保険で安心を求めたらキリがない…シングルマザーはどこまで備えるべき?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、3歳の子どもを抱えるシングルマザー。毎月赤字ですが、子どものことを考えると、万が一に備えて保険を増やすべきか悩んでいるといいます。FPの氏家祥美氏がお答えします。

昨年の夏にシングルマザーになりました。連帯債務で借りていた住宅ローンは実父に保証人になってもらい、単独債務に変更し、戸建て住宅に子どもと2人で住んでいます。現在時短勤務中で、収入はフルタイムより50万円程度少ない状態ですが、子どもが3歳と小さいのでもう少し継続したいと考えています。

家計は毎月赤字で、ボーナスで補填している状態です。しかし、万が一のことを考えて追加で保険に入った方がいいのでは? と考えています。

現在、48歳満期時に解約すると利息がついて400万円、死亡時には700万円支払われる保険に加入しています。また離婚に伴い、300万円の学資保険にも加入しました。医療保険は結婚時に加入したままのものが年払いであります。万が一の場合、学費はこれらの保険で賄えると考えていますが、生活費が遺族年金では足りないのではと考えています。

また、働けなくなった時の不安もあります。この場合、収入保障保険に働けなくなった時の特約などをつけるべきなのでしょうか? 現在加入を検討している収入保障保険は、保障額は月5万円程度、月々1000円程度の掛け捨てで家計への負担は軽いものの、特約をつけると高くなるので悩んでいます。毎月赤字の状況で追加の費用負担が増えるのも……と思っています。シングルマザーとして、何をどこまで備えればいいのかアドバイスください。

<相談者プロフィール>

・女性、35歳、バツイチ

・子ども1人:3歳

・職業:会社員

・居住形態:持ち家(戸建て)

・毎月の手取り金額:20万円+2.5万円(養育費)

・年間の手取りボーナス額:140万円

・毎月の世帯の支出目安:26万円

※児童手当は学資保険の支払いに充てています。

【支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:2万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:4万円

・保険料:2万円(満期時に解約すると、利息含め400万円になる保険)

・通信費:0.5万円

・車両費:1.5万円

・お小遣い:1万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:なし

・年間ボーナスからの貯蓄額:30万円

・現在の貯蓄総額:400万円(うち100万円は学資保険の積立)

・現在の投資総額:8万円(つみたてNISA:月0.5万円積立)

・現在の負債総額:2700万円(住宅ローン)


氏家:今回のご相談者さんは、3歳のお子さんと暮らすシングルマザーです。

年収がフルタイムに比べて50万円減るものの、子どもとの時間を確保するため時短勤務を選択中。前夫から引き継いだ住宅ローンの返済もあり毎月赤字状態で、ボーナスから赤字を補填している状態ですが、万が一に備えて追加で保険に入った方がいいのか、というご相談です。

追加の保険加入は必要か?

現在支払っている保険料は月額2万円。内訳は、700万円の終身保険(48歳、保険料払込み終了時の解約返戻金が400万円)と、お子さんの学資保険(300万円の学資準備)。このほか、年払いで医療保険にも加入しています。

離婚してシングルマザーになったため、親としての責任感と、もしもへの不安が増したのでしょう。自分に万が一のことがあったときに備えて、死亡時から一定年齢まで毎月5万円が支払われる収入保障保険(保険料月額1000円程度)に入る検討を始めるとともに、特約として、長期療養になって働けない期間への備えとして就業不能保険をつけようかと悩んでいます。就業不能保険も月額5万円で付加した場合、月額保険料はこちらも1000円程度になると思われます。

もしもに備えて保険を上乗せしたくなるのはわかりますが、いまの一番の問題は毎月の赤字です。先に家計の状況を確認しておきましょう。

2つの支出を見直して、月収の範囲で生活を

現在、手取り月収は22.5万円(手取り給与20万円+養育費2.5万円)。このほか児童手当がありますが、そのまま学資保険の支払いに充てているため、いまは考慮しないでおきます。

