映画『kocorono ─the documentary of bloodthirsty butchers─』こんな時、あの人だったらどうするだろう? #とにかく癒されたいときのカルチャー

「こんな時、あの人だったらどうするだろう?」

世の中が未曾有の出来事に対峙している昨今、ふとそんなことを考える。

ぼくの場合、指針となるのはやはり公私ともにお世話になった数少ないバンドマンの一人であるbloodthirsty butchersの吉村秀樹氏その人なのです。吉村さんならこんな時どうしてるかなあ? 教えて吉村さん。なーんて言っても吉村さんは7年前の5月に亡くなってしまったので何も答えてくれません。あれだけ濃密だった吉村さんとの記憶もだんだん薄れていくし、やりとりしていたLINEのデータはアップデートの時にうっかり消えてしまいました。わがままだけど人一倍気づかいの人でもあった吉村さんに会いたくなった時、ぼくが思い出すように見るのは川口潤監督の映画『kocorono』です。

公開時点で四半世紀に及ぶ活動歴があり、日本の至宝とまで言われたバンドにもかかわらず思うように活動を存続できないジレンマを抱えていた時期のブッチャーズを捉えた本作は、どれだけ困難に見舞われてもバンドを最優先に続けていこうとする吉村さんの不屈の精神が描かれています。その一方でバンドと同じくらい日常生活が大事という考えの射守矢さんがいて、小松さんにもひさ子さんにもバンドに対してそれぞれ考えがある。つくづくバンドとは社会の縮図だと思うし、バンドが奇跡のバランスで続いているを改めて痛感します。

こんな時、吉村さんならどうしたかな。公開直後のネイキッドロフトのイベントみたいに弾き語りの配信をしたかもしれない。自粛の時でも新曲づくりに余念がなかったもしれない。ただひとつ確かなのは絶対にバンドを続けていくことを第一に考えていただろうし、決してユーモアを忘れなかったであろうこと。真夜中にひで子ママに変身してDJタイムをツイートしているでしょう。そんなあれこれを、生前の映像を見ていると思い出します。映像の力ってすごい。

余談ですがインタビュー記事を読むと故人の在りようをまざまざと思い出すことがあります。ぼくの編集したブッチャーズ本(『bloodthirsty butchers Rooftop Anthology 1999~2014』)を怒髪天の増子さんが読んで「よーちゃんのことを思い出せた」と言ってくれたことがあるのでオススメです(宣伝かよ)。(Rooftop:椎名宗之)

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