよう30分に一度は吸引する」「極端な横向けは高緊張になり危険」。写真や図も付けて裕也さんの姿勢やクッションの置き方を分かりやすく示す。
 自宅から持ってきた薬の袋や経管栄養剤の缶には使用日をあらかじめペンで記入。職員は着替えなどの持参品をすべて所定の用紙に書き込んでチェックした。主治医が診察し、看護師は全身状態を見て傷などがないか確認する。入所手続きをすべて終えたのは到着から約1時間後だった。
 「自宅では褥瘡(じょくそう)ができないよう体の向きを変え、たんの吸引も頻繁にしている。いつ状態が悪化するか気が休まらず、夜も眠れない。ショートステイを利用できなければ、私と裕也のどちらが先に倒れるか分からない」と瑞佳さんは言う。
 むつみの家には介護者の負担を軽減するための「レスパイト」用のベッドが5病棟に各2床の計10床ある。障害の重さに応じて使えるベッドが分かれ、2病棟4床で医療的ケアが必要な人を受け入れている。2018年度は全体で53人が延べ1846日利用。施設周辺の県央地区だけでなく、長崎、佐世保、南島原、佐賀県からも訪れた。
 福田雅文施設長は「障害のある子を抱えきれる力が家族にないと在宅で見ることは厳しい」とレスパイトの必要性を説明。最初は母親と子どもに一緒に泊まってもらう。その後、子どもが一人に慣れるまで母親に別室で待機してもらい、いつでも会えるようにすることも。職員が持参品の使い方を教えてもらい、できるだけ家庭と同じ環境で過ごせるよう努める。
 短期入所を始めた十数年前は寝間着の着せ方が家庭と違うと母親に怒られたこともあるが、福田施設長は「家族の思いを素直に話してもらうことで信頼関係構築につながる」と言う。
 県によると、医療型の短期入所は県内5施設に約40床。医療、福祉関係者の間にはまだ不足しているとの認識がある。むつみの家は1日平均で10床のうち半分程度は空いているが、医療的ケアの病床がすべて埋まっていることもある。そんな時、瑞佳さんは島原市の自宅からむつみの家より遠く、車で1時間15分ほどの長崎病院(長崎市)を利用するが、「島原市内にも1カ所くらいあれば」と願う。

【次回に続く】
※この連載は随時更新します。

 


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