50代男性「妻がうつで休職後、支出が増えて貯金ができない」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、妻の休職をきっかけに支出が増えたという50代の共働き夫婦。2人とも退職金が出るので、これまで貯金に力を入れてこなかったといいますが、貯まらない現状に不安を感じているといいます。FPの横山光昭氏がお答えします。

夫婦二人暮らしなのに、毎月貯金をするということができません。ですから当然、お金がなかなか貯まらず、老後資金がきちんと貯められるのか心配です。

夫婦の手取り収入は約55万円。以前はきちんと貯金ができていたのですが、妻がうつ病になり、1年休職したところ、その間に支出が急速に増えてしまいました。時間ができたので、仕方がないと当時は思っていたのですが、復職後もその支出状況が変わらず、不安を覚えます。今のままでは、老後生活に入る前に破綻してしまうのではないかとさえ思ってしまいます。

家計管理の仕方は夫婦別々で、担当制です。夫の私が主に固定費を、妻は食費など日々の生活費を担当としています。収入の管理は別々ですが、収入額は毎月自然に知らせ合うことが習慣になっており、互いに残ったお金を共通の通帳に入れていく形で夫婦共有の貯金を作っています。

互いにしっかりと退職金が出る職場なので、貯金への取り組みは今までその程度しかしてきていません。住宅ローンも残っているので、今のまま生活費がかかりすぎて貯金が増えない状況が続くと、本当にまずいと感じています。どう改善していくべきか、妻にどう話していくべきか、教えてください。

<相談者プロフィール>

・男性、52歳、既婚(妻:50歳、施設職員)

・子ども2人:独立し別世帯

・職業:会社員

・毎月の手取り金額:55万円

(夫:32.6万円、妻:22.4万円)

・年間の手取りボーナス額:180万円

(夫:120万円、妻:60万円)

・貯金:420万円

・退職金の見込み額:3700万円

(夫:2200万円、妻:1500万円)

【支出の内訳(53.8万円)】

・住居費:19.8万円(住宅ローン、修繕積立金、管理費、駐車場代)

・食費:9.2万円

・水道光熱費:3.6万円(2万円強が電気代)

・通信費:2.6万円

・生命保険料:2.4万円

・交通費:1.2万円

・交際費:1.5万円

・お小遣い:8万円(2人分)

・その他:5.5万円


横山:ご相談ありがとうございます。働く方のうつ病は多いので、休職も仕方がない時期があります。ですが、それにより支出が大きくなり、復職後も戻らないということは問題ですね。改善策を考えてみましょう。

妻の休職中に増えた支出を明らかに

休職すると給与が出なくなることが多いもの。その間は健康保険からの「傷病手当金」を受けて療養しながら暮らすことになります。支給額は大雑把にみて健康保険料を決める基準となる「標準月額報酬」の2/3となりますから、世帯の収入としては減ってしまいますね。

その減収が貯金ができなくなった原因とも考えられますが、復職して通常の給与をもらうようになっても変わらないというのであれば、やはり明らかに増えた支出があるはずです。そこをまず、把握したいものです。

休職中の買い物で変化したことはなかったでしょうか。相談者さんのお宅では、奥さんが食費など日々の支出を担当していたということから、食材や日用品などの買い物は、妻中心であったと思われます。まずはこの支出の変化を考えてみましょう。

ありがちなのは、体調の悪い妻が料理ができなくて、外食やデリバリー、中食などの多用によって食生活が変化して支出が増えたり、時間を持て余すようになったことで、口さみしくて間食するおやつ代などが増えるというケースです。

また、洗濯も十分ではなくなり、クリーニングに出すことが多くなったということもあるかもしれません。

こういった生活の仕方の変化は、次第に習慣化してしまうことがあり、元に戻しにくくなりがちです。暮らし方を見直し、妻の体調を見ながら、無理のない範囲で少しずつ以前の支出に戻していく努力が必要でしょう。

車は本当に必要? 休職以前の支出にもメスを入れる

生活の仕方は長い時間の中、変わっていって当たり前のものです。妻の方で支出の見直しをしながら、今まで当たり前にかかっていた相談者さんが管理している固定費部分も見直しをしてみましょう。

住居費には駐車場代が含まれていますが、毎月の支出には自動車に関連した支出が含まれていません。これは、自動車をお持ちになっていても乗っていない、使っていないということかと思います。そうであれば、自動車の保有の仕方を検討してみてはいかがでしょう。

レンタカーもしくはカーシェアリングで足りるのであれば、保有している必要はありません。保有していると駐車場代がかかりますし、今は年払いしているであろう任意保険、毎年の自動車税、2年に一度の車検代など、支出がかさみます。

今の使い方で不便がないということでしたら、手放してしまい、余分な固定費をかけないことも必要だと思います。柔軟に検討してください。

また、毎月の電気代が高いことも気になります。オール電化とまではいかないようですし、必要のないときはエアコンや電気を消すよう、暮らし方を変えてみるとよいでしょう。神経質に消してまわるのではなく、次の行動に移る時にもう使わないと思えば消すというだけでよいのです。

また、スマートフォンも使い方に合わせ、契約内容を見直してみてもよいでしょう。

退職金があっても油断禁物! 老後資金は計画的に貯める

老後資金は退職金があるから大丈夫と考える人は多いものです。それがご夫婦分になれば、かなりまとまった金額になるので、貯金することがおろそかになる人も時々いらっしゃいます。

定年後にまとまったお金が入ることは安心材料ですし、気持ちはわかります。ですが、住宅ローンが残っていて退職金で完済しようするとその分減りますし、なんといっても今は老後期間が延び、かつ年金受給額は1ヵ月の生活費に満たないケースが多いことから、蓄えは多く持っていてもよいと思います。

昨年(2019年)は老後資金2000万円不足問題が話題になり、生活費の補填分として2000万円ほど準備できるとよいだろうと言われていました。ですが、相談者さんたちご夫婦がその2000万円の補填があれば大丈夫かというと、そうではありません。

住宅ローンが減ると35万円ほどにはなるのでしょうが、現状50万円以上かかっている生活費が老後も続くとなると、年金受給額との差額はいくらになるのかを考えておきましょう。今よく聞く老夫婦の年金受給額の平均は妻が専業主婦のモデルなので、共働きの相談者さんご夫婦はもっと多くの年金が受給できると思います。50歳を過ぎると具体的な見込額がねんきん定期便に書かれてくるので、それを参考に一度計算してみましょう。

その差額が、90歳、100歳まで続くといくら必要になるのか。さらに老後の医療、介護費や住居のリフォーム代などを考えると、生活費で必要な金額に1000万円以上加えた額が必要になるのではないかと考えています。

共働きでいられる期間はもう10年を切っています。定年延長や再雇用の充実など、今後変わってくる部分もあるのでもっと長く働けるかもしれませんが、働けるうちに、できるだけ蓄えを増やしておくほうが懸命です。

ただ、今を楽しんではいけないというわけではありません。今を楽しみつつ、支出にメリハリをつけて貯めることも頑張って欲しいのです。そうしていくと、老後破綻などにならずに暮らしていけると思います。

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