長崎県内離島、観光客を警戒 医療資源乏しく 渡航自粛求める動き

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、県内の離島では観光客など人の往来を警戒する動きが広がっている。医療資源が乏しく、ひとたび感染事例が発生すれば混乱を来しかねないからだ。佐世保市は宇久島などへの渡航自粛を表明。対馬市でも観光業界から「来島自粛」を求める声が出ている。
 佐世保市は14日付で、観光目的での宇久島への渡航自粛を呼び掛けるメッセージを市のホームページに掲載。島との航路がある佐世保市と博多港のターミナルにも張り紙を出す。島内には診療所しかなく、感染者が発生した場合に対応が困難なことや、島民の半数以上を占める高齢者への感染防止が理由。16日には、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「黒島の集落」がある黒島、高島でも同様の対応をする予定。
 市は住民に対しても、不要不急の島外への外出や島外に住む親族の来島を控えるよう要請。宇久島離島活性化協議会の宮崎吉男副会長は「離島にとって人の往来は大事だが、命に関わる問題で致し方ない。終息を祈るばかり」と話す。
 対馬市では市内の宿泊、飲食業者などでつくる対馬観光物産協会が新型コロナの影響を把握するアンケート調査を9~13日に実施。7割超の事業者が「観光客の受け入れを自粛すべき」と回答した。飲食店経営の男性(50)は昨年からの日韓関係悪化に加え、新型コロナの影響で売り上げがゼロになったが「島内で感染者が出れば地域社会が崩壊する」と自粛に賛成。西護事務局長は「家族経営の事業者が多いため身内の感染を恐れている。アンケート結果を基に市と対応策を協議したい」とした。
 県内では既に、北松小値賀町が観光目的での来島自粛を要請。新上五島町は緊急事態宣言の対象地域からの家族の帰省などを控えるよう町内放送などで周知している。

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