月々の支出は以下の通り。毎月26万円の支出ですから、毎月3.5万円の赤字という状態です。

【支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:2万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:4万円→1万円に

・保険料:2万円

・通信費:0.5万円

・車両費:1.5万円

・お小遣い:1万円

・その他:5万円→4万円に

現在、教育費が毎月4万円かかっていますが、幼児教育無償化が始まっているので幼稚園や保育園の自己負担だけならもう少し安くなっているはず。習い事などもしているのかもしれませんが、いまは我慢して、教育費を1万円程度まで減額したいところです。

その他5万円というのが詳細不明なので何とも言えませんが、ここもなんとか4万円以下に抑えたいところ。ほかの支出がもともとコンパクトなので、見直せるのはこの2つしかありません。教育費とその他を見直すことで、月収の範囲内で暮らせるようになります。

赤字補填から解放されたボーナスは、貯蓄にまわす

月々の赤字3.5万円が解消されると、ボーナスから赤字補填する必要がなくなるため、ボーナスからの貯蓄が増やせます。いま年間140万円のボーナスがありますが、ここからいま貯蓄できているのは30万円。これが、3.5万円×12ヵ月=42万円の赤字補填をなくすことで、30万円+42万円=72万円のボーナス貯蓄が可能になります。

現在、学資保険の積立を除いた金融資産残高は308万円という状況で、2700万円の住宅ローンを抱えています。今後を考えると、当面は暮らしをコンパクトにするよう心掛け、手元の現金を確保したいところです。

共済保険の検討、自治体の制度の活用も

独身時代に加入した医療保険が月額2000円程度のものだとすると、ここに収入保障保険と就業不能保険を特約でつけると、ひと月当たりの保険料は4000円~5000円程度になるでしょう。

これを共済(国民共済、県民共済、コープ共済など)に切り替えると、入院日額5000円の医療保障と、死亡保障(事故原因だと1000万円、病気だと400万円程度)の保障が月額2000円の掛け金で確保できます。さらに割戻率が30%程度ありますから、実際の負担はひと月1400円程度ということに。共済には、65歳以降の保障が小さくなるなど気になる点もありますが、当面の生活の安定を重視したいご相談者さんにはピッタリの保障だと思います。

考えたくないことですが、ご相談者さんに万が一のことがあった時には、学資保険で一定の学資は遺せますし、国から遺族厚生年金も支払われます。そのほか、ローンの支払いのいらないご自宅も遺せます。備えようと思えばキリはありませんが、いまのところ死亡保障はこの共済だけでもいいのではないでしょうか。

働けなくなった場合のリスクも確かに心配です。しかし、そこは家計を見直して、手元に現金をなるべく多く確保し、いざとなったら貯金を取り崩して対応する方向で考えましょう。会社員の場合、長期療養で働けなくなっても、給与の3分の2の「傷病手当金」が支払われます。また、共済の場合、入院保障が最長124日まで支払われるため、長期入院にも備えやすくなっています。

ひとり親世帯は子どもが18歳になるまで、親子ともに「ひとり親家庭の医療費助成制度」が利用できることも。自治体によって、所得制限額や助成の範囲が異なるので、対象になるかどうか、自治体のホームページや窓口で確認してみるといいでしょう。

家計がもう少しラクになる日まで

いまはお子さんとの時間を確保するために時短勤務中ということですが、お子さんがもう少し成長して通常勤務するようになったら、年収が50万円増やせるはず。そうしたら、家計はもう少しラクになるので、住宅ローンの繰り上げ返済なども考えていきましょう。

シングルマザーとしてローンを抱え、車を維持し、お子さんの教育費を用意していくのは精神的な負担も大きいと思いますが、いまやるべきことはできています。不安を抱えすぎず、家計をコンパクトにして毎日を乗り切りましょう。

